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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 競争戦略:シェアリング・ビジネス(5) (企業戦略、生産管理/目代武史)

競争戦略:シェアリング・ビジネス(5)

目代武史 企業戦略、生産管理

19/07/25

今回もシェアリング・ビジネスの成立要件について話します。前回まではシェアリング・ビジネスを成立させるための条件として2つの事について話しました。1つめは利用したい物や事を利用したい時に利用したい所で利用したいだけ利用出来る仕組みを作れるかどうかということです。2つめはシェアリングの対象となる物やサービスを求める人、つまり需要者と供給者をいかにマッチングさせるかという問題です。今回は3つめの条件について考えてみます。

まずはライドシェアというサービスを例にとって考えます。これは自分では車を所有せずに必要に応じて他の人の運転する車に同乗するという仕組みです。欧米ですとUber、東南アジアですとGrabというサービスが有名です。このライドシェアを利用しようという時に心配な点は、ドライバーが怪しげな人でないか、車がちゃんと整備されているかどうか、法外な料金を請求されないか等々色々あります。これは反対の立場でも同じです。一般のドライバーがライドシェアを提供しようといった時に、自分の車に乗せた利用者が料金を支払わずに降りてしまったり、最悪の場合はタクシー強盗、ライドシェア強盗、そういったものに遭ってしまうリスクもありえます。

要するに知らない者同士が物やサービスを共有する時に、お互いが善意をもって接してくれるかどうか、完全には分からないわけです。そこにシェアリング・サービスのアキレス腱があると言えます。もう少し事例を見ていきたいのですが、例えば子育ての助け合いをシェアするというサービスがあります。働きながらお子さんを育てる親にとって保育所への送迎や、不在時の託児サービスなど、誰かの手を借りたいという場面は数多くあると思います。一方で掃除、洗濯、料理、修理といった一般的な家事に関する労働力のシェアリングと比べると、子育てシェアはなかなか同じようにはいきません。見も知らぬ人にお子さんを送迎してもらったり預けたりは出来るものでもないと思います。逆にお願いされる側としても、万が一何かあったら責任が取れないといった問題もあります。そこでサービスを求める側と提供する側との間でお互いが信用出来る相手かどうか、これがシェアリングが成立するか否かの決定的に重要な要因となってきます。

シェアリング・ビジネスを展開する企業は信用をどのような風にして作っていくのか、その仕組みもまさにシェアリング・ビジネスを成立させるための中核的なポイントになってきます。経済学ではこうした状況のことを情報の非対称性と言います。ある経済取引において供給者というのは、その商品やサービスの中身をよく分かっています。ところが需要者の側はそういった情報を完全には知りえない事が多いです。同じことは売り手の側にも当てはまるわけで、買い手の側が本当に信用出来るかどうか、商品を売ったけれども代金を払ってくれるかどうか、そういったことが分からないわけです。このような情報の非対称性が大きいというのは、要するに取引相手が信用出来ないという状況です。シェアリング・ビジネスの場合は不特定多数の供給者と需要者が物やサービスをお互いに融通し合うという事ですから、情報の非対称性というのはかなり大きくなりがちです。この情報の非対称性を解消する優れた仕組みを生み出せるかどうかが、シェアリング・ビジネスを軌道に乗せる上で非常に重要な鍵を握ります。

例えば先程のライドシェアのサービスで言うと、利用者がスマホで目的地を入力した段階で目的地までの経路、料金、あるいはドライバーの情報が表示されます。それから代金の決済も口座からの引き落としや電子マネーを使い、現金のやり取りをなくすことで、例えばタクシー強盗のリスクを減らしているわけです。さらに利用者と運転者がサービスの利用後にお互いの格付けをするという仕組みも設けられています。丁寧な接客で安全な運転をする運転者と格付けされれば、優先的にお客さんを回してもらえるということにもなりますし、逆に利用者の側も態度が悪かったりして悪い顧客と格付けられると、次から車を呼びにくくなるという仕組みになっています。

この格付けというのはお互い気を付けるポイントになります。先程紹介した子育てのシェアリングにAsMamaというサービスがありますが、この会社は子育ての手伝いをしてくれるサービスの提供者を、例えば同じ学校に子供が通っている人や、近所に住む人、友人など顔見知りに限定しています。元々知っている人をネットワーク化することで情報の非対称性を減らしています。ですので、ビジネスモデルとしては地域ごとに小さなネットワークを数多く作ることが、成功の鍵を握るということになっているわけです。

今日のまとめ:
今日はシェアリング・ビジネスを成立させる為の3つめの条件、サービスの利用者と供給者の間の信用の担保について話しました。背後にあるのは情報の非対称性という問題です。経済取引において物やサービスの提供者と需要者が取引される商品や相手そのものの内容や信頼性について完全な情報を持てないことから生じる問題のことです。不特定多数の提供者と需要者が物やサービスを共有するシェアリング・ビジネスでは情報の非対称性が従来の経済取引よりも大きくなる傾向があります。そのため、情報の非対称性を緩和して経済取引の信用をいかに担保出来るかがシェアリング・ビジネスの成否の鍵を握ると言えるでしょう。

分野: 企業戦略 生産管理 |スピーカー: 目代武史

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