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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > マシュマロ・テスト (産業組織心理学、社会心理学/三上聡美)

マシュマロ・テスト

三上聡美 産業組織心理学、社会心理学

19/09/20

前回は、「時間的な選好の逆転」という、将来の利益よりも目先の利益を選ぶことについてのお話でした。今そして明日、1年後そして2年後という時間の展望がある場合、「今」の利益の価値が最も高いということでした。
今回はそれと関連するお話として、マシュマロテストの話をします。
これは1960年後半から1970年前半くらいにわたり社会心理学者のウォルター・ミシェルという人達のによって行われた実験です。この実験は、4歳から5歳の子どもを対象に行われました。実験では部屋に子どもたちを招き入れて椅子に座らせると、目の前にマシュマロを1つ置き「このマシュマロを今食べても良いけれど、15分待つことが出来たらもう1つマシュマロをあげるよ」と伝えます。そして、「もし途中でマシュマロを食べたくなったらここにあるベルを押せば食べることが出来ます。でもその時食べられるマシュマロは1つだけです」と伝えて、実験者は部屋を出ていきました。部屋の様子はカメラで撮影されています。その実験では、手遊びをする子どもが居たり、マシュマロをじっと見つめる子、つついたりする子、マシュマロから目を反らして我慢する子どもなど色々な行動が観察されたそうです。さて、子ども達は目の前のマシュマロを食べずに15分待つことが出来たのでしょうか。

実験の結果、子ども達がマシュマロを食べずに待つことが出来た時間は平均で2分間だったそうです。
そして、最後まで我慢して2個のマシュマロを食べた子どもは参加した子供全体の三分の一程だったそうです。マシュマロテストの後、この研究をしたミシェル達は実験に参加した子ども達を数十年にわたって追跡調査し、あることを発見しています。それは何かと言いますと、マシュマロを食べずに我慢した子どもは我慢出来なかった子どもよりも実験から10年程経ち、若者に成長した時、先の事を考えて計画や行動が出来て誘惑に負けにくいという特徴が見られたそうです。つまり、この研究からは、子どもの時に我慢出来た子どもというのは、10年後もそうなっている可能性が高いということが言えます。

更に大学進学適性検査では、マシュマロを我慢出来た子どもの方が我慢出来なかった子どもよりも高い得点を得たそうです。また、マシュマロを我慢出来た子どもの方が肥満指数も低く、対人スキルにも優れていたそうです。マシュマロを我慢出来た人と我慢出来なかった人の脳をfMRIを使って測定した結果、当時の実験でマシュマロを我慢出来た人は、脳の前方にある前頭前野と脳の中心くらいに位置している線条体の機能的な結合が強いことが明らかになりました。前頭前野は脳の中ではブレーキの役割をしていて、行動や思考の制御とか抑制に関わる領域になるのだそうです。そして、線条体は報酬系と呼ばれていて、快楽に対して強く反応する領域なのだそうです。この脳の測定から何が言えるかと言いますと、マシュマロテストでマシュマロを我慢出来た人は、脳の前頭前野によって線条体の活動を適切に制御する事が出来ると考えられます。マシュマロを我慢出来なかった人は、前頭前野の制御なく線条体が反応してしまったのではないかと考えられています。このマシュマロテストによって、マシュマロを我慢出来るかどうか、つまり子供の頃に自制心をコントロール出来るかによってその後の人生が左右されるということが分かりました。
では、子供の頃に自制心がコントロール出来なかった人は大人になってどうすれば良いのでしょうか。
実は、自制心をコントロールする能力は後から身に付ける事が出来るのだそうです。マシュマロテストで15分我慢して2つのマシュマロを食べることが出来た子どもの多くは、マシュマロから目を反らしたり後ろを向いたりして気を反らしていたそうです。このように、マシュマロから注意を反らすという方略を取る事によって15分間を乗り切ることが出来たのではないかと考えられます。そうした自制心をコントロールする方略を生活していく中で学習していくと良いのではないかと思います。しかし、4、5歳の子供が我慢するというのは本当に難しい事でしょうし、子ども達がその自制心をコントロール出来ないという時に大人としては何か声掛けしたりアドバイスをしたいと思います。が、声掛けは非常に大事なことですが、いつも大人が注意を払って見ていると、子どもは自分で考えるよりも大人の言う事を聞こうという気持ちになってしまいがちです。そのため、まずは声掛けをせずに子どもが自分自身でどういう風に行動していくのかを観察することが大事になってきます。周りの声掛けなしに子ども達が自分でどういう行動を取っていくのか、そうした中で自制心を身に付けてコントロールしていくということが大事になってきます。

マシュマロテストが行われて以降、研究を行ったミシェル達が長い年数を掛けて追跡調査を行っていきました。しかし、その一方でマシュマロテストに疑問を持った研究者達が、当時の実験よりも被験者の数や生活背景を増やして再現実験を行っています。その実験では、マシュマロを2個食べる事が出来るかどうかは子供の社会的・経済的背景に左右されるという結果になっています。

では、今日のまとめです。
将来の利益の為に、目先の利益を我慢するという「マシュマロテスト」の話でした。マシュマロテストとは、目の前にある1つのマシュマロを我慢して後で2つのマシュマロを得る事が出来るかどうかを試した実験で、子供の頃に自制心をコントロール出来るかどうかで将来が左右されるかもしれないというお話でした。

分野: 社会心理学・組織心理学 |スピーカー: 三上聡美

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