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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 中長期計画、予算・報酬と事業環境(その1) (企業財務管理、国際金融/平松拓)

中長期計画、予算・報酬と事業環境(その1)

平松拓 企業財務管理、国際金融

19/06/04

今や非常に多くの企業で、事業戦略の実行の為に、中長期の計画とか単年度の予算といった経営上のツールが利用されているかと思います。ところが、こうしたツールを利用するに当たって、企業や事業を行う担当事業部の置かれている事業環境にはそれぞれ違いがあることが、あまり意識されてないように見受けられます。そこで、今回と次回、マネジメント・コントロールの観点から、異なる事業環境下での経営ツール活用の際の留意点を取り上げてみたいと思います。

企業や担当事業部が置かれている環境は様々ですが、ここでは大きく、①先行きの不透明感が強い、言い変えれば予測可能性が低い事業環境と、逆に、②不透明感はそれほどなくて予測可能性が高い事業環境―――の場合について、計画や予算の立案、運用にあたってどのような違いを意識すべきかを考えて行きましょう。

一言で不透明感が強い事業環境といっても、色々な背景が考えられます。一つには、企業が設立後間もない場合とか、成長市場へ新規に参入したり成長市場でシェアアップを図る場合などは、既存市場や成熟市場で事業を継続する場合と比べて不透明感は相対的に高くなります。何故なら、生産工程や生産技術にはまだ不慣れですし、市場ニーズや顧客及びサプライヤーとの関係、或いは販売チャンネル、競合会社の対応など、予測のつかない変化に遭遇する機会も多くなるからです。

もう一つは、競争戦略として価格リーダーシップではなくて差別化を志向する場合が考えられます。その場合、どのように差別化すれば競争上優位に立てるのかを見通すことは、低価格戦略を志向する場合に比べて難しく、従って、より不透明感が強くなります。第三には、近年のように革新的な技術によって激しく変化する環境も考えられます。そういう中では、外的要因に左右されることが多くて、かつ、初めて経験することも多いという意味でも、不透明感は強くなるでしょう。

そこで本題なわけですけど、このように不透明感の強い環境下における事業においては、一般に、短期で利益を上げようとしてもなかなか難しく、長期的に利益が上がれば良いというような姿勢を取らざるを得ないケースが多くなります。従って、単年度の予算よりも、中長期の計画の達成がより重要性を持って来ることになります。例えば、成長市場でシェアを上げようとすれば、差し当たって値下げや市場開発費用の投入、新製品の開発・導入などの積極策が必要になりますが、こうした行動は短期的には利益にマイナスに働きます。また同様に、差別化戦略の場合も差別化出来る製品の開発にはイノベーション的な要素が必要になるなど、時間とコストがかかります。つまり、今日・明日ではなくて、少し先の利益を見越して日々の意思決定が必要になる訳で、年度単位の予算のスコープを越えた話となることが多くなります。そうしたことから、不透明感が強い環境下においては中長期の計画がより重要になってくる訳です。

これに対して、成長した市場でシェアをキープする場合であれば、市場開発費用や新製品の投入の必要性も少なく、また、低価格戦略を採る場合には、そもそも選択肢もそれほどない上に、意思決定の効果は相対的に短時間で顕れます。こうしたことから、短期の計画や業績管理ツールである予算を確実に達成することに重点が置かれるべきと言えます。

また、少し計画の中身に入りますが、不透明感が強い事業環境の中で生き残るためには、積極的な投資が必要になりますが、具体的な投資案件の評価に際しては、戦略の方向性に沿ったものであれば前向きに対応し、財務的な要素以外の主観的・形勢的な要素も重視して、回収期間が相対的に長くても認めることが考えられます。つまり、当面見込める収益を多少犠牲にしても、積極的に投資を後押しするような姿勢が必要になるわけです。何故なら、不透明感が強い環境下においては、そもそも財務的・定量的な分析の信頼性が低く、それ以外の要素の重要性が相対的に高まるからです。

逆に、不透明感が少なく予見可能性が高い場合は、投資案件評価に際しての財務的・定量的な分析の信頼度が高くなるので、これらを重視して投資を評価すべきです。即ち、相対的に短期間で回収されるような投資計画を優先すべきで、あまり主観的な要素に引きずられるべきではないということです。

中長期の計画や予算など経営上のツールを利用しさえすれば、直感に頼るのではなくて、戦略に忠実な経営判断が出来ると感じている人も多いと思います。しかし、使う場所や環境によっては、こうしたツールが却って変化への合理的対応を阻害することにもなり兼ねない訳で、「事業環境に応じた使い分け」を意識することが重要です。

今日のまとめです。中長期計画や予算といった経営上のツールを活用して戦略を達成しようとする場合、不透明感の強い環境における事業と、予測可能性の高い環境における事業とでは、ツールの相対的な重要性が異なり、また、計画や予算の中に盛り込まれる投資に対してとられるべき態度や評価方法なども異なってきます。ツールの利用に当たっては、事業環境に応じた使い分けということを意識しましょう。

分野: ファイナンシャルマネジメント |スピーカー: 平松拓

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