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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 時間的な選好の逆転 (産業組織心理学、社会心理学/三上聡美)

時間的な選好の逆転

三上聡美 産業組織心理学、社会心理学

19/09/19

今日は、時間的な選好の逆転についてお話します。
「時間的な選好の逆転」とは「選んで好む」と書き、将来の利益より目先の利益を選ぶことを言います。その例として、イソップ物語のアリとセミの例がよく使われます。
余談になりますが、日本では「アリとキリギリス」のお話が有名ですが、元々は「アリとセミ」のお話だったそうです。イギリスなどセミのいない地域では、キリギリスやコウロギなどに変わってお話が日本に伝えられたと言われています。

今回は「アリとセミ」で考えていきましょう。皆さんは、「アリとセミ」のお話をご存知でしょうか。いわゆる「アリとキリギリス」と中身は同じです。簡単にお話しすると、「アリとセミ」のお話とは、夏の間せっせと食べ物集めのために働いているアリと、歌を歌って遊んでいるセミが出てきます。冬になった時、歌を歌ってばかりいたセミは食料がなくなり、アリに「食べ物を分けてください」とお願いに行きます。すると、アリ達は「どうして君は夏の間に食べ物を用意しておかなかったの」と聞きました。セミは「歌ばかり歌っていたから、暇がなかったんだ」と答えました。その答えにアリは笑って「夏の間歌ったのなら冬の間踊りなさい」と言ったというお話しです。

再び余談ですが、このお話には2パターンあるのをご存知でしょうか。
1つ目は、「夏の間歌ったのなら冬の間踊りなさい」とアリに言われたセミが「歌うべき歌は歌い尽くした。私の亡骸を食べて生き延びれば良い」と言ったパターンになります。2つ目は、日本ではこちらの方が有名ですが、食べ物を貰いに来たセミ(日本では、セミ)にアリは「さぁ、遠慮なく食べてください。元気になって今年の夏も楽しい歌を聞かせてください」と言ってキリギリス(セミ)は嬉し涙をポロポロ零すというお話です。

イソップ物語の様な寓話は伝えたい教訓によってお話の結末が変わってくるのかもしれませんが、アリとセミのお話では、「冬」という将来の事を考えて夏の間せっせと働くアリと、将来の事をあまり考えず夏という今だけを考えて歌を歌い続けるセミという設定では結末が違っていても共通している設定だと思います。その設定で、「あなたは先の冬の事を考えてせっせと働くアリですか。それとも先の事を考えず、好きな事だけをして過ごす歌うセミですか」と問われた時、みなさんはどちらを選びますか。

アリを主張したいと思いながら、実際はセミという人も多いのではないかと思います。実際、毎年猛暑と言われる夏を過ごしていたら頭がボーっとして先の事など考えられないのではないかと思います。冬の食料集めのために夏に脱水症状を起こしてまで働くよりも、ストレスを貯めないように時には歌を歌って過ごすという考えもありますよね。冬に快適に過ごすという利益よりも今を快適に過ごすという利益を選ぶ事は「時間的な選好の逆転」になります。将来の利益より目先の利益ということです。

ここで少し話を変えてみましょう。
例えば1万円をくれるという人が現れた時、その人が、今すぐ1万円を受け取るか、1週間後に1万1千円を受け取るかのどちらかを選ぶように言ってきたら、みなさんはどちらを選びますか。

恐らく多くの人は今すぐ1万円を受け取る方を選ぶと思います。1万円をくれるという良い人がいきなり現れたのですから、すぐに頂いておきたいと気持ちになるのではないかと思います。では、同じように1万円をくれるという人が現れた時、その人が1年後に1万円を受け取るか、もしくは1年1週間後に1万1千円を受け取るかのどちらを選ぶように言ってきたらどちらを選びますか。

おそらくこちらも多くの人は1年1週間後に1万1千円を受け取る方を選ぶと思います。1年待つんだから、更にもう1週間ぐらい待てるという気持ちになるのでしょうか。

さて、この今すぐ1万円を受け取るか1週間後に1万1千円を受け取るかのパターンと、1年後に1万円を受け取るか1年1週間後に1万1千円を受け取るかのパターン、どちらも1週間待てば千円アップのお金がもらえます。しかし、今から1週間待つことと、1年後、更に1週間待つのとでは気持ちが違ってきます。目の前の1週間は、少し金額アップのために待つには長すぎるけれども、1年後と1年1週間後はあまり違いを感じないのではないかと思います。今から1週間待つことと1年後、更に1週間待つことの気持ちの矛盾が出るのは、貰える1万円の価値が時間によって変わるからなのです。つまり、「今」が一番価値があるということです。明日より1か月後より1年後より、今日1万円を貰えるという価値が高いということになります。

今日からダイエットをしようと決意した時に知り合いからご飯に誘われたとします。ダイエットを決意したばかりなのにと思いながらもお誘いは断れないので、健康的な物を食べれば良いかと思ってお店に行ったら、カロリー高めの物が食欲をそそってきます。さあ、どうしますか。「明日からで良いかな」と思う方が多いのではないでしょうか。ダイエットをした先の達成感よりも「今美味しい物を食べたい」という快楽を選んでしまうのです。

これが、「時間的な選好の逆転」という将来の利益よりも目先の利益を選ぶというお話でした。

では、今日のまとめです。
目先の利益に目がくらんで将来の大きな利益に目がいかないことを時間的な選好の逆転と言います。将来の自分の健康を考えて、煙草を止めた方が良いと思いながら目先の煙草の一服が止められないというのもこの理屈に当てはまります。

分野: 社会心理学・組織心理学 |スピーカー: 三上聡美

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