QT PRO モーニングビジネススクール

QT PRO
モーニングビジネススクールWeb版

FM FUKUOKAで放送中「QT PRO モーニングビジネススクール」オンエア内容をWeb版でご覧いただけます。
ポッドキャスティングやブログで毎日のオンエア内容をチェック!

PODCASTING RSSで登録 PODCASTING iTunesで登録 電子書籍で記事を読もう! EPUB

ブログ&ポッドキャスト詳細

QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 規範行為の焦点化理論 (産業組織心理学、社会心理学/三上聡美)

規範行為の焦点化理論

三上聡美 産業組織心理学、社会心理学

19/08/01

今日は、「規範行為の焦点化理論」についてお話します。
難しそうだなと思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、それほど難しい話ではありません。
みなさん一度は「赤信号皆で渡れば 怖くない」という言葉を聞いたことがあるかと思います。私がこの言
葉を聞いたのも小学生の頃でしたが、その時「分かる分かる」という気持ちと「いやいや、皆で渡っても怖いよ」という気持ちが自分の中であったような気がします。

確かに1人で悪い事をするよりも大勢の方が罪悪感も薄れ、小学生が大勢いると車も止まるだろうと子どもながらに思った一方で、逆に車が止まらなくて皆はねられちゃったら怖いなとも思っていました。信号が赤の時には道路を渡ってはいけないということは法律的なお約束でもあるので分かっているはずですが、イベント会場の周りなどで横断歩道の信号はとっくに赤になっているにも関わらず、ずっと渡り続けていて車のクラクションが鳴り響くということもあります。

さて、この「赤信号 皆で渡れば 怖くない」ですが、赤信号は渡ってはいけないというルールと皆で渡れば問題ないというルールは矛盾しています。

「皆で渡れば問題ない」というのをルールと言うのかはさておき、皆がしているから「まあ良いじゃない」という気持ちになるという意味で今回はルールと呼ぶことにします「赤信号は渡ってはいけない」というルールについては、多くの人が何をすべきで何をすべきでないと思っているかという認識に基づく規範になります。これを『指示的規範』と呼びます。規範とはルールのことです。「ごみのポイ捨てはいけない」「弱い者いじめはいけない」というのも『指示的規範』になります。

そして「皆で渡れば怖くない」というのは周りの人が何をやっているかという認識に基づいている規範になります。これを『記述的規範』と呼びます。例えば、法定速度を超えたスピードで運転していても周りの車も同じくらいのスピードを出しているとその速度で運転する方が良いだろうとなる、と言ったものです(※これは絶対にダメです)。この商品が大ヒットという情報に影響されて、多くの人がその商品を買ってしまう場合も『記述的規範』になります。

この「何をすべきであるか」という『指示的規範』と、「周りの人が何をやっているか」という『記述的規範』は、規範という意味では同じであっても、「赤信号は渡ってはいけないけれど、皆で渡れば怖くない」のように矛盾する場合があります。この時、どちらの規範に従った行動をとるのか、どちらの規範に焦点を置くのかを考えることになるわけですけれども、これを【規範行為の焦点化理論】と呼んでいます。

これについて、チャルデーニという人たちが行った実験を2つご紹介します。
まず1つ目の実験は、駐車場に止められた車のワイパーに交通安全に関するチラシを挟んでおき、このチラシをドライバーがポイ捨てするかどうかを観察しました。この実験では、「駐車場にチラシが散乱しているポイ捨て条件」と「綺麗に掃除がされている反ポイ捨て条件」の2つの条件場面を設定しました。更に、それぞれの条件の下で、ドライバーの目の前に実験協力者を登場させます。これにも2つの条件があり、実験協力者が「ドライバーの目の前でポイ捨てをして駐車場の散らかり具合に気づかせるパターン」と、「何もせずドライバーとすれ違うだけだけのパターン」があります。そして、駐車場が「綺麗・汚い」の2条件と実験協力者が「ポイ捨てをする・しない」の2条件の4条件場面で、ドライバーがワイパーに挟まったチラシをポイ捨てするかどうかを確認したところ、散らかっている駐車場で実験協力者がポイ捨てをする条件ではドライバーのポイ捨てを誘発することが分かりました。一方で奇麗な駐車場では、実験協力者がポイ捨てをしてもドライバーのポイ捨てが誘発されずに、実験協力者とすれ違っただけの条件の方がドライバーのポイ捨ての割合が高い結果になりました。つまり、奇麗な駐車場で実験協力者がポイ捨てをしてもポイ捨てはせず、実験協力者とすれ違っただけの方がポイ捨てをするという非常に興味深い結果になりました。

そこで2つ目実験では、今度は何も捨てられていないよりも1つくらいポイ捨てがある方がポイ捨てはしてはいけないという『指示的規範』に焦点化して、ポイ捨ては少なくなるのではないか仮説を設定して実験をしました。実験は遊園地の入り口の通路で、入場者にチラシを配り、そのチラシがポイ捨てをされるかを観察したものです。この時、通路にはあらかじめチラシを捨てておいたのですが、条件としては「チラシ無しの0」、「1枚」「2枚」「4枚」「8枚」「16枚」の6条件を設定しました。この実験の結果、ポイ捨ての数が多いと皆やっているからという『記述的規範』に焦点化されて、ポイ捨ての割合も段々と多くなっていきました。さらに興味深いことに、ポイ捨て0の条件よりも1枚だけポイ捨てのある条件の方がポイ捨ての割合が低くなるという仮設通りの結果になりました。つまり、ポイ捨てされていない状態よりも、1枚だけ捨ててある方が、返ってポイ捨てしないということです。たった1つのポイ捨てが、かえって「こんな所に捨ててはいけないのに」という考えを起こす結果になったわけです。

では、今日のまとめです。
【規範行為の焦点化理論】とは、複数の規範が同時に存在してそれが矛盾する場合、どちらの規範に焦点を向けるかというものです。私たちの周りには「指示的規範」と「記述的規範」は沢山ありますが、どちらの規範に沿って行動すべきかを考える場面も多いのではないのかと思います。

分野: 社会心理学・組織心理学 |スピーカー: 三上聡美

トップページに戻る

  • RADIKO.JP
  • ビビックスマホ