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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 戦略的提携がもたらすメリットとは(その1) (企業戦略、生産管理/目代武史)

戦略的提携がもたらすメリットとは(その1)

目代武史 企業戦略、生産管理

19/12/13

前回から企業の戦略的提携の話をしています。企業が他の企業と経済活動をする上で関わる方法として、1つめは市場取引という1回限りの関係、2つめがM&Aによる企業合併でいわゆる企業同士の結婚、丁度その中間にあるのが戦略的提携だという話です。この戦略的提携は企業同士が協力し合うのですが、協力し合うからこそ生まれるメリットが無ければ提携に至らないわけです。もしもそれぞれの企業が単独で活動した方が良いということであれば、提携するとかえって企業経営の足かせになってしまうということになってしまいます。では企業同士が提携するメリットとは一体何なのかを今日は考えてみたいと思います。

まずメリットの第一として挙げられるのは規模の経済というものです。これは例えばパートナーシップを結んだ企業同士がお互いの仕事を持ち寄ることで工場などの稼働率が上がったり、業務効率が向上したりするというものです。例えば自動車の心臓部であるエンジンの開発や生産ラインの設備投資というのは莫大な費用が掛かります。その投資規模は、トヨタのような大企業でもマツダやスバルといったような中堅企業でも実はあまり変わりません。とするならば、年間1,000万台の販売規模を誇るトヨタと、150万台程度のマツダではエンジンの設備投資を回収する上での販売母数が全く違うということになってしまうわけです。マツダは1996年にアメリカのフォードと資本提携を行いましたが、マツダはこのフォードとの提携を通じて共通のエンジンを開発することになりました。いわゆる直列四気筒というタイプのエンジンですが、これがマツダ車だけではなく、フォードグループの車種にも搭載されることが決まりました。マツダ単独であれば生産台数は大体年間で40万基ぐらいだと言われていたそうですが、フォードやグループ会社のボルボにも搭載されることで、その生産規模は大体年間で200万基にも及んだと言われています。ただし、こうして仕事を持ち寄って規模の経済を活かすためには、その対象となる製品や設備などを共通利用出来るということが前提です。パートナー企業同士の企業カルチャーやブランド戦略があまりにも違っていると、共同の製品開発をしても、それぞれの企業のブランド戦略に合わせて手直しをしなければいけなくなりますから、せっかくのコストメリットも相殺されることになってしまいます。

2つ目のメリットですが、パートナー企業からの学習にあります。業務提携であれ資本提携であれ、あるいはジョイントベンチャーであっても、提携することでお互いの内部事情に通じるようになっていきます。外から眺めていては分からなかったような技術やノウハウに内側から接する機会が格段に増えるわけです。そうした事例として、例えば古くはトヨタがアメリカで初めて現地生産を行った際に、アメリカのゼネラルモータースと共同で工場を設立(通称ヌーミ: New United Motor Manufacturing, Inc.)しましたが、トヨタがアメリカにおける工場経営、特に人材採用や労使関係について、パートナーであるゼネラルモータースから学ぶ大変重要な機会になりました。一方でゼネラルモータースの方もトヨタからいわゆるトヨタ生産方式を学びたがっていました。特にゼネラルモータースはこれまで小型車を作る生産ノウハウを持っていなかったということから、トヨタとの戦略提携は非常に重要な意味を持ったわけです。こうした「相手に学ぶ」という姿勢は戦略提携あるいは企業合併において、単なるメリットを越えて提携を成功裏に発展させるための前提条件にもなります。1999年に始まったフランスルノーと日産の提携が当初うまくいったのは、ルノー側も日産側も相手から学ぼうという姿勢が強かったからだと評価されています。

3つ目のメリットとしてリスク分散やコスト分担があります。単独で新規事業を立ち上げるよりも他社と協力し合った方が費用負担を分かち合うことが出来るという意味では、失敗した時のリスクを軽減出来るということにも繋がってきます。例えば、自動車メーカーのマツダが2011年にメキシコに現地法人を作りました。これは元々アメリカ向けの輸出に加えて、ブラジルなど南米市場への車の供給基地にしたいという考え方でした。ところが2012年になってブラジルがメキシコからの自動車輸入を規制するという発表をしました。これはマツダにとっては大変な出来事で、当初考えていた生産台数を達成出来ないのではないか、ということで大問題になりました。この時の窮地を救ったのが、当時提携関係にあったトヨタでした。トヨタは北米向けに販売する車種が実は足りないということで、モデルを急遽投入しようと考えていましたが、自分で工場を建設して生産するのは負担が大きいということで、この2社が協力してトヨタが北米向けに投入予定であった車種をマツダのメキシコ工場に委託生産するという形をとりました。これはまさに思わぬリスクに対する対応が提携によって可能になったという事例でしょう。ただ、リスクやコストをパートナーに押し付けるような経営思想があると、戦略的提携におけるある種の裏切り行為にも繋がりかねません。こうした問題は戦略的提携におけるモラルハザードやホールドアップと呼ばれる問題に繋がるのですが、その詳しい内容についてはまた後日話します。

今日のまとめ:
戦略的提携を成功に導くためには、提携によってどんな戦略的メリットを生み出そうとしているのか、それをしっかりと理解することが重要です。今回は戦略的提携のメリットとして規模の経済、相手からの学習、リスクとコストの分担について話しました。これらのメリットは提携すれば自然についてくるものではなく、それを引き出す意識的なマネジメントや条件整備が必要だということにも注意が必要です。

分野: 企業戦略 生産管理 |スピーカー: 目代武史

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