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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 業界標準と競争戦略(2) (企業戦略、生産管理/目代武史)

業界標準と競争戦略(2)

目代武史 企業戦略、生産管理

19/09/25

前回から、業界標準と競争戦略という話をしています。前回は、最初は色々な技術方式や標準が登場するが、競争の結果、事実上、特定の標準が定まっていくことから「デファクト・スタンダード」というということをお話しました。

このデファクト・スタンダードですが、勝った陣営が全ての利益を取っていく、勝者総取りという側面があるがゆえに、関係者の間でもこのデファクト・スタンダードに対するある種の警戒感が高まってきました。負ければ全て失う事になってしまいますので、いわゆるコンセンサス標準を目指す動きが出てきました。コンセンサス、つまり合意です。市場に技術を出す前に、話し合いである程度合意していこうという動きが出てきました。

同業他社でライバルではあるけれども、複数の技術方式が立ち上げられそうだということは事前にある程度分かるわけです。そうした時に事前に関係企業で話し合って技術方式の一本化を図ろうというわけです。そういう形で出来上がった標準の事を「コンセンサス標準」、つまり合意に基づいた標準と言うわけです。

その代表的な事例としては2000年代の初め頃に展開された、次世代DVDを巡る競争があります。当時、DVDの次の世代を担うハイビジョン映像の大容量の光ディスクの方式を巡って、開発競争が展開されていました。この時も実は2つ技術方式が提案されました。1つは東芝やNECが中心となって提案したHD DVDという方式です。このHD DVDですが、従来のDVDとほぼ同じディスクの構造をしていました。どこに違いがあるかというと、これまでの赤色レーザーにかわって波長の短い青色レーザーを使うことで記憶容量を増やすという方式です。基本的に、従来のDVDと同じ構造ですから既存の製造設備を応用出来るというメリットがありました。

もう一方の陣営がブルーレイディスクで、ソニーやパナソニック、フィリップスなどが推していた方式です。青色レーザーを使うという点は同じですが、ディスクに何層にもわたってデータを記録する方式という点が違っていました。データ容量は飛躍的に大きくなるわけですが、技術の仕組みが従来と全く異なるがゆえに、従来の製造設備が使えないというデメリットがありました。家電業界では、その前のVHSとベータマックスが競争して、デファクト・スタンダードによる決着をつけたのですが、この時は敗者と勝者がはっきりと分かれて非常にリスクがあったということで、今回は事前に技術方式を統一しようと合意形成の場が持たれました。その1つが1995年に設立されたDVDコンソーシアムです。一般に「コンソーシアム標準」というものがありますが、この場合、他の技術方式との競争が想定される時に関係する企業が集まって話し合いによって標準を合意しようというものです。

コンソーシアム標準はコンセンサス標準の1つの形と考えて良いと思いますが、この場合にはある技術方式に関心のある企業が集まって、その集団の中である種、閉鎖的に議論が行われるというのが特徴です。話し合いの輪が閉じているがゆえに合意形成しやすいというのがメリットです。似たようなコンセンサス標準の作り方として、「フォーラム標準」というものもあります。こちらは他の技術方式との競争を想定しないオープンな集まりによって技術方式の統一を図ろうというものです。先ほどのDVDコンソーシアムは実は1997年にDVDフォーラムと改組され、よりオープンな集まりに生まれ変わりました。このコンセンサス標準を上手く成立させられるかどうかは、その技術方式に賛同する企業や団体がどれだけ集まるかということに関わってくるわけです。要するに仲間作りが成功の鍵を握るということです。

ただ、悩ましいのは業界標準の策定に多くの企業が関われば関わるほど、合意形成が難しくなるということです。次世代DVDの事例ですと、結局事前に技術方式を統一することが出来ませんでした。HD DVDとブルーレイディスクに分裂してしまって、統一出来なかったということで、結局、市場での競争の結果ブルーレイが市場で優位となり、デファクト・スタンダードになったというわけです。この時の雌雄を決する要因となったのが映画会社の判断でした。当時、HD DVDを支持していたのがユニバーサル・ピクチャーズ、一方でブルーレイディスク陣営はソニー・ピクチャーズエンタテインメント、ウォルトディズニー、20世紀フォックスなどでした。その他の例えばワーナー・ブラザーズ、パラマウント・ピクチャーズは、当初中立の姿勢をとっていましたが、後になってワーナーがブルーレイディスク側についたことで勝負が決まりました。結局、2008年頃になって東芝がHD DVDから撤退を発表して、次世代DVDを巡る技術方式の競争はブルーレイがデファクト・スタンダードになったわけです。


今日のまとめ:
複数の技術方式が提案されている時、デファクト・スタンダードによる決着は勝者総取りとなって負けた時の損失が大きくなります。そこで、事前に関係企業や団体で調整し技術方式を一本化しようというのがコンセンサス標準です。その鍵を握るのが仲間作りです。ある技術方式に賛同する仲間が増えれば増えるほど、その技術が業界標準となる可能性が高まりますが、関係者が増えるほど合意形成は難しくなってしまいます。そこで、コンセンサス標準の策定にあたっては合意形成のプロセスをどこまでオープンにし、どこからクローズにするのかが重要になります。しかし、そのバランスについては産業界でも学術界でも試行錯誤で研究が進められているというのが現状です。

分野: 企業戦略 生産管理 |スピーカー: 目代武史

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