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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 競争戦略:シェアリング・ビジネス(3) (企業戦略、生産管理/目代武史)

競争戦略:シェアリング・ビジネス(3)

目代武史 企業戦略、生産管理

19/06/12

今日は、シェアリング・ビジネスを成立させるための要件について考えてみたいと思います。シェアリング・ビジネスというのは、世の中の遊休資産を開放して所有者と利用者が共有することで資産の稼働率を上げ、利益を獲得していくビジネスモデルのことです。これまでのお話をおさらいしますと、まずシェアリング・ビジネスの対象として、モノや空間・移動・スキル・お金などがあります。さらにその特長として、所有から利用への移行、フローよりもストックの重視、シェアリング商品の提供者と利用者の関係は複数対複数であるということをお話しました。シェアリング・ビジネスというのが上手く立ち上がっていくとモノを所有することなく利用することができるので、世の中に存在する遊休資産も有効活用できるので、資源の節約にもなります。その具体例をシェアリング・ビジネスで先行する中国のシェアバイクの事例で見てみます。

中国のシェアバイク(自転車のシェア)、このサービスの大手は、ネット通販の大手であるアリババが出資しているofoとWeChatで有名なテンセントが出資するMobikeの2つがあります。中国のシェアバイクの特長は、乗り捨て型ということです。ユーザーはスマホにインストールしたアプリで、現在地から最も近い場所にある自転車を検索します。自転車を見つけたら、スマホの画面に表示された暗証番号で自転車に取り付けられたアナログ式の鍵を開けたり、あるいは自転車に貼り付けられたQRコードをスキャンして電子的に鍵を開けたりします。自転車の利用後は、どこでも好きな所にとめて鍵を掛けるとそれまでの利用時間に応じて登録した口座から自動的にお金が引き落とされるという仕組みです。この利用代金はとても安くて、大体30分で0.5元から1元です。日本円になおすと、大体8円から16円といったところです。中国では深刻な交通渋滞に悩まされているということもあり、このシェアバイクの利便性がうけて非常に急速に普及しているという状態です。

日本でもメルカリがメルチャリというのをやっていたり、普及の兆しが見えているところですが、ただこのシェアバイクのような仕組みが普及するには、色々と乗り越えないといけない障壁があります。中国のシェアバイクがこれだけ普及したのは、まず自転車が乗り捨て型であったということが大きいと思います。日本をはじめとする先進国でも、従来からレンタル自転車というものがありましたが、これは自転車を特定の場所で借り出したり返却したりする、いわゆるステーション型が一般的でした。これだと利用者は自転車をステーションに行かないと借りられないし、返却もできない。乗り捨て型では、そうした不自由がなくなるのですが、ユーザーがどこにいても、例えば、徒歩数分で利用可能な自転車を探しだせるようにするためには、相当な数をサービス対象エリアに配置しないといけないという点があげられると思います。

さらに時間帯によって自転車の配置に偏りが発生する可能性もあります。例えば、朝は最寄り駅から職場や学校に向かうユーザーがきっと増えます。そうすると乗り捨てられる自転車の配置も結果的にそのような形になっていきます。ユーザーが常にランダムな方向に移動してくれれば自転車もまんべんなく街中に配置されるという事になりますが、そうではなくて、時間帯によって偏った方向に移動するわけですから、ある場所は自転車で溢れ、別の場所は自転車が足りなくなるということが発生してしまいます。この他にも放置自転車によって近隣の住民が迷惑するとか、自転車が盗難にあったり、あるいは鍵を無理やりこじ開けて無賃乗車するといった社会的な問題も発生しています。これは中国固有の問題ではなくて、シェアリングをやろうとすると常にどこでも発生しうる問題です。ですからシェアリングというものは、商品やサービスを所有せずともその利用を可能にするというビジネスモデルですが、その潜在能力を最大限に発揮させるためには、ストレスなくシェアリングを可能にする工夫が必要になってくるというわけです。

車を例にとると、車を所有している人というのは、24時間いつでも好きなだけ運転することができるわけです。一方でカーシェアリングの場合、車を利用できるかどうかは車の空き状況によります。空いている車があったとしても、それがどこで借りられるかが問題になってきます。中国のシェアバイクの場合には、乗り捨て型自転車が街中に大量に配置されているから、その点がクリアされていたのですが、カーシェアリングでも同じ事ができるかというと、中々難しそうです。

シェアリングのニーズが偏るというのももちろん問題です。カーシェアを導入すると、稼働している時間、例えば、朝晩の通勤時間などに集中することが考えられます。ですからカーシェアを利用したい時にこそ、利用可能な車が不足するといった事態が発生する可能性があります。中国のシェアバイクでは、街中に偏って乗り捨てられた自転車を、実は人力で回収して再配置しています。これをカーシェアでやろうとすると難しい問題があるのです。

もう1つのカーシェアリングのポイントは、シェアリングのメリットを感じやすい、利用の単位や料金の支払方法の工夫が非常に重要だということです。利用の単位というのは、例えば、シェアリングの対象を車というモノに設定するのか、乗車という行為に設定するのかといったことです。また、課金の仕組みも、利用時間に応じて払うのか、乗車距離で払うのか、そういったことです。さらに、支払いに関しても利用の都度支払いをするのか、登録口座から一括して支払うのかといったことも利用者のストレスを減らす上では大変重要なポイントになってきます。

(今日のまとめ)
シェアリング・ビジネスが成立するための条件についてお話ししました。シェアリング・ビジネスは、一見良いことずくめのように見えますが、その実現には、超えなければならないハードルがいくつもあります。大切なのは、利用したいモノやコトを、利用したい時に利用したい所で、利用したいだけ利用できる仕組み作りです。要するに、商品や資産の所有に優るメリットを生みだせるかがカギとなります。

分野: 企業戦略 生産管理 |スピーカー: 目代武史

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