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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > セルフ・ハンディキャッピング (産業組織心理学、社会心理学/三上聡美)

セルフ・ハンディキャッピング

三上聡美 産業組織心理学、社会心理学

19/07/31

今日は「セルフハンディキャッピング」についてお話します。
セルフハンディキャッピングとは、前回お話しした「防衛的な印象操作」の1つです。人は失敗した時、大抵は素直に反省をしたりごめんなさいと謝罪をしたりしますが、時には言い訳をすることもあります。今日はざっくり言うと、「言い訳」についてのお話です。

言い訳をする時というのは、大抵何か失敗をした時です。
テストの点数が悪かった時に「テスト勉強をあまりしていなかったから、点数が悪くても仕方ないよね」と言ったりすることがあります。あえて行動をする前に言い訳をしておく場合もあるのではないでしょうか。試験の前に「昨日勉強しないで寝ちゃったからテストやばいかも」と言い訳をしておくことがあります。実際に点数が悪くても格好悪くならないようにあらかじめハンディを付けておくわけです。このように失敗が予想される時に、その失敗から逃れる為に前もって自分でハンディを付けておき、たとえ失敗してもハンディがあるからと思わせておくことを「セルフハンディキャッピング」と言います。予防線を張っておくわけです。

今日は、このセルフハンディキャッピングについてバーグラスとジョーンズが行った実験をご紹介します。
彼らは「知的作業に影響する薬の効果を検討する」という嘘の名目で実験参加者を集めました。集められた実験参加者には、「非常に難しい」と伝えられた課題に取り組んでもらいました。実際には、実験参加者はAとBの2つのグループに分けられ、Aグループの参加者にはほぼ答えのない難しい問題で構成された課題が出され、Bグループの参加者には答えが明確で易しい問題で構成された課題が出されました。答えのない課題が出されたAグループには問題を解くことによって「難しくてこんな問題解けない」という気持ちにさせ、易しい課題が配られたBグループには「難しいと言われていたが結構簡単ではないか」という気持ちにさせました。課題の後にそれぞれのグループにフィードバックを行い、Aグループの参加者には実際の得点とは関係なく「正答率は8割でした」と嘘の情報が伝えられました。高い正答率を伝えることで「なぜ8割も正解したのだろう。まぐれだろうか」と課題の結果と自分の能力を結び付けにくい状況を作りました。良い成績を出したけれど、それはまぐれであって自分の能力ではないと自分に自信が持てないように仕向けたのです。一方、易しい課題が配られたBグループには、実際の成績がフィードバックされて課題の結果と自分の能力が結び付きやすい状況を作りました。課題とフィードバックの後、薬を摂取してもらい再び課題を解いてもらうのですが、接種してもらう薬は3種類(「知的作業を促進する薬」、「作業を妨害する薬」、「知的作業に関係のない薬」)用意されました。参加者はこの中から自由に薬を選べるようになっていました。

さて、次の課題に取り組む前に実験参加者たちはどの薬を選んだのでしょうか。実験の結果、自分の能力に自信を持てないAグループの参加者の内、約6割が「知的作業を妨害する薬」を選びました。これは易しい課題を与えられたBグループよりもはるかに多い割合でした。

おそらく、一度目の課題の難しさを体験しているため、二度目の課題も上手くいかないのではと思ったのかもしれません。もし、二度目の課題も上手くいかなかったとしても「妨害する薬」を飲んでおけば自分の能力が低いから課題が解けなかったのではなく、薬を飲んだから上手くいかなかったのだと言い訳になるからではないかと考えられます。

さて、人はなぜセルフハンディキャッピングをしてしまうのでしょうか。1つの考え方として心理学では、人は自尊心を維持したい動機付けがあるからだと考えられています。ある行動について、その行動が成功すれば自尊心を守ることができますが、失敗すると自尊心が傷付いてしまいます。そのため、自信がない時は失敗した時の言い訳を用意しておくのです。その言い訳がそれなりに納得できるものであれば実際に失敗したとしても不利な条件のせいだとか自分に能力がないわけではないと自尊心を守ることが出来るのです。もし、成功できれば不利な条件があるのに成功した。自分には能力があるかもしれないと自尊心を高めることが出来ます。このように、セルフハンディキャッピングは自尊心維持、または向上に繋がるので上手く利用すれば良いのですけれども、一方でセルフハンディキャッピングが多い人は成功の確率が低いという研究もあるので、使い過ぎないようにほどほどにするのが良いとされています。
セルフハンディキャッピングを続けることによって、自尊心を嘘のまま続けていくことになるため、自分で自分をだましながら、自尊心を維持し続けるわけです。そのため、直接の結果と自尊心が結びつかないまま本当の自尊心を見失っているのかもしれません。そして、結果的に成功する確率が低くなってしまうわけです。

では、今日のまとめです。
失敗などの不利な結果が予想される時に、あらかじめ自分自身で不利な状況を作り出すことを「セルフハンディキャッピング」と言います。実際に失敗した時、失敗の理由を自分の能力の無さではなく不利な条件のせいだと理由付けをすることが出来るため、自尊心を傷付けずに済むという利点がありますが、あまり使い過ぎると自分に何が足りないかを考える機会を失ってしまうため、ほどほどに使うのが良いとされています。

分野: 社会心理学・組織心理学 |スピーカー: 三上聡美

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