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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > ストレスを和らげる環境 (産業組織心理学、社会心理学/三上聡美)

ストレスを和らげる環境

三上聡美 産業組織心理学、社会心理学

19/10/31

前回はストレスについてのお話の中から、環境が原因となる「環境ストレス」には4つの種類があるというお話をしました。今日は、「環境がストレスを和らげる」というお話です。
環境はストレスの原因になることもありますが、一方でストレスを和らげてくれるものでもあります。
ストレスを和らげる環境といえば、緑がある自然環境が代表的かと思います。癒されますよね。これまでの研究においても、自然豊かな環境ではストレスが緩和されたり、疲労回復を促進したりする効果がある事が報告されています。その一例としてアルリッチの研究をご紹介します。
アルリッチは、外科手術で入院した患者さんを対象に、自然の眺めが手術後の回復に与える影響について検討しました。窓越しに樹木が見える病室に入院した患者さんのグループと、茶色いレンガの壁だけが見える病室に入院した患者さんのグループの二つに分けて比較をした所、樹木が見える病室に入院した患者のグループは、レンガの壁しか見えない病室に入院したグループよりも入院期間が一日短く、強い鎮痛剤の使用量が少なかった等の結果が見られたそうです。この窓から見える自然の眺めが患者の手術後の回復に有効に作用したと考えられています。病院以外でも、例えばオフィスなどでも、自然の眺めは幸福感や満足感が高いとされています。本物の樹木でなくても自然風景の写真やビデオの映像、観葉植物などからもこうした効果を得ることが出来ます。私が大学生の頃に観葉植物がストレスを低減させるかについて研究をした同期がいました。観葉植物のある部屋と何もない部屋の二つの実験室を設定して、それぞれの部屋で実験協力者に100マス計算をさせてストレスを出し、それぞれの部屋でストレスが下がるかどうかを検討してみました。その結果、観葉植物のある部屋で作業したグループの方がストレスは高くないという結果が出ていました。病院やオフィスで過ごす時間が長い人にとっては、日常的に自然を浴びることは難しいかもしれません。しかし、窓から自然を眺めたり、部屋に観葉植物を置いたりして、ちょっとした自然体験を積み重ねることで精神疲労の回復に繋がっていくと考えられています。

また、自然体験は精神疲労やストレスを特に感じていない人にとっても有効だと考えられています。こうした自然体験や自然の眺めによる疲労の回復効果はどのような仕組みで起こるのでしょうか。

これについては、アルリッチが「ストレス低減理論」というものを提唱しています。このストレス低減理論では、自然に対する感情反応がストレスの緩和に関わっているとされています。人類が進化する過程において、緑豊かな自然環境は食料を提供してくれたり、外敵から身を隠す場所を提供してくれる物であったり、生存競争にとって有効に作用するものであったと考えられています。その結果、私達人類は進化の過程で自然の風景に対して反射的に好ましさを感じるようになったというのがアルリッチの考えになります。またこのストレス低減理論では、自然環境に対して生じる快感情はストレスによる負の影響を緩和すると説明されています。一方で、人々が都市環境で暮らすようになったのは人類の歴史の中ではまだ最近のことのため、都市環境に対しては感情反応はまだ形成されていません。その為、都市風景からは自然風景のような回復効果は得られないと考えられています。もう1つ、カプラン夫妻という人達が提唱した「注意回復理論」からも、自然が疲労回復に繋がる仕組みを考えることができます。カプラン夫妻の注意回復理論では、注意の側面から自然環境によるストレス緩和効果を説明しています。「注意を向ける」の注意ですけれども、意識的に集中させる事の必要な注意と、そうでない注意の二つの注意システムを仮定しています。意識的な集中が必要な注意とは、仕事をしたり本を読んだりといった、集中力を必要とする作業の時の注意になります。反対に意識的な集中が必要でない注意とは、景色を眺めるような時に働く注意です。集中力を必要とする作業では、意識的に注意を集中させる為の能力が必要になります。こうした作業を長時間行うと、精神的な疲労が生じてしまいます。しかし、ふと何かに目を向けるような注意では、意識して集中を維持させる必要がないので、精神的な疲労は起こりません。意識的な集中が必要な注意を働かせることで生じた疲労は、意識的な集中を必要としない注意が働いている間に回復することが出来ると考えられています。

ところでストレスを緩和する環境は自然以外にもあるのでしょうか。例えばスポーツ観戦などはストレスを緩和すると思いますか。スポーツ観戦は気晴らしになるかもしれませんが、試合に集中する状態が続いてしまうため、十分な心理的な回復効果は期待できないとされています。自然環境のようにふと目がいくような環境が良いとされています。例えば、絵画鑑賞や寺院めぐりは心理的回復に良いかもしれません。ただ、映画鑑賞や寺院めぐりが好きな人には効果がありますが、そうでない人にはあまり期待できないので個人差があります。最近ではお気に入りの場所やカフェ等の心理的回復効果についての研究もされているそうです。

では、今日のまとめです。
環境がストレスを引き起こす一方で、環境が癒しとなる事もあります。その代表が自然環境です。生活の中に少し緑を取り入れる事でもちょっとしたストレスの緩和に繋がります。

分野: 社会心理学・組織心理学 |スピーカー: 三上聡美

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