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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 現代の水害の特徴と防災:その1 (企業倫理、リスクマネジメント/平野琢)

現代の水害の特徴と防災:その1

平野琢 企業倫理、リスクマネジメント

20/01/09

今日は現代の水害の特徴と、あるべき防災について2回にわたって話します。近年、洪水等の水害の報道をよくみます。例えば、2018年7月に発生した西日本における集中豪雨では、広島県、岡山県、愛媛県を中心に大規模な土砂災害や浸水が発生しました。また、ここ九州北部では2018年と19年の2年連続にわたって豪雨に伴う水害が発生しています。台風19号では、関東東北のかなり多数の地域で河川が氾濫する等ということが発生しました。ただ、そもそも日本は世界有数の雨量を誇る国なので、水害への対策をかなり長年にわたって行っています。結果として、かなり持続的に高度化された堤防等のハードの水害対策、避難訓練等ソフトの水害対策が各地に存在しています。そのような高度化された対策にもかかわらず、何故現代においてもなお水害における被害が大きいのか、最近の水害の現状と、あるべき防災について考えていきたいと思います。

先ず水害そのものが増えたのか、という話なのですが、最近ニュース等で頻繁に映像を見ると、日本において非常に水害が増えたというようなイメージを持たれるかと思います。確かに、水に浸かった住宅や町、また報道を見てみると、被害の大きさというのはかなりクローズアップされています。これを、国土交通省が公開しているデータで見てみると、水害の発生件数は台風19号の影響もあってかなり多かったのですが、実は近年著しく増加しているとまでは言えません。また、伊勢湾台風や狩野川台風等、過去の洪水をきっかけとして様々な水害対策が行われた結果として驚くべきことに、浸水した面積はかなり減少の傾向にあると言えます。

本当にこれは驚くべき結果だと思うのですが、実際に統計を取ってみると1980年代と比べると浸水は半分以下になっています。しかしその反面、被害の大きさ、被害額でみてみると、うなぎのぼりの状態にあると言えます。水害統計調査というものが政府によってなされているのですが、国内の水害の被害額の平均を取って年毎に比較してみると、1995年の一般資産被害額が1622億円でしたが、2004年には約4360億円となり、10年間で2.6倍以上に急騰しているのです。最新の2018年、19年の結果を見てみると、これ以上に被害額が拡大していることが分かります。

また浸水面積も1ヘクタールあたりの被害額も、同じ1995年と2004年を比較すると同じように2倍以上になっています。この背景には、やはり現代の町づくりの在り方が大きく影響しているのではないかと言えます。まず移動に便利なので平野部に都市が発展しますので、河川が氾濫した時に水に浸かりやすい、低地に人口の密集が進んでしまったことが原因の一つとして挙げられます。そして、近年では更に都市の地上と地下の空間利用というのが非常に盛んに行われていて、これで人口密集地域における人口と人々の資産の集中が更に進んでしまったことが挙げられます。皆さんの町の中もタワーマンションや地下街が広がっている、というのが近年の都市開発の特徴かと思います。少ない土地を足らないならば、その上へ下へと利用空間を延ばすというのが現代の都市開発の1つの基本方針みたいになっています。これによって多くの恩恵を頂くことも出来るのですが、一方、1回水害で水に浸かってしまうと、小さな面積であっても莫大な被害額が生まれてしまうという、新しい都市の災害、脆弱性、そういうものを生み出していると指摘出来ます。

この人口と資産、財産の過密化による水害の発生時における被害規模と資産額の拡大というものに加えて、近年の気候変動が、私達がより水害リスクに注意を向けなければいけないことを示しています。これまでの対策が通用するかと言うと、最近の気候データから見るとそれは言い切れないのではないかということが明らかになっています。日本全体における年全体の降水量は、大きな変化は見られないのですが、短期的な集中豪雨については確かに近年増えているのです。かつ、1回の雨における最大雨量が増加していることがデータによって明らかになっています。これは短時間に記録する大雨が非常に増えているということなのです。直接的に水害をもたらすのはそのような集中豪雨なので、それが近年増えているということは、我々が今までの水害対策の想定としていた雨を超えるような集中豪雨が発生することが身近な問題となっていると言えるかもしれません。やや誤解を恐れずに言うならば、ここ十数年水害が起きてないから大丈夫だろうという発想は通用しない、それは危険であるということが言えます。

今日のまとめ:
浸水面積は少なくても、1度の水害で大きな被害が出てしまうのが近年の水害の大きな特徴と言えます。少ない土地の上下の空間利用を柱とする現在の都市開発が続く限り、この問題は更に大きくなると言えるでしょう。都市開発の恩恵も享受しながらも、この課題にどの様に対応するかは、都市の持続的発展のためにも解決が急務な問題と言えます。そして、水害をもたらす集中的な豪雨は近年増加しており、我々はこれまでの水害対策の想定を超える雨が発生する可能性を常に身近な問題として考えていかなければならないと言えます。

分野: 企業倫理 経営リスクマネジメント |スピーカー: 平野琢

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