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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 評価の4つの機能 (コミュニケーション学、リーダーシップ開発、アントレプレナーシップ/松永正樹)

評価の4つの機能

松永正樹 コミュニケーション学、リーダーシップ開発、アントレプレナーシップ

20/01/21

前回まで、いくつかの理論をご紹介しながらヒトのモチベーションについて、お話をしてきました。ここからは、組織におけるヒトのモチベーションと切ってもきれないプロセス、すなわち「評価」についてお話をしていきたいと思います。その中でも今日は、「組織が『評価』を行うのは、そもそも何のためなのか?」という点について考えていきます。

実はこの点は、近年非常にホットは話題で、日本でも海外でも「『評価』という仕組みがあるせいで、上司と部下の間に本来あるべき信頼関係を損ねてしまっているのではないか」という意識があります。そこから転じて「いっそ『評価』というものを無くしてしまったらどうなるだろうか」と考えて、従来の評価の仕組みを無くしてしまったケースも見られるようになりました。そういった事例のうちいくつかは、この番組でも後日ご紹介したいと思っています。

組織が「評価」を行うそもそもの狙いを突き詰めていくと、やはり「『評価』を行うことによって、望ましい組織行動を引き出し、そうではない行動を抑制するため」ということになります。しかし、なぜ「評価」をすることで、そのような結果が得られるのでしょうか。これは「評価」には大きく4つの機能があるためだと考えられています。

1つは「マッチング」です。組織が望ましいとする考え方や行動をするヒトに高い評価を与えることによって、彼女ないし彼を組織のメンバーとして採用する、または新しいポジションを与えて昇進させる。それによって、組織と個人のマッチングをよくする、という機能が評価にあります。もともと持っている考え方や実践している行動が高く評価される組織で働ければ、本人はもちろん、その組織にとってもハッピーなことですから、マッチング機能はとても重要です。

2つめが「基準の伝達」です。組織が望ましいとする行動に高い評価を与え、逆にそうではない行動に対しては報酬を減らす、あるいは罰を与えることで、その組織がどのような考え方や行動を望んでいるのかを組織内外の人々に対してコミュニケーションすることが出来ます。組織のビジョンやバリューというものは、言葉だけではとても伝わりにくいものです。しかし、評価基準をきちんと設定すれば、口頭で口酸っぱく訴えるよりも遥かに効果的にビジョン、バリューを伝えることが出来ます。

3つめは「期待の伝達」です。口先でいくら「君に期待しているよ」と言われても、なかなかそれだけではヒトは本気にはなりづらいものです。一方で、大きなプロジェクトにアサインされたり、リーダー役に抜擢されたりするなど、業務上の評価を受けるとヒトは自分が組織にどれだけ期待されているのかということを実感出来ますし、ひいてはそれによって当該組織における自分のキャリアなどについても、この組織であればこういうことが出来そうだな、といったところまで思いを馳せるようになります。

4つめが「組織文化の構築」です。期待の伝達と同じく、組織の文化もいくら組織経営陣が「こういう文化をつくりたい」と思ってそれを声高にアピールしても――例えば「我々はオープンの文化を大事にする」と宣言したとしても――その通りになるとは限りません。一方で、耳が痛くても重要なことについてオープンにコミュニケーションした人を高く評価する仕組みが実装されていれば、上司が何も言わなくてもその組織は自然とオープンなコミュニケーションを実践する人が増えていく、ということになると思います。

最後の「組織文化の構築」に関してもう少し付け足すと、組織の中で「評価」を行うことによって、メンバー同士の上下関係や権限が決まってきます。これは、組織図に書かれているいわゆる公式のものとはまた違います。組織において評価を行うということは、様々なメンバーにそれぞれ異なる権限をどのように認めるか、例えば「こういった発言はしても良い、それは望ましいことである」といったメッセージが評価を通して伝わっていくのです。実際、待遇や給料などによって、メンバーに「これは良い行動である」とか「こういった考え方、こういった行動というのは慎まなければならないのか」という組織の価値観が伝わり、それを実践している人は偉い人、良い人となりますし、そうではない人は、この組織では望ましくないことをしている人となります。当然、前者にはコミュニケーションが集中していきますし、後者とはなるべく関係を持たないようにするといった動きも出てくるでしょう。

こうして決められた一人ひとりのメンバーの「権限」や「権威」は、そのまま彼女ら彼らの関係性に影響していきます。組織の中で誰と誰がどのようにコミュニケーションをするのかといったものが、評価の仕組みによって間接的に決められていきます。その結果として、組織の風土や文化といったものが出来上がっていくというわけです。言いかえると「評価」の仕組みを決めるということは、その組織におけるコミュニケーションのあり方をデザインすることでもあるわけです。

それでは、「会社に評価されるからこういう風に行動すれば」「こういう風に考えれば評価されるから」と、会社にとってのイエスマンが増えていくのかというと、実際にはそういったことはありません。例えば極端ですが、何を言っても評価が変わらない、という評価の仕組みもあり得ます。そうなると新入社員やあるいは転職してきた人からすると、最初は「そんなことまで言っていいのか」と驚くでしょう。しかし例えば、月々の給料や昇進などに全く影響が無いように見え、むしろ、上司に対してズバズバと好き放題アイデアを出していくような人がかえって活躍をしているような組織でそういった評価をするようであれば、おそらく上司の意見に同調するのは上手でも自らユニークなアイデアをだすことが苦手なイエスマンタイプの人はかえって居づらくなっていきます。評価の仕組みをつくる時というのは、そこも含めおいた上でデザインをしないと、思わぬところで影響が出るということになるのかと思います。

今日のまとめ:
「評価」は「マッチング」「基準の伝達」「期待の伝達」「組織文化の構築」という4つの機能を通じて、組織内で望ましいとされる行動を促進し、そうでない行動を抑制します。「評価」の仕組みを決めることは、その組織におけるメンバーの関係性とコミュニケーションのあり方をデザインすることでもあると言えます。

分野: リーダーシップ 対人・異文化コミュニケーション論 組織行動 |スピーカー: 松永正樹

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