QT PRO モーニングビジネススクール

QT PRO
モーニングビジネススクールWeb版

FM FUKUOKAで放送中「QT PRO モーニングビジネススクール」オンエア内容をWeb版でご覧いただけます。
ポッドキャスティングやブログで毎日のオンエア内容をチェック!

PODCASTING RSSで登録 PODCASTING iTunesで登録 電子書籍で記事を読もう! EPUB

ブログ&ポッドキャスト詳細

QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > WTOのはなし(その1) (企業財務管理、国際金融/平松拓)

WTOのはなし(その1)

平松拓 企業財務管理、国際金融

19/11/06

 昨今は米中のみならず、日韓の間でも貿易問題が焦点となっていますが、その中で、アメリカが中国からの輸入品にかけている関税に対する提訴とか、水産物の輸入制限を巡る日韓間の紛争についての裁定が話題となったWTOについて採り上げてみます。

 WTOの正式名称はWorld Trade Organization(世界貿易機関)ですが、その前身は第二次世界大戦後に成立したGATT(関税と貿易に関する一般協定)です。このGATTは国際間の貿易の障壁をなくす、或いは軽減するという目的で結ばれた協定で、第二次大戦終了後、悲惨な戦争の原因となった通貨の切り下げ競争や経済のブロック化、そして植民地主義などに対する反省から、国際通貨問題を扱う国際通貨基金と旧植民地の開発に取り組む国際復興開発銀行(世界銀行)という2つの組織と共に成立しました。これ等を3本の柱とする戦後の国際経済秩序をブレトン・ウッズ体制と呼びます。

 GATTは自由貿易の推進、世界貿易の拡大を目指して1948年に成立しましたが、敗戦国だった日本は少し遅れて1955年に加盟しました。自由・無差別・多角的ということ、即ち、(1)関税・課徴金以外の輸出入障壁の廃止、(2)関税の軽減、(3)無差別待遇の確保―――の3つを基本原則としていました。実際に、このGATTの枠組みの下で行われた8回に亘る大規模関税交渉(ラウンド・テーブル)により、加盟国間の関税率が、鉱工業製品については7割近くも引き下げられました。

 しかし、8回目のラウンド交渉であるウルグアイ・ラウンドにおいては、GATTの枠内に収まらない新分野についての合意や規律の新設の必要が高まったことから、より多角的に自由貿易体制を推進する組織の設立を目指すことで合意がなされました。その結果、1994年にWTO協定が発効し、1995年にGATTを発展的に解消する形で設立されたのがWTOです。

 WTOは、貿易障壁の軽減、無差別原則の適用といったGATT時代の基本原則を引き継ぐと共に、意思決定方法についてもGATT同様に、コンセンサス方式を採ることになりました。一方、違いとしては、新たに「環境」や「途上国への配慮」ということも謳っており、また、GATTが暫定の協定であったために最低限の事務局しか持たなかったのに対して、常設の組織となりました。また、物品貿易だけでなく、金融、情報通信、知的財産権やサービス貿易も含めた包括的な国際通商ルールを協議する場とされました。

 さらに重要な違いとして、二国間協議を重視したGATT時代の紛争処理に比較して、紛争処理手段が強化されたことがあります。また、GATT時代の最終的な加盟国は128か国だったのに対し、WTOでは1996年の発足以降、2001年の中国と台湾、2012年のロシアなど加盟国は増えて、現在では164か国となっており、その8割以上が途上国によって占められているという点でも違っています。

 ところがWTOでは、協議対象分野が拡大したことや、加盟国数が増加して途上国や新興国のプレゼンスが増したことなどから、合意形成に時間がかかるようになり、機能が低下したとして問題になっています。現に、WTO体制の下で初めて開始されたドーハ・ラウンドは、2001年に開始が宣言され早期の合意が目指されたにも拘らず、20年近く経とうとする現在も終結を見ずにいます。この間、途上国と先進国の対立、時には先進国間での対立により作業は何度も中断し、都度、作業の再開と作業の進め方についてG7やG8、APECなどで議論され、結果的に多くの時間が費やされてきました。これまでのところ、貿易円滑化の一部や、情報通信協定など一部についてのみ合意されましたが、他の多くの分野が合意されずに残っている状態です。

 このようにWTOでは、新たな国際取引促進のためのルール作りが期待されているにも拘わらず機能不全気味となってしまっているために、その改革の必要性が叫ばれるようになって随分と時間が経過しました。最近のG20閣僚会議の場でも、「決められないWTO」の改革が度々話題とされています。特に、これまでのラウンドで用いられてきた、シングル・アンダーテーキング(一括受諾方式)という、164に及ぶ国・地域が全交渉分野について合意することを妥結の前提とする決定方式では何時までたっても決着に至らないことから、それを改めて、議題毎での合意をもって決定とする方式に移行することなどについての議論がされています。

 一方、加盟国間の紛争処理という点では、前身のGATTに比べて機能強化が図られたことから、WTOは重要な役割を果たしてきました。この、WTOの紛争処理の問題については、次回ご説明します。

分野: ファイナンシャルマネジメント |スピーカー: 平松拓

トップページに戻る

  • RADIKO.JP
  • ビビックスマホ