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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > モチベーションの構造② ERG理論とホーソン実験 (コミュニケーション学、リーダーシップ開発、アントレプレナーシップ/松永正樹)

モチベーションの構造② ERG理論とホーソン実験

松永正樹 コミュニケーション学、リーダーシップ開発、アントレプレナーシップ

19/09/18

前回からモチベーションの話をしています。今日は人の行動の源泉となるモチベーションについて、近年の研究の礎となっている人間観、つまり人間とはどういう存在なのかというそもそも論が生みだされた流れについてお話しします。

有名なマズローの欲求階層説ですが、前回、実は裏付けとなるエビデンスに乏しいという話をしました。が、では、他にどのような理論があるのでしょうか。マズローへの批判は、人のモチベーションは欲求階層説の主張のように綺麗に順序立てて現れるものではなく、低いレベルのものから高いレベルのものまでしっかりと順番が決まっているわけではないというものでした。この点を少し改善してクレイトン・アダルファーという心理学者が提唱したのが「ERG理論」というものです。

ERG理論は欲求階層説と同じく、人の欲求をいくつかに切り分けます。まず生きる為に必要な食欲や睡眠欲など、ある意味動物的な「生存欲求」、他者との関係を持ったり、そこで認められたりしたいという人間関係に関する「関係欲求」、そして自分をより成長させたいという「成長欲求」です。生存の「Existence」、関係の「Relatedness」、成長の「Growth」、それぞれの頭文字をとってERG理論と名付けられました。

更にマズローと違って、ERG理論では人は同時に複数の欲求を持ち、しかもある欲求が満たされないと、それを達成したいという思いと共にそれ以外の欲求が大体代替的に強まる、という風に想定されています。例えば、仕事でプロフェッショナルとして成功したい力をつけたいという成長欲求、これが満たされないと場合、もちろん機会を求めて色々と行動したりもするでしょうが、一方で人間関係を充実させて成長への思いを紛らわせたりもします。例えば仕事でどうしても欲しいチャンスが得られなかった時に子育てにエネルギーを割いたり、恋人との時間により時間を使ったりというところケースが考えられますです。欲求の階層と順序が説のカッチリ決まったものていたマズローの説よりもと違って、より現実の人間の行動パターンに近い予測が立てられるようになったというのがわかると思います。しかし、欲求階層説にせよERGに理論にせよ、その根底にあるのは、人も動物も基本的に変わらないものとしてみる、ある意味機械的な人間観でした。何やら複雑な動きをするマシンがあるが、そのメカニズムが分からないから色々とつついたり回したりしてみて実験をして更に仮説を立てたりして、説明書を作ろうといった感じでしたす。

その大元にあるのがは、「テイラー主義」と呼ばれる経営管理思想です。提唱者のフレデリック・テイラーというのは、病気のためにハーバード大学を中退した後、工場などで働きながら独学を重ねて、後に経営学では今でも古典になっている『科学的管理法の原理』という著作を発表するなど、まさに立志伝中の人物ですした。この人が提唱したもので、要は彼の主張は、「ヒトは合理的存在である」というもので、合理的であるがゆえに給料をカットされたりクビになったりするギリギリまでは手抜きをする、その方が使うエネルギーが少なくて済むということです。最小限のインプットで最大限のアウトカムを得ようとする、経済合理的存在としての人間観。これに基づき、テイラーは工場労働者が手抜きを出来ないよう職場にストップウォッチを持ち込みました。1つ1つの作業の標準的な手順を定めて時間当たりのノルマを算出し、更に個々のタスク管理にとどまらず、生産性に応じて給料を定める段階的賃金制度、いわゆるノルマやラインワーカー(手を動かす人)と管理職をハッキリと区別する職務別組織など、いわいるマニュアル型、ピラミッド型経営管理手法を構築しました。こうして属人性を配した「仕事の標準化」とその徹底による「生産性の最大化」を目指したのがテイラーです。

これとは根本的に異なる流れを作り出したのが「ホーソン実験」と呼ばれる研究です。ハーバード大学のエルトン・メイヨーとフリッツ・レスリスバーガーという学者が率いる研究チームが工場の生産性に影響を与える原因を探ろうと考えました。そこで彼らは作業をする部屋の明るさや温度、湿度など様々な条件を変え、それがどのように影響するのかを検証しました。これはテイラー主義の流れです。しかし、予想に反してどのような条件を設定しても実験に参加した女性工員の方々の生産性が高止まりして、時には条件をあえて悪化させたのにそれまでの生産性の記録を更新することすらありました。

一体全体どうなってどうなっているのだろうということで、メイヨ-とレスリスバーガーが追加調査をして出した結論というのは、ホーソン実験の生産性に大きな影響を及ぼしていたのは作業条件の良し悪しではなく、職場での人間関係のと従業員の自尊心だったというものです。実験が行われたのがは1920年代後半から30年代初頭にかけてで、。当時は現代と比べて物理的環境が劣悪であっただけでなく、作業員は尊厳ある存在として扱うという規範自体ほぼありませんでした。そんな中、科学実験というコンテキストで行われたホーソン実験では普段工場で働く時と違って、威圧的な扱いを受けることはありませんでした。実験の条件設定についても事前に相談されるなど、人としての配慮を受けたことで彼女達の気持ちやモラルが高まり、それが生産性向上に反映されたと考えられています。この発見が「タンパク質で出来たマシン」として人を見る、それまでの機械的な視点に根本的な疑問を投げかけ、自己を認識し自尊心を持って未来を見通す存在としての人間観に立脚したモチベーション理論を追求する流れへと繋がっていきます。

今日のまとめ:
ERG理論によると人は生存、関係、成長という3つの異なる欲求を持つことになります。それらを同時に追求することもありますし、もしある欲求が満たされないと、その欲求を満たそうとする一方で別の欲求によって代替することがもあります。ホーソン実験では客観的な作業条件よりも職場の人間関係が生産性を左右することが発見されました。

分野: リーダーシップ 対人・異文化コミュニケーション論 組織行動 |スピーカー: 松永正樹

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