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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 現代の水害の特徴と防災:その2 (企業倫理、リスクマネジメント/平野琢)

現代の水害の特徴と防災:その2

平野琢 企業倫理、リスクマネジメント

20/01/10

前回から、現代の水害の特徴と防災の在り方という話をしています。最近は、都市の在り方が密集化しているために水害の被害額が非常に大きくなっているということ、そして、過去と比較しても水害をもたらす集中豪雨の回数が増えているという話をしました。それを踏まえて、今回は前回話したもの以外で、近年の水害においてもう1つ注目されている二次災害リスクの話と、水害の防災対策において必要なものが何かについて話していきます。

前回話した問題に加えて、近年の水害に関して改めて考慮すべき新しいリスクが今一つ顕在しています。それは水害そのものではなく、水害に伴って発生した二次災害による復旧の遅れというものです。

例えば、身近な例で言うと2019年の8月に、九州北部豪雨が発生しました。この時、佐賀県の川が氾濫しましたが、この川の流域にある鉄工所の工業用油の貯水槽が冠水、最大で約5万リットルという大量の工業油が流出しました。この流出によって、付近の公共施設や民家100戸余りが単なる水ではなく工業油を含んだ水に浸水してしまいました。農地の方にも流入したと言われています。匂いによる被害や、家屋の汚れ、農業への影響等、直接的な被害も勿論無視出来ないものがありましたが、更に注目すべき点はこの流出によって浸水地域の復旧が遅れてしまったという点です。

一般的に水害による浸水した地域を早期復旧するためには、早く水を抜くことが大変重要になります。しかし、この事例では油の回収と拡散防止のために、あえて排水をせずに油を含んだ水を隔離状態に置くことが非常に重要となりました。油は一度地面に染み込んだり、壁に染み込むと、中々取れません。皆さんも理科の実験等で経験したことがあると思いますが、油は水に浮くので、水に浮かした状態で回収するのが一番効率的です。このために、被災地では早期復旧のためにいち早く水を抜きたいが、水を抜くと今度は油が回収出来ないという、排水と流出防止のせめぎ合いが発生してしまったと言われています。結果として、当該地域では排水が大変遅れることになってしまいました。

この事例から、私は多くの教訓が得られると考えています。まず、水害が二次災害を引き起こします。色々な災害が合わさって大きな1つの災害になることを複合災害と言いますが、このようになる事も想定した防災対策を考えていかなければならないと思います。

また企業防災という観点からは、自社の防災対策が不足してしまった場合には、災害が発生した時にともすれば災害による被害を拡大させてしまう立場になってしまう点を、改めて強く意識して企業防災を設計しなければいけないという点が教訓として学べるかと思います。このような現代の水害の特徴を受けて、在るべき防災対策について少し考えてみたいと思います。

まず、都市構造や気候が変わっているのであれば、環境変化を意識して常に防災行動計画を改善していく姿勢が非常に重要だと思います。次は災害が発生したという過酷な状況下においても、実行可能な防災計画を作り上げるという点です。災害心理学等においてよく指摘されていますが、災害時においては様々なプレッシャーによって適切な情報を集める能力や、合理的な判断を下す能力が非常に低下すると言われています。その結果として、必要な防災情報を入手しなかったり出来なかったり、冷静に考えれば、合理的ではないと思うような行為や判断ですら行ってしまうことが指摘されています。

それではどうすれば良いのかということですが、一番は分かりやすい防災計画に変えることです。事前に誰が何をいつ行うか、これを単純明確にした防災計画を作って、災害が発生した過酷な状況下でも行動を実践出来るような防災計画にする事が重要になるかと思います。

そしてもう1つは、他の地域の災害の事例を対岸の火事として受け止めないということが重要です。度重なる災害のニュースを見て被災地域を心配し、心を痛めた人は非常に多かったと思いますが、この報道を見て被災地域以外で具体的な防災対策の強化をした場所はどれくらいあるのでしょうか。行動を実践に移した人は少ないのではないかと考えます。ただこれは仕方のないことで、そもそも人間には自分の周囲で大変な事が起きても、脳がそれを正常な範囲、問題ないと捉えて心を穏やかに保とうとする心の動きがあります。以前に話した正常化バイアスと呼ばれるものですが、これが働いてしまって、水害に関する報道に接しても同じような状況は起きないのではないかと無意識に思い込んでしまい、災害の事例から教訓を得たり、それを契機に具体的な対策に着手したりしない傾向が人間には備わってしまっています。しかし水害をそこにある危機と捉えて、その事例から得られる教訓を積極的に学んで、具体的な対策に着手する姿勢、それこそが適切な防災への最も近道ではないかと考えます。

今日のまとめ:
近年の水害は気候の変化に伴って、その発生可能性が変化すると共に、都市構造の変化に伴って発生する被害の内容にも大きな変化が見られます。これらの変化を十分に分析して、変化に対応し、かつ実践可能である防災計画を立てることが重要だと思います。

分野: 企業倫理 経営リスクマネジメント |スピーカー: 平野琢

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