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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > モチベーションの構造⑤ 職務特性モデル (コミュニケーション学、リーダーシップ開発、アントレプレナーシップ/松永正樹)

モチベーションの構造⑤ 職務特性モデル

松永正樹 コミュニケーション学、リーダーシップ開発、アントレプレナーシップ

19/12/17

モチベーションの構造というテーマでお話しています。前回、モチベーションには自らの内面から湧き出る内発動機と外部からの報酬によって高められる外発動機があるというお話をしました。後者については、金銭的な報酬や昇進など外的報酬を与え続けないと立ち消えてしまう性質があるため、外発動機だけでモチベーションを維持し続けるのは現実的ではありません。出来れば内発動機をエンジンにして、仕事のやる気を高めたいということが、特に経営者の方にはあるかと思います。

では、内発動機を高める仕事のあり方とは、どういったものでしょうか。それが分かれば、個人としてはそのような働き方を求めることで楽しく仕事に取り組むことが出来ますし、マネジメントの観点から、より持続可能性が高い組織運営が出来るようになります。これは、面白い仕事に取り組むことが内発的動機づけになるというけれど、「仕事が面白い」というのは、そもそもどういうことなのかという問いに言い換えることができます。

この観点から「職務特性モデル」という理論を提唱したのが、リチャード・ハックマンとグレッグ・オルダムという2人の学者です。

ハックマン達はまず「ヒトが内発動機を感じるのは、ある仕事に取り組むことで自分が優秀だと感じられる『有能感』と、他者に強制されるのではなく、自らの意思でその仕事に取り組んでいるんだという『自己決定感』、この2つが揃った時だ」という理論に着目しました。あるタスクに取り組んでいて、いくらやっても結果が伴わない、失敗ばかりとなると面白くありません。自分が嫌になったり、自分が優秀ではないのではないかという風に感じたりしてしまうからです。では逆に成績が良いものであればいいのかというと、どんなに好成績が出せるとしても、誰かに強制されて行う仕事というのは、やはりつまらないものになります。

これらを踏まえた上で、ハックマンとオルダムは内発動機を高める仕事に共通する特徴として、大きく「仕事の特性」、「働く上での自律性」、「フィードバック」の3つを挙げました。

まず「仕事の特性」について。これは、さらに細かく「技能の多様性」、「職務の完結性」、そして「職務の重要性」に分けられます。具体的に言うと、ある仕事を遂行する上で必要なスキルが多岐にわたるものであり、非常に複雑で高度なものである、これが「技能の多様性」ということになります。これが高い仕事というのは、誰でもできる、誰がやっても結果が同じ、というわけにはいきません。転じて、そのような多様な技能を要する仕事に取り組んでいる自分は有能であると感じやすく、それがモチベーションを高めてくれる、ということになります。

「職務の完結性」とは一部を歯車としてこなす、全体は見えないけれどもとりあえずこれをやって、ということではなく、初めから終わりまで一気通貫して、その仕事に関与できて全体像が見えるということですね。何を、どうやるかというWHATやHOWだけではなく、そもそもなぜその仕事をやるのかというWHYのレベルから見通せていたほうが、仕事に取り組む意義を見出しやすいというのは直観的に得心がいくのではないでしょうか。

最後に、「職務の重要性」というのは、文字通りやっている仕事について、その内容、意義が非常に重要なものであると自分で感じられるということになります。こうした仕事はそれを上手くこなせることが有能感につながり、また仕事自体にも意義を感じられるため、内発的動機づけを高めることが知られています。

二点目の「働く上での自律性」とは、仕事を行う上で認められている自由や裁量の度合いのことです。その仕事をどう進めるか、いつ、どこで、どれだけ働き、どのようなやり方で課題をクリアするのかを自分で決定する自由を与えられると、ヒトはそれだけ責任を感じ、それが内発的動機に繋がります。最後に、仕事を進めるなかで上司や同僚、取引先から「フィードバック」をもらえる環境にあると、ヒトは手ごたえを感じやすくなり、それが仕事のやりがいに繋がっていきます。

よくできたゲームは、これらの特徴をすべて備えるようデザインされています。たとえばゲームをクリアするために多彩なスキルと知識が求められ、ただボタンを連打するだけではなく、複雑な操作とタイミングのいいボタン操作が必要、といった具合に。それに習熟することで、自分は上手くやれている、成長している、といった有能感がくすぐられます。また、どうゲームを進めるのかをプレイヤー自身が選べる自由度があり、かつ、それがうまくいっているのかどうか、スコアやレベルアップ、ストーリー展開などですぐフィードバックされて、「ああなるほど、このやり方でいいんだ」となると、やる気がますます高まります。職場にゲームの楽しさを取り入れて、従業員の生産性やモチベーションを高めようという取り組みのことを「ゲーミフィケーション」と言い、その源泉は、ハックマンやオルダムの研究に求めることが出来ます。そしてゲーミフィケーションの他にも「職務特性モデル」の知見を応用する方向性は、幾つか考えられます。

一つは周辺的な仕事を"巻き取る"ことです。職務を遂行する上で求められるスキルが比較的単純か初歩的で、「技能の多様性」が低い場合、あるいは仕事上の一部しか扱わない状態で「職務の完結性」が低い場合、こういった時には、職務の周辺の仕事も一緒に巻き取ってしまう、自分の仕事の複雑性をちょっと上げてみる、これによって仕事の特性というものを高めてより面白いものにすることが出来るかもしれません。

もう一つは、率先してフィードバックを求めることです。自分の仕事のどこが上手くやれていてどんな改善の余地があるのか、改善をするには何に取り組むべきなのか、といったことがわかると自然とモチベーションが高まります。

最後は責任を引き受けることです。どうせ失敗しても、先輩、あるいは上司が何とかするだろうと思っていると、仕事の意義というものを感じづらくなってしまいます。一歩踏み出して、この仕事は自分に任せて下さい、と言い切ってみること。例えば大きなコンペのプレゼンに、今度は自分一人で取り組ませて下さい、何かあったら相談しますから、と上司に提案をして、よしやってみろ、と言われるようになったら自分でもびっくりするほどやる気が高まるのを感じると思います。

今日のまとめ:
ある仕事を遂行する上で求められるスキルが多岐にわたり、仕事に全体を通して関与できて、内容的にも意義があり、また、仕事の進め方において自己決定できる裁量がある、さらに周囲からフィードバックも受けられるという環境になると、人は内発動機を感じやすくなります。これらの状況を自ら求めることで、内発動機が高まりやすい職務環境というのを作り出すことが出来ます。

分野: リーダーシップ 企業家リーダーシップ 対人・異文化コミュニケーション論 組織行動 |スピーカー: 松永正樹

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