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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 株主総会について(2) (企業財務管理、国際金融/平松拓)

株主総会について(2)

平松拓 企業財務管理、国際金融

19/10/10

 前回は株主総会の基本的な機能を説明し、また、実際の株主総会に出席した時の様子と感想を述べました。一言で言えば、株主総会が一般株主と経営者の間の対話の場としての機能するようになって来ているということをお話したつもりです。今回は、こうした現在の総会の様子と対照的な少し昔の総会を振り返ると共に、最近増えている株主による提案や、会社側提案への反対票など、株主による積極的な意思表示の背景を考えてみます。

 上場企業の株主総会の変化を考える場合、経営者と株主の関係が鍵になります。というのも、戦中と戦後復興を支えた経済体制以降、経営者にとって株主は自社の経営を考える上でそれほど重視すべき存在とは見做されて来なかった長い歴史があり、そうした経営者と株主の関係が、株式の所有構造の変化や、最近のガバナンス改革により変化しつつあることが背景となっているからです。

 かつては上場企業の多くにおいて、発行済み株式の過半とは言わないまでも、かなりな割合が、親密な銀行や系列企業、取引先により、「持合い」の形で保有されていました。「持合い」株主は株式総会に際して、お互いに事前に白紙の委任状を提出したり、株主総会で会社提案に賛成票を投じたため、会社側提案が否決されることはまずありませんでした。つまり、経営者はこうした「安定株主」或いは「物言わぬ株主」のお陰で、自由に経営を行うことができたので、一般株主の利益や、株主総会において一般株主の意見をそれ程重視する必要もありませんでした。

 嘗ての株主総会に際して経営者が気を使ったのは、寧ろ議事を混乱させる、あるいはそうした行動を示唆することで、暗に「利益供与」を要求するような株主、所謂「総会屋」への対策で、その結果、株主総会は永らくピリピリした雰囲気で、議事進行が何よりも優先されていました。そうした意味で、株主総会は経営者と株主の間の正常な対話の場とはなっていませんでした。しかし、総会屋への利益供与に対しては社会の批判が高まり、関係者が刑事訴追されたりもしたことから企業の姿勢も変わり、こうした話はあまり聞かれなくなりました。

 90年台になるとバブル経済の崩壊で株価が急落して株式持合のリスクが顕現したり、資本コストに対する認識も広がったことで、企業間の「持合い」解消の動きも見られ、結果として、株主の構成としては生保や年金運用機関といった機関投資家や外国人投資家、個人のウェイトが高まりました。

 そうした中、ある程度のシェアの株式を購入すると同時に、会社側に対して取締役としての受入れや事業の分割、企業の身売り等を提案する外国人投資家が現れ、また、日本人率いるファンドにもこうした動きに追随するところが現れるようになって、会社側も否応なく株主を意識せざるを得なくなってきました。それでも、株主の提案を積極的に受け入れる、或いは検討することはほとんど無く、逆に、こうした株主の動きを封じ込めるために買収防衛策の導入を図ったり、持合を逆に強化しようとする企業も少なくありませんでした。このような状況下での株主総会の現場は、会社側と提案者たる株主の間での激しいやり取りが行われ、対話の場というより対決の場に近かったと言えるかもしれません。

 そうした状況を大きく変えたのが、2013年からのコーポレート・ガバナンス改革です。この中で採用されたコーポレート・ガバナンスコードで、企業が他企業の株式を政策保有する場合には、その合理性を説明することが求められるようになり、持合の解消が一段と進むきっかけとなりました。また、企業はそれまで軽視してきた株主を含む利害関係者の利益を重視した経営を行わねばならないとされ、それを担保するために、社外取締役を選任することも義務付けられました。

 一方、機関投資家は、従来、短期的な投資収益率を追求する一方で、経営については経営者に任せきりにして株主総会でも明確な意思表示をして来ませんでしたが、やはり改革の中で採択されたスチュアードシップ・コードにより、背後に抱える最終的な投資家の利益のために、積極的に投資先企業の経営に関わること、具体的に経営者との間で建設的な対話を行うことが求められました。この結果、機関投資家は会社側提案に対して是々非々で臨むようになってきており、賛否どちらの投票を行ったかを公表するなど、変化が表れてきています。こうした機関投資家の変化も、経営者が株主重視の姿勢をさらに強めることに繋がっています。

 今年の株主総会で、株主による提案が史上最高となったことや、会社側提案に対する反対票が増えている背景には、こうした経営者と株主の間の関係の変化がある訳ですが、こうした変化は、コーポレート・ガバナンスの観点からは前向きに捉えられると共に、一般投資家にとっても株主総会が身近なものになり、経営者が多くの株主と対話を行えるようになっているという意味でも、歓迎すべき動きと言うことができるでしょう。

分野: ファイナンシャルマネジメント |スピーカー: 平松拓

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