QT PRO モーニングビジネススクール

QT PRO
モーニングビジネススクールWeb版

FM FUKUOKAで放送中「QT PRO モーニングビジネススクール」オンエア内容をWeb版でご覧いただけます。
ポッドキャスティングやブログで毎日のオンエア内容をチェック!

PODCASTING RSSで登録 PODCASTING iTunesで登録 電子書籍で記事を読もう! EPUB

ブログ&ポッドキャスト詳細

QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 黙っている人の声を感じ取る (経済予測、経済事情、日本経済、経済学/塚崎公義)

黙っている人の声を感じ取る

塚崎公義 経済予測、経済事情、日本経済、経済学

19/05/29

今日は、黙っている人の声を感じ取ろう、という話です。満足している人は黙っている、という話です。

たとえば、教室で授業中に学生が手を上げて、「暑いので暖房を止めてください」と言ったとします。その時教師はすぐに止めるのではなく、手を上げなかった学生は何を考えているのだろうか、と考えて見る必要があるわけです。黙っている人は、おそらく今の温度に満足しているはずです。満足している人は、わざわざ手を上げて「今の温度は丁度良いので、空調をいじらないで下さい」とは言いません。したがって、暖房を切ったら、今まで黙っていた人々が一斉に「寒いから暖房を切らないで下さい」と言い出すでしょう。「満足している人は黙っている」というわけです。だから、こちらが想像して「黙っている人は満足しているだろうから、空調をいじって欲しく無いはずだ」と忖度してあげないといけないわけです。言うは易く、行うは難しです。

ドル高円安になると、輸出企業は海外から持ち帰ったドルが高く売れて儲かりますが、黙っています。「儲かった」とはしゃぐと、労働組合が賃上げを要求して来ますし、下請け部品メーカーが値上げを要求して来ますし、下手をすると税務署が訪ねてくるかも知れません。一方で、輸入原材料を使っている企業は大きな声を出します。「ドル高円安で苦しいから、ボーナスは払えない。部品メーカーには値下げをお願いしたい。政府には支援をお願いしたい」というわけです。つまり聞こえてくる声だけを聞いていると、ドル高円安で日本経済は困っているように感じるわけです。しかし、次にドル安円高になると、今度は輸出企業が苦しいと言い、輸入企業は黙っていますから、聞こえてくる声だけを聞いていると、やはりドル安円高で日本経済は困っていると感じるわけです。しかし、実際はそんなはずはありません。日本は輸出と輸入が大体同じ金額なので、輸出企業が喜んだり悲しんだりするのと同じくらい、輸入企業が悲しんだり喜んだりするはずです。何か声が聞こえて来たら、黙っている人は何を考えているのだろう、と考えてみる必要があるわけです。これも言うは易く、行うは難しです。

次は、いない人の声を聞く、という話です。カジノへ行くと、店の中の客は大体笑っています。負けていて泣きそうな客より、勝っていて笑っている客の方が多いのが普通です。そこで、新しく店に入った客は「この店は客に優しい店なのだろう。自分も勝てる気がする」と考えて賭けるわけです。しかし、本当に客に優しい店ならば倒産するはずですから、そんなことはありません。からくりがあるはずです。それは、負けた客は帰る、という事です。朝から1000人の客が来たけれども、990人は負けて帰ってしまったため、今店に残っているのは、たまたま勝っている10人だけだ、というわけです。だから店にいる人は皆笑っているわけです。

カジノくらいなら良いのですが、人生を賭けることになると問題は深刻です。会社を作って大儲けした人は、学生に会社を作るように勧めます。「君たち、サラリーマンなんてつまらないよ。僕みたいに会社を作って大金持ちになろうよ」というわけです。学生がそれを聞いて「自分も会社を作ったら大金持ちになれる」と思ってしまったら大変です。会社を作った人が全員金持ちになっているわけではありません。会社を作ったけれども倒産して悲惨な生活を送っている人も大勢いるわけです。しかし、そういう人たちは学生の目に止まりませんから、学生はそういう人々が大勢いるのだ、という事に気づかない場合が多いのです。

私は、「会社を作ってはいけない」などとは考えていませんし、学生にもそんな事は言っていません。夢を追求する事は素敵なことです。ですから、学生が「会社を作ると破産して惨めな生活を送る可能性がある事は知っているけれども、それでも大金持ちになる夢を追いたいのです」と言えば、私は喜んで応援するでしょう。ですから私が学生に言っているのは、「会社を作ったけれども破産してしまった人は大勢いるのだから、きちんとそういう人たちの事も考えた上で、それでも会社を作りたいのかどうか、自分でしっかり考えてごらん」という事です。学生が自分で気がつけば良いのですが、言うは易く、行うは難しですから、大人でも難しいことだと思うので、そこはしっかり私たちが学生を指導していかなくてはならない、と思っているわけです。

(今日のまとめ)
誰かが何かを発言したら、「黙っている人も同じ考えなのだろうか」「今ここにいない人も同じ考えなのだろうか」と考えてみる必要があります。言うは易く、行うは難し、です。

分野: 景気予測 |スピーカー: 塚崎公義

トップページに戻る

  • RADIKO.JP
  • ビビックスマホ