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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 戦略的提携(3):戦略的提携がもたらすメリットとは(その2) (企業戦略、生産管理/目代武史)

戦略的提携(3):戦略的提携がもたらすメリットとは(その2)

目代武史 企業戦略、生産管理

20/01/23

今回も戦略的提携について話したいと思います。戦略的提携というのは、二つ以上の組織が製品やサービスの開発や製造、販売などで協力関係を構築することです。前回は戦略的提携によって期待される効果として、①パートナーと仕事を持ち寄ることによって得られる規模の経済、②パートナーとの協業を通じて得られる学習効果、③パートナーとのリスク分散やコスト分担、があることを話しました。今回は更に④経営支援やノウハウの相互補完、⑤市場への新規参入、⑥不確実性への対応、といった効果について話します。

まず経営資源やノウハウの相互補完ですが、例えば新たな製品やサービスの立ち上げを考えてみます。2018年10月にトヨタとソフトバンクが戦略的提携を発表しました。自動車と通信という異業種の最大手同士の戦略的提携ということで大変話題になりましたが、今後、自動車はもっとシェアリングが進むのではないかと言われています。買って乗る時代から、必要な時だけ借りて乗る時代、つまり所有から利用の時代に移っていくと考えられています。さらに自動運転が普及すると、必要な時だけ車を見つけて乗せてもらう時代になるかもしれません。

こうしたことを実現するためには、人と車、車と車、車と道路インフラなど、様々なものをつなぐ通信技術や、膨大なデータを処理して活用する技術が重要になります。自動運転車や、電気自動車そのものを開発すること自体大変難しいことではありますが、これについてはカーメーカー自身には技術も資本力もあり、対応可能だと思います。ところが膨大のデータをやり取りするような通信技術や、ビックデータの解析技術といったものを自動車メーカーが単独で開発していくというのは大変難しいことです。さらに最近、MaaS(マース、Mobility-as-a-service)と言われる「移動のサービス化」が進むと、車とユーザーを結びつける配車サービス、決済システム、他の交通機関との接続システムなど車の製造販売を越えた広範なビジネス生態系のようなものが必要になってきます。

例えば、ここからあそこまで行きたい時に、どのような手段でどう行くと最適かをすぐに調べて出してくれたり、現金を使わず決済出来るような仕組みを作ったりしていかないといけませんので、そうなると自動車のノウハウだけではなく、交通、地図、通信そういったものを含めた総合的な対応が必要になってきます。これを1社でおこなうのはとても大変なことなので、戦略的提携でそれぞれノウハウや経営資源を持った相手と組むことで機動的に新しい事業領域に算入していくことが可能になるというわけです。

類似のメリットとしては、新市場への新規参入における戦略的提携も古くから活用されています。これは例えば海外市場に参入する際が典型的です。単独で展開するのではなく、現地企業と組むという形で参入していくというわけです。この場合の現地市場、例えばタイ、ミャンマー、中国といった市場における独特の商習慣や市場ニーズは現地企業でないとわからないことが多いです。そういったケースにおいて現地のパートナー企業が保有する、流通網や政府とのコネクションなどが大きなメリットとなるわけです。

さらに戦略的提携のメリットを考えると、不確実性への対応というメリットがあります。例えば東南アジアのミャンマー、インドといった国にベーカリーチェーンを展開したい、日本の菓子パンを販売したいと考えた時にどうするかを例にとってみましょう。現地の所得水準というのは徐々に上がっていくと考えられるし、成長のチャンスはかなりありそうです。しかし単独で進出するとなると、利益も損失も100%自社で被るということになってしまいます。そこでもし現地企業と戦略的提携を結んだ場合どうなるでしょうか。現地企業と資金を収集しあって、例えば合弁会社を設立します。そして菓子パンビジネスを展開する。その場合、もちろんこれまで述べてきた規模の経済やコストやリスクの分担、経営資源の相互補完といったことを通じてビジネスの成功率を上げることが出来ます。もし数年後、目論見通り菓子パンビジネスが順調に拡大したとすると、この会社は例えば出資額を増やして、過半数の出資率を獲得したり、あるいは合弁会社自体を完全に買収したりといったことで菓子パンビジネスに対する支配権を強化することも選択肢としてあるわけです。逆にこのビジネスがうまくいかなかった場合にも、リスクというのは出資比率分だけで抑えられるといったこともあります。

もう一つ重要なことは、進出する際に100%の出資だと、どのくらいこのビジネスにコミットするか、進出するタイミングで全て決めないといけません。ところが戦略的提携の場合には、それをもう少し将来に先延ばしすることが出来るというわけです。様子が分かってから更にコミットメントの程度を増やすかどうかを決定出来ます。それがある種、不確実な状況における柔軟性の確保ということにつながるわけです。

今日のまとめ:
今回は戦略的提携のメリットとして「経営資源の相互補完」、「市場への新規参入」、「不確実性への柔軟な対応」を紹介しました。近年は事業に求められる経営資源や技術力が特定の産業の枠を超えて広がる傾向にあります。戦略的提携を通じた経営資源の相互補完の柔軟性は益々高まっています。また、事業の将来価値が不確実であるほど想定通りにいかなかった場合のリスク対策を講じていく必要があり、戦略的提携はその有効な手段となります。

分野: 企業戦略 生産管理 |スピーカー: 目代武史

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