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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 不正をもたらす要因は何か~不祥事の発生メカニズム~ (企業倫理、リスクマネジメント/平野琢)

不正をもたらす要因は何か~不祥事の発生メカニズム~

平野琢 企業倫理、リスクマネジメント

19/05/21

今日は企業不祥事をもたらす要因は何かという点を、過去の理論的な研究の立場から話したいと思います。多くの企業不祥事は人間の不正行為によってもたらされるのですが、どんな条件が揃った時に人間は不正行為に走ると思いますか。その条件は様々に挙げられていますが、過去の研究では、どういう条件が揃った時に人間が不正をするかという事がかなり整理されてきています。今日お話するのはその一番古典的な代表例であるドナルド・クレッシーという人の理論を解説していきます。

ドナルド・クレッシーは20世紀に活躍したアメリカの犯罪心理学者です。彼は横領犯罪者に興味をもち、犯罪者が何故誘惑に負けたかという、その理由を環境的な要因から研究しました。彼は、裁判記録や不正を行った人に対する入念なインタビューから、どのような環境条件が揃った時に人が不正を行うかを分析して、さらにそれをモデル化しました。クレッシーは研究の成果として、①動機、②機会、③正当化という3つの要素が揃った時に、人は不正を行うと結論付けました。彼は自分の理論を図形の三角になぞらえて不正のトライアングル理論と名付けました。不正の要素となる①動機、②機会、③正当化とはどういうものなのかみていきます。

先ず「動機」とは不正行為を行う際の心理的なきっかけのことです。簡単に言えば、自分の目的を達成する為に不正行為を実行しようと決定するに至ったきっかけ、あるいは心情の事と言えます。この動機は何によって生まれるのかということも研究が進んでいて、これまでの企業不祥事の研究では、この動機は実は特別な現象からではなく、企業活動においても一般的に存在するプレッシャーがかなり影響している事が明らかになっています。簡単に言えば売り上げ、利益の目標、納期、顧客の要望、時間、人手が足りないなど、我々が働いていて実際に目の前にあるプレッシャーというものが、かなり不正の動機になっているという事が明らかにされています。また近年の研究では企業外での個人的な状況、ギャンブルによって自分のお金が無くなった、または失恋した、みたいなものも実はこの不正の動機となるケースが多いと言われています。

しかし動機を持ったからといってすぐ人は不正を実行するわけではありません。例えばポイ捨てというすごく小さな不正を考えた場合、ポイ捨てをしようと思ったとしても、周りに人がいて見ている場合はやはり誰もやりません。次の2つ目の要素、つまり「機会」が重要となってくるものです。不正行為を実行可能にする、あるいは容易にする客観的環境の事、不正が発覚しにくい環境などもこれに含まれると言われています。人が見ていないとか、誰も監視しないとか、簡単に言えば不正がやりやすい状況の事です。自分が管理しているとかは、まさにそのような状況です。このような機会は業務の知識や権限が過度に個人に集中した際や企業内の監査とか牽制機能が不足した際などによく行われると言われています。

そしてもう1つ不正のトライアングル理論、「正当化」です。これは不正をしようと人が思って、かつ不正が出来る環境にあったとして、そうすると人はすぐ不正に移るかというと、そうでもありません。先程のポイ捨ての例を言えば、自分はポイ捨てしようと思う、かつ誰も見ていない、じゃあ人はポイ捨てするかというと、心の中の天使が現れます。つまり良心が咎める場合、人はどんなに機会と動機があっても不正を行うことがありません。したがって、良心を乗り越える為に必要になる3つ目の要素が「正当化」になります。正当化とは不正行為の実行を積極的に認める、簡単に言えば都合の良い解釈や理由付けの事です。例えばダイエットをしなければならない状況があります。そのような場合、夜にラーメンを食べるというのは許されない事です。でも今は忙しいからカロリーを取って倒れないようにしないといけない、倒れると仕事で迷惑がかかると考えると、本当は食べたらいけないはずのラーメンが食べてもいいように感じられてしまいます。これが正当化です。この正当化には過去の企業不祥事を見るといくつかパターンがあります。1つは大義へのこじつけによる正当化というのがあります。行為そのものについては正しいとは言えなくても、大きな目的のためには正しいという風に考えてしまう場合です。例えば何か小さな不正を企業でしなければならない。それは不正とは分かっていますが、この不正をしなければ会社が潰れてしまうというようなものです。もう1つは周囲への同調に見せかけた正当化というものがあります。個人的には悪いと分かっていても周囲が行っているのだから問題ないのではないかというものです。それで組織的にとか、チーム内での不正が起きたりするという事です。それから最近もう1つ挙げられているのが、自身を被害者化することによる正当化です。自身は正当に評価されていないのだから、これぐらいの不正を行ってもいいのではないかというようなものです。

このようにいくつかのパターンがありますが、それではこのような機会がどうして生まれるのかという点についてですが、近年の企業不祥事研究では自己(自己組織)中心的な思考や自己(自己組織)への評価、待遇の不満がその要因となる事が多いことが言われています。

以上、クレッシーの不正のトライアングル理論についてまとめましたが、非常にシンプルですが説得力のある理論だと思います。この理論は発展版も含めれば、発表されてからかなりの年数が経っていますが、現在でも企業の不正の要因分析や不祥事を考える際に利用されているモデルです。

(今日のまとめ)
人間が不正を行う環境条件をまとめた代表的な理論として、クレッシーの不正のトライアングル理論というものがあります。これは①動機、②機会、③正当化という3要素が揃った時に人は不正を行うとする理論です。現在でもこの理論は不祥事の要因探索や防止策を考えるにあたって利用されているモデルです。

分野: 企業倫理 経営リスクマネジメント |スピーカー: 平野琢

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