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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 新たなアートビジネス② (マーケティング/岩下仁)

新たなアートビジネス②

岩下仁 マーケティング

19/06/07

今回も前回に続いて、新たなアートビジネスのお話をしたいと思います。前回は、アートショップですとか高級百貨店、こういったアートと距離感が近い業界を取り上げました。今回は、アートとの距離感のある業界でアートの視点を取り入れて成功した企業として、「寺田倉庫」という倉庫企業をみていきたいと思います。今回取り上げる寺田倉庫ですが、東京品川の天王洲に拠点を置き、倉庫業を主なビジネスとする企業です。しかし最近ですと美術品の修復ですとか若手芸術家さんの活動支援・電子楽譜の作成など、アート関連事業を幅広く手掛ける企業に成長しています。去年の12月5日、小澤征爾さんが1年2ヶ月ぶりに指揮して注目を浴びたサイトウ・キネン・オーケストラの特別コンサートがありました。ここで一部のオーケストラの人達に使われていた楽譜が電子楽譜グイドというものです。実はこれ、寺田倉庫さんが山野楽器さんと共同出資したグイドミュージックが開発・販売したものなのです。

このグイドですが、2画面で構成されていて、紙の楽譜のように開いて使います。端に指をかざすと頁がめくれて、別売の足ペダル型スイッチを使うと足で頁送りが出来る様になります。価格は税別で18万円と高額ですが、音楽家の方々は楽譜が嵩張らずに音楽に打ち込めると非常に好評だそうです。高額ではありますが非常に利便性の高いものを、寺田倉庫と山野楽器で開発したということになります。倉庫会社が電子楽譜を開発するのは不思議な感じもしますが、実は、寺田倉庫の事業は文化に関したものが多く見られます。例えば、美術品の展示スペースであり、世界の希少な画材が手に入るPIGMENT、建築模型を展示し学んでもらう建築倉庫ミュージアムなどがあります。CEOの中野さんは、文創プラットフォームを提供する会社と定義づけています。「文創」は文化を創造するで、そのプラットフォームを提供していくという意味になります。

こうした文化を創造する事業は国際的な評価も高く、2018年にはドイツモンブラン文化財団が芸術の発展に貢献した人や団体に贈るモンブラン国際文化賞を日本企業で初めて受賞しています。この賞はアート界のオスカーと称され、過去にサントリー社長の佐治敬三さんも受賞しています。寺田倉庫が2016年に開始した芸術発信拠点「TERRADA ART COMPLEX」は東京オリンピックが開催される2020年に20のギャラリーの集積を目指しています。これは、文創プラットフォームという、文化を創り上げることに基づいてやっているということです。また、文化を守るビジネスも展開しているようです。天王洲の本社のビルの一角には美術品の修復工房があります。工房には所有者が傷んだ絵画や彫刻などの修復の相談に訪れます。美術品を預けるとX線・紫外線・赤外線カメラなどで、どこがどの程度傷んでいるのかを徹底して調査します。その後に専門の修復士さんが修復プランを提案して、要望に応じて修復していくのです。直すだけでなく良い状態を保つためにはどうすればいいのかをお客さんに提供するのも重要だそうです。修復士の仕事の枠を超えた、美術管理コンサルタントの域ですよね。

寺田倉庫が拠点とする品川にある天王洲アイルですが、かつては倉庫街で、バブル前後には高層ビルや高層マンションが乱立していました。しかし、バブル崩壊後にはテナント需要が一気に減ってしまったのです。そこで、伊勢丹や鈴屋といった企業に勤めた経験のある中野CEOが2012年に就任しまして、芸術文化関連のビジネスやイベントを矢継ぎ早に展開したのです。その結果、人がまた天王洲に集まるようになったというわけです。数字は非公開ですが、今では、芸術関連と個人向け倉庫ビジネスの売上高の合計が、本業である法人向け倉庫業の売上高を上回ったそうです。そうしますとこの倉庫という文字、企業名から取っても良さそうですが、そうはしていません。これには中野CEOの「社名は記憶に残ることが大切で、寺田倉庫という名前がピッタリ」という考えが根底にあるようです。これまでの倉庫ビジネスのイメージは保管だったと思うのですが、アートという視点を取り入れることによってこれまでとは全く異なるビジネスを創造していることが分かります。

今日のまとめです。本日は寺田倉庫を例にとって話を進めました。倉庫というアートとの距離感が遠い業界であっても、ユニークな視点を取り入れることで新たなビジネスを次々に作り出せることが分かったと思います。

分野: マーケティング |スピーカー: 岩下仁

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