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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > イギリスの歴史(53):ブレクジット(1) (英文法理論、コンピュータによる英語教育/鈴木右文)

イギリスの歴史(53):ブレクジット(1)

鈴木右文 英文法理論、コンピュータによる英語教育

19/05/13

最近、イギリスのEU離脱が世の中を騒がせています。実は3年ほど前に国民投票があった時にも一度お話をしているのですが、今回新しい局面になりましたので当時のおさらいと、今行われている動き、それからこの後どうなるのかというお話を2回ほどに分けてお話してみたいと思っています。
まず、当時の国民投票ですが、実は3年前の2016年のことなのです。2016年6月23日に国民投票がありまして、その後の夏に私がイギリスに行きましたので、当時の大学関係者の方などに取材をした後で、秋にラジオでお話をしました。その時にお話したことの中で2つほど強調しておきたいことがあります。まず国民投票の仕方自体を政府が誤ったんじゃないかという疑いです。どういうことかというと、国民投票は「EUに残留しますか」「EU離脱をしますか」という2択だったのですが、当時のイギリス国民は、政治が上手くいかない、自分の仕事が上手くいかない、経済が上手くいかないということで、色々な責め苦にあっていたので、世の中に対する不満を沢山持っていました。政府は自分達が「残留だ」というキャンペーンをすれば、国民は残留の方に投票してくれると思っていました。国民投票ではありますが、法的に拘束力があるものではないので、政府が残留の方がいいですよ、というキャンペーンをすることは問題なかったのです。ところが、政府の言う通りにはしたくないと、反発した人達がいるわけです。国民の中に鬱積していた感情がこの投票の結果に表れたという見方をする人がいますが、それはかなり当たっているのではないかと思います。当時のキャメロン首相が、政府は残留を希望します、ということを言っていなければ、もしかしたらあの数%のせめぎ合いの中では残留派が勝っていたかもしれません。それほど微妙な話だったということです。
移民政策の問題や他の要因も色々と言われています。でも移民政策も庶民が自分の働き口が奪われるというようなことからきているわけですから、結局のところ、政府と庶民という対立軸が1つあって、「国民が怒っている」ということだと言えると思います。そのことを表す一つの証左として、自分が訪れていた大学の近辺で大学関係者に聞いたところ、ほとんどの人が残留派だったのです。誰に聞いてもそうなので、帰国後に分析の結果、投票のパーセンテージなどを調べてみました。そうすると、私の行っていたケンブリッジ大学が含まれているケンブリッジの投票区では、残留の賛成が73.8%でした。これは全イギリスで48:52くらいに分かれていたのに比べると圧倒的な差です。気になってオックスフォードを調べてみたら70.3%でした。ということは、大学関係あるいは教育関係の人達がいるようなところでは残留派が多かったのかなと思い、更に調べてみました。大学の世界ランキングを発表する所で有名なザ・タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(The Times Higher Education)で、イギリスの大学で上位10校に入るような場所を調べてみました。そうしたら全部が遥かに過半数で残留派が勝っていたのです。そのうちの1つだけ紹介すると、ロンドンは約60%でした。これは大きな数字です。ロンドンにも有名な大学が沢山ありますが、ロンドンっ子も6割の人が残留派で、しかも首都で6割もとっているのにもかかわらず、離脱派が勝ってしまったのです。
先ほど、国民が怒ったということを指摘しましたが、当時取材した話だと、はやまってしまった面がある、ということを皆さん仰いました。後からでもいいから元に戻したいという人もいるのです。ブレグジットに関しては色々な対立軸があって、「政府と国民」や「イギリスの南部と北部」。いわゆる貴族の人達が威張っている南部と、工業地帯で農民や工業労働者が集まってきた北部、という差別意識があって、北の人達は南に対して対抗意識があるわけです。投票のパーセンテージをみても、北部の方が離脱派が多かったのです。似たようなことが「富裕層と労働者層」で、収入の観点から見ても第1次産業と第3次産業、つまり汗水たらして働く方々と、いわゆる金融道で働いている方々の間でも似たようなパーセンテージの違いがみられます。あとは地域です。イングランドと比較的仲の良いウェールズ、それから歴史的に軋轢があった北アイルランドやスコットランドというふうにも分かれるということがあります。そして、「若者と年配者」です。私は若者で「離脱!離脱!」と叫んでいる人は、特別な右翼的な方を除けば、あまり出会いません。年配者こそが過去の大英帝国の威光、栄光というようなものにノスタルジーを持っている面があります。落ち着いてよく考えれば、抜けると損だと思う人がいる中で、拳を上げた方々が52%いたという結果になってしまった、ということなのです。しかし離脱派が多かったという事は事実なので、この後どう落ち着かせていくかということが問題で、昨今の色々なバタバタに繋がっているということになります。
(今日のまとめ)
イギリスのEU離脱、いわゆるブレグジット(Brexit)は最近大きな動きを見せましたけれども、そもそも振り返ってブレグジットとはどういうことだったのか、そしてブレグジットの注目すべきポイントを地域における投票行動の差、離脱と残留に絞った問いの立て方はどうだったのか、ということに絞ってお話をしました。

分野: 異文化コミュニケーション |スピーカー: 鈴木右文

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