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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 災害に備える!~近年の防災に関するトピックス~その3 (企業倫理、リスクマネジメント/平野琢)

災害に備える!~近年の防災に関するトピックス~その3

平野琢 企業倫理、リスクマネジメント

19/10/16

前回より防災をテーマにいくつかトピックを選んで話しています。今日はその第3回目としてリスク情報、危険に関する情報を聞いた場合、人々はパニックになってしまうのか、という点について話していきたいと思います。

自分の乗っている船が沈没するとか、明日巨大地震が発生する、このような自らの生命の危機を知らせるリスク情報を聞いた時、人々はどうなるでしょうか。よく映画などを見ると災害パニックなどというジャンルがあるように、このようなリスク情報を聞いた人々は恐怖にかられてパニック、つまり冷静な判断を失ったり、避難の協力などが全く行われないシーンが描かれています。私も最近映画を何本か見ましたが、このような災害に関する危険情報を聞いた人々が避難指示を全く無視して我先にと逃げ惑い、周囲の人々と協力が全く行われていないシーンが描かれていました。なかには、略奪などパニックに乗じて反社会的行為を取るシーンも描かれているものもありました。これらの映画などを見ると、リスク情報つまり身の危険が切迫しているというような情報を聞くと、パニックが発生するというイメージを持っている人は少なくないと思います。

では実際はどうかというと、この点について災害事例を分析した研究成果では、映画などとは違ってリスク情報を聞いたところで人はなかなかパニックにはならないという事が指摘されています。つまり映画で描かれているような、人々が自らの生命の危機を知らせるようなリスク情報を聞いた事によって、自己中心的な行動や反社会的な行動に移ったという事例は極めてまれであるという事が明らかになっています。確かに映画ではなく、実際に災害が発生した時に撮影された映像や、その時のエピソードなどを忠実に再現したものを見ると、パニックが発生したという風に見受けられるものは確かに少ない印象があります。

身の危険を感じるとやはり恐怖を感じて映画ようになるのかと思いますが、なぜ現実的にはそこに至る事が少ないのでしょうか。この点については様々な要因が指摘されていますが、注目すべき点として我々が知っておくべき事は、このような緊急事態において恐怖心は必ずしもマイナスな要因となり得ないという事です。人々が恐怖心を持つからパニックが発生してしまうと私達は考えがちです。しかし現実の災害事例を見てみると、恐怖心がかえって集団の意思統一や生き残るための積極的な強力な源になったという事例は実は少なくありません。また災害時のコミュニケーションに関する研究においては、緊急事態における恐怖心は問題ではなくて、むしろ解決策の一部にすらなり得ると指摘する人々も存在します。実際に2011年3月に発生した東日本大震災においても、津波警報が町中に鳴り響く中で人々が恐怖にかられながらも地域の高齢者の安否確認を行いながら極めて協力的に避難活動を実践した事例が多く見受けられます。また私の知る限りではありますが、津波警報によってパニックが発生したという事例は聞いたことがありません。

パニックが生じやすいという考え方は誤りですが、逆にこのような危険な状況下でパニックは絶対に発生しないという考え方も誤りです。実際にパニックが発生した事例というのはいくつか存在します。ではどのような条件が揃った時にパニックが発生するかというと、これについては災害心理学という研究分野で研究されており、今のところ4つの条件が揃った時にパニックが生じると言われています。

第一の条件は、身の危険が切迫しているという意識が人々に共有されている状況です。簡単にいえば多くの人が危ないと感じている状況の事です。これが存在し、第二の条件は、危険を逃れる方法があると人々が確信し信じているという状況があるという事です。実は人々は何をやっても無駄である、これはもう逃れられないと考えると、実は避難行動も起こさないしパニックも発生しません。従って、ドアから脱出さえすれば助かるというような特定の方法をとれば身の危険が回避できると人々が確信している状況がこの第二の条件に当たります。そして第三の条件は、身の危険を脱出する事は可能であって、かつその方法が分かっているが、その方法を自分が本当に出来るかどうか保証されていないという強い不安感がある事です。事例を元に簡単に言うと、非常口から脱出すれば助かると分かっていても、自分が本当に非常口から出られるかどうか、それについて強く不安を感じている状況がこの第三の条件になります。そして第四の条件は、人々の間で相互コミュニケーションが正常に成立しないような状況です。例えば、怒鳴り声や悲鳴によって把握すべき情報が伝達されないとか、避難経路等がわかっていない状況が作られてしまう。これらが第四の条件にあたります。まれではありますが、このような条件が揃った場合には緊急事態においてパニックが生じてしまうと指摘できます。身の危険を正確に認識する事や助かる方法を知っておく事、簡単に言えば第一の条件と第二の条件は避難行動において大変重要です。従ってパニックを防ぐためには避難方法が実践可能かどうかの不安感をなるべく減らしてあげる事と、緊急事態においても必要なコミュニケーションが成立する状況を作る事が非常に重要であるといえると思います。

今日のまとめ:
災害パニック映画などで見るようなリスク情報の伝達がパニックを発生させるという事が実際に起きることは極めてまれだと指摘できます。従ってパニックを過度に恐れてリスク情報を伝えない方が、緊急事態においてはマイナスになるかもしれません。むしろ緊急事態においてパニックを防止するには避難方法が実践可能かどうかの不安をなるべく減らしてあげる事、そして緊急事態でも必要なコミュニケーションが成立する状況を作ってあげる事が重要であると言えます。

分野: 企業倫理 経営リスクマネジメント |スピーカー: 平野琢

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