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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 既存企業のイノベーションを加速するアクセラレーション・プログラム(その1) (産学連携マネジメント、技術移転、技術経営(MOT)、アントレプレナーシップ/高田 仁)

既存企業のイノベーションを加速するアクセラレーション・プログラム(その1)

高田 仁 産学連携マネジメント、技術移転、技術経営(MOT)、アントレプレナーシップ

19/11/11

近年、企業においてイノベーティブな製品やサービスを世に出す活動として、既存企業による「アクセラレーション・プログラム」と呼ばれる活動が活発化しており、ある意味で"ブーム"とも呼べる。今回と次回に渡って、このプログラムが増加する背景や、プログラムの特徴について解説したい。

まず、このような取組みが増加する背景として、企業経営を取り巻く環境が不安定化し、不確実性が増していることが挙げられよう。従来、安定的にキャッシュを生み出してきた中核事業が、急速な技術革新やスタートアップ企業の登場などによって、市場での安定的な地位をあっという間に喪失してしまうような出来事も増えている。

以前、筆者が某大手メーカーの新規事業部門の担当者に対して、「以前も新規事業ブームが何度かあったが、今回は以前と何が違うと思うか?」と問うたところ、「以前は、仮に新規事業が成功しなくても、既存事業がまだ安定しているから、社内の危機感が希薄だった。それで、新規事業担当部門に対する社内の目も、どこは冷ややかなものもあった。しかし近年は、早く新しい事業の柱を創らないと、既存事業でいつまで食っていけるかという不安も大きい。その意味で、全社的な危機感は高まっていて、新規事業への期待も大きいと感じる」と述べていた。

特に、2008年のリーマン・ショック以降、大手メーカーが相次いで大規模な赤字を計上し、かつて中核だった事業部門を別会社化したり、中国や台湾の企業に売却するなど、大規模なリストラ敢行を余儀なくされるケースがニュース欄を賑わしてきた。思い切ったリストラによって出血(大幅赤字)を止めることに成功したとしても、手元に残った事業が長期的安定を約束できるとは限らないため、何らかの方法によって新たな事業の柱を創らねば、企業として存続できなくなるという危機感が非常に高まっている。このような背景があって、企業内アクセラレーション・プログラムに注目が集まっているのだ。

良く知られる例としては、ソニーのSAP(シード・アクセラレーション・プログラム)が挙げられよう。これは、平井氏がCEO在任2年目の2014年に開始されたもので、(1)アイデアづくりを支援するアイディエーション、(2)事業化に向けた検証と準備を支援するインキュベーション、(3)クラウドファンディングや販売を支援するマーケティング、(4)他社連携や協業・出資を検討するアライアンス、という4つの支援の柱から成り立っている。既に、700もの案件を審査し、33の事業を育成、13の事業を立ち上げたと発表されている(同社HPより)。

このようなアクセラレーション・プログラムでは、事業立ち上げの手法が従来から社内にある業務プロセスとは異なる点が特徴的といえる。例えば、「リーン・スタートアップ」や「リーン・ローンチパッド(リーン=無駄を排除した)」と称される手法などを参考に、比較的短期の間に小規模で事業立ち上げの可能性を見極めたうえで、事業の成長を加速させている。

これまで、起業家(個人)や設立直後のスタートアップ企業を対象とした「アクセラレーション・プログラム」は世界中で数多く行われてきており、例えばシリコンバレーの「Yコンビネーター」がその代表格として知られる。これは3ヶ月という限定的な期間に、ごく少額(数万ドル)をチームに提供して初期事業仮説の検証を促し、最終日の「デモ・デイ」では多数のVC(ベンチャーキャピタル)の前でピッチを行い、VCからの投資につなげる活動である。

"企業内"アクセラレーション・プログラムは、従来行われてきたスタートアップ向けのアクセラレーション・プログラムの手法を応用し、それを社内に導入したものなのである。分野も多岐に渡っており、「IT・デジタル」「通信」「エネルギー」「交通」「ヘルスケア」「金融」「不動産」「ものづくり製造業」「サービス」、さらには「公共部門(自治体)」などでも実施されている。

次回は、具体的なプログラムの特徴について解説したい。

【今日のまとめ】
既存企業においてイノベーション創出を加速させるアクセラレーション・プログラムに取り組む企業が増加している。そこでは、「リーン・スタートアップ」や「リーン・ローンチパッド」と呼ばれる手法を参考に、短期の間に小規模で事業立ち上げの可能性を見極めたうえで、事業の成長を加速させている。



分野: 産学連携 |スピーカー: 高田 仁

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