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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > キャッシュレス決済について② (企業財務管理、国際金融/平松拓)

キャッシュレス決済について②

平松拓 企業財務管理、国際金融

19/08/30

前回、キャッシュレス決済の類別として、ポスト・ペイのクレジットカードや、プリペイの電子マネーなどと共に、最近注目されているスマホを使ってコード読み取り決済を行うスマホ決済について説明しました。今回は、そのスマホ決済のサービス提供会社が行っている巨額の予算を使ったキャンペーンの背景にある、キャッシュレス決済の持つ特性と、キャッシュレス決済を振興しようとする政府の取組などについて説明します。

昨年暮れより、スマホ決済のサービス提供企業によるキャンペーンで、同決済サービスを利用して加盟店で買い物をすると、決済金額の5%~20%、総額100億円から300億円規模の電子マネーの残高の還元を行うといったものが目立っています。このような大盤振る舞いの背景には何があるのでしょうか。

第一に、こうした決済サービスは、加盟店が広がれば広がるほど、利用者にとっての利便性が高まり、逆に、利用者が多ければ多いほど、店舗側にとっても加盟する価値が増すということがあります。つまり決済サービスは、ネットワークの広がりにより価値が増す、即ちネットワーク外部性を持つために、早く大きなネットワークを作り上げたところが競争上優位に立つことになります。そのため、事業者同士で、「利用し続ける価値がある」と感じてもらえるだけの利用者と加盟店数(これをクリティカル・マスと言います)を早く獲得すべく、熾烈な競争を行っていることが背景にあります。

第二に、ネットワークの拡大に成功し、クリティカル・マスを獲得して生き残ったサービス業者の間でも、利用者や加盟店の多寡によって、決済手数料ばかりでなく、得られる決済情報の価値に差が出ます。これまでのキャッシュレス決済業者は、こうした決済情報を十分には生かしきれませんでしたが、ビッグ・データの解析技術やAIの機能向上によって、その利用価値が急速に高まっているという背景もあります。

そして第三に、本年10月に迫った消費税率引き上げに際して、政府が買い急ぎと反動減の抑止、小規模店舗に対する支援、そしてキャッシュレス決済振興の観点から、税率引上げ後9か月間、小規模店舗でのキャッシュレス決済に対し、2800億円をかけて5%のポイント還元の実施を決めていることがあります。それに向けて、小規模店舗によるキャッシュレス決済導入が増加することを見込んで、サービス提供業者がシェア獲得のための攻勢を一段と強めています。

この政府の対応の背景には、現状、日本でのキャッシュレス決済の比率が20%程度にとどまり、現金での決済比率が諸外国比で高止まりしている状況に変化をもたらしたいという意図が有ります。現金が多用される背景には、治安が良く安全であること、銀行店舗及びATMが密度高く且つ高機能に設置されて現金決済の利便性が高いことがあると言われています。しかし一方で、国を挙げてインバウンド消費による経済振興を図る中で、観光客からのキャッシュレス決済に対する要望が強いことや、キャッシュレス決済を促進することで、労働力不足深刻化の中での決済事務の効率化、入出金の管理サービス利用による合理化などが図れることに加え、決済データの活用による新たなビジネスの創出を通じて、経済振興に繋がることが期待されています。こうした背景から経産省は、昨年纏めた「キャッシュレス・ビジョン」の中で、2025年迄にキャッシュレス決済比率を40%程度まで高め、将来的には世界最高水準の80%を目指すことを謳っています。

しかしながら、キャッシュレス決済がより広く普及するためには様々な障害もあります。第一に店舗側に機器を含め導入費用がかかりますし、現金決済と違って決済手数料もかかります。また、消費者の側では、現金に対しては安心感がある一方、キャッシュレス決済については未だ不安感が解消されていません。第二に、これまでキャッシュレスを体験する機会が少なく、未だ慣れていないということもあります。その点では、今回の消費税率引上げの機会に、政府が行う機器導入費用の補助やポイント還元、さらには民間のサービス提供業者による導入費用や決済手数料ゼロのキャンペーンやキャッシュ・バックやポイント還元のキャンペーンがこうした障害の除去に繋がることが期待されます。

最後に少し横道に反れますが、最近の利用者拡大キャンペーンの中ではユニークなものも生まれています。これまでのキャッシュ・バックキャンペーンは、決済サービス業者が広告により決済の利用を訴え、それに応えて決済に利用した人が恩恵に預かるというのが基本でしたが、新たなキャンペーンでは、友人に1000円までの送金をしたら、その分のポイントが還元され、キャンペーンに応えた人は実質チャラですが、送金を受け取った友人に恩恵がもたらされます。但し、送金を受け取った友人は、実際にその恩恵に預かるためにはアプリの利用者にならなければなりません。つまり、利用者に新たな利用者を勧誘させるという効果を持つキャンペーンで、スマホによるキャッシュレス決済だからこそ生まれた、新しい発想ということができましょう。

まとめ:最近目につく、スマホによるQRコード決済業者のキャンペーンなど、キャッシュレス決済を巡る動きの背景には、ネットワーク外部性や決済データの利用価値など、キャッシュレス決済の持つ特性や、政府によるキャッシュレス決済の後押しといったことがあります。キャッシュレス決済の普及には色々と越えなければならない障害もありますが、新しい発想でそうした障害を乗り越えていくことが期待されます。

分野: ファイナンシャルマネジメント |スピーカー: 平松拓

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