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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > "言いにくさ""言いづらさ"がもたらす事故とその対策 (企業倫理、リスクマネジメント/平野琢)

"言いにくさ""言いづらさ"がもたらす事故とその対策

平野琢 企業倫理、リスクマネジメント

19/06/24

今日は言いにくさ、言いづらさ、それがもたらす事故とその対策について話していきたいと思います。最初に皆さんは普段、仕事仲間に言いたいこと言えていますか?言える人もいれば言えない人もいるのではないでしょうか。その人との関係性によるかと思います。お互い言える人もいるけれども、言えない相手もいるでしょう。

私も企業に勤めていた時そうでしたが、相手によるものもあれば、その場の雰囲気というのも大きく影響します。社内コミュニケーションの在り方というものは企業によって大きく異なるとともに、何が理想かというのはかなり違うと思います。そして世代間においても良いコミュニケーションや、あるべきコミュニケーションというのはかなり違うと思います。最近聞いた世代間ギャップのコミュニケーションをよく表した例としては、新人歓迎会に新入社員を誘いたいと思って「来ませんか」と誘ったら、「結構です」と断られてしまったというのです。ただ、色々な事故を分析してみますと、言いにくいことが言えるということは実は安全に関してとても重要だということが分かってきています。これは逆に言えば、言いにくさ、言いづらさから言い出せなかったことが多くの事故の背景要因になっているということです。

分析してみると、危険に気付いていた人がいたにも関わらず、それが言いにくくて言えなくて事故になったという事例が多く散見されます。代表的な例としては1970年代に発生したアメリカの航空機事故が挙げられます。この事故は飛行機が燃料切れで墜落してしまうという痛ましい事故だったのですが、実はこの飛行機の燃料タンクや燃料メーター、そして燃料切れを表すアラームには全く異常が無かったのです。さらに驚くべきことに飛行機に乗っている機関士とか副操縦士は飛行中に燃料が足りないということに気付いていた、にもかかわらず飛行機は墜落したのです。

何故この飛行機は墜落したのでしょうか。この飛行機ではまず機長が他のトラブルに気をとられてしまって、燃料が少ないことに全く気付かず飛行を続けてしまったという点が挙げられます。ただ、飛行を続けてしまったプロセスとその原因にはかなり注目すべき点があります。実はこの飛行機、飛行中に燃料が足りないことに気が付いた機関士や副操縦士が機長に対して燃料が少ないですという報告を何回もあげています。しかし機長は機関士や副操縦士から燃料が少ないですという報告を聞いても、頭の中に全く入らなかったのです。日常のコミュニケーションであれば皆さんも経験があると思いますが、自分の話を相手が聞いてない時や理解してない時は、「聞いている?」「分かっている?」と確認のコミュニケーションをとるでしょう。自分が話しているのに相手が間違った行動をしていたら、それは違うと指摘をするでしょう。ただしこの事故では機関士や副操縦士は燃料が少ないですという報告はしましたが、確認のコミュニケーションや違いを指摘するコミュニケーションをとることはありませんでした。多くの人命が関わっているのにもかかわらず、確認のコミュニケーションがとられなかったのです。何故彼らは確認や間違いを指摘するコミュニケーションをとらなかったのか。実はその原因がクルーのトップである機長に言いづらかったというものだったのです。機長、副操縦士、機関士という階級的な立場による影響が弊害となって達成すべきチームワークを達成出来なかったゆえの事故と言えるのです。

今の航空会社ではこういう言いづらさに対する対策というのは、十全にされています。この事故をきっかけに機長、副操縦士、機関士という階級的な立場による影響の排除と、ほぼ初対面であった乗組員であってもチームワークがしっかり発揮出来るように「クルー・コックピット・リソース・マネジメント」という考え方が生まれて、その対策がなされています。これにより操縦室内でのチームワークの向上が確認されており、今では多くの航空会社で訓練に取り入れられています。

実はこの他にも様々な理由で言いづらさが障害となり、気付いている危険や分かっている危険に対処しきれずに起きた事故は、医療事故や製品事故など様々な分野において確認することが出来ます。どんなに最新技術を用いても危険かどうかを最終的に判断するのはやはり人間と言えると思います。また技術が複雑になればなるほど、多くの人によって危険を発見し、それをみんなに伝えてチームワークで対処しなければ安全というものは確保出来ません。つまり言いにくさや言いづらさ、言いたいことを言えない組織なんかは安全と真逆にあるといえるかもしれません。近年、空気を読む、忖度など状況に応じて言いたいことを抑えてしまうことを表すこと言葉をよく聞きます。時にはそれが美観であるがごとく表現されることもよく目にします。しかし誤解を恐れずに言えば、これらがあるべき行動として社会に定着してしまうことは社会、そして多くの安全においてマイナスになるという事も言えるかもしれません。

気になっているのだけど、それを気になったままにしておいて、やはりあとで言えば良かったな、ということは日常生活の中や仕事の中でもあります。これが大きな事故に繋がらなかったから良かったようなものの、大きな事故を引き起こした可能性もあるということで、それをしっかりと知っておかないといけないということなのです。実は多くの事故調査報告書では組織内で危険・危ないということに気付いていた人が意外と多かったということがあります。やはりそれがコミュニケーションによって伝えられていなくて大きな事故になってしまった、という事例は本当に多いです。多くの事故調査報告書ではコミュニケーションという課題が挙げられています。

(今日のまとめ)
安全のためには言いにくいことが言えるというコミュニケーションを組織内に構築することが非常に重要だと言えます。時には空気も読まず、忖度もせず、言うべき事は言っていきましょう。

分野: 企業倫理 経営リスクマネジメント |スピーカー: 平野琢

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