QT PRO モーニングビジネススクール

QT PRO
モーニングビジネススクールWeb版

FM FUKUOKAで放送中「QT PRO モーニングビジネススクール」オンエア内容をWeb版でご覧いただけます。
ポッドキャスティングやブログで毎日のオンエア内容をチェック!

PODCASTING RSSで登録 PODCASTING iTunesで登録 電子書籍で記事を読もう! EPUB

ブログ&ポッドキャスト詳細

QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 製品開発における「テスト・アンド・ラーン」 (マーケティング/岩下仁)

製品開発における「テスト・アンド・ラーン」

岩下仁 マーケティング

19/04/05

コモディティ化市場への対応策について話を進めています。コモディティ化市場とは、製品にほとんど差がなくて消費者が低価格のものを選ぶという事ですけれども、これへの対応策として、メーカーは他社よりも少しでも優れた製品を開発する為に様々な取組みを行っているという事を以前にお話してきたと思います。結局、どうやってその他との差をつけるのかという事ですが、やはり差をつける為にはこれまでにはないような取組みが非常に重要になってくるわけです。そこで今回は、テスト・アンド・ラーンを活用した、アメリカ発の新たな製品開発手法についてお話をしたいと思います。

従来の製品開発には、大きく分けて2つの方法があります。1つ目が、店頭で製品を売り出す前にじっくりと時間をかけてテストマーケティングを実施する方法です。2つ目が、新製品を手当たり次第に販売するという方法です。テストマーケティングを行う方法をとる場合ですが、失敗する確率は低下しますよね。一方で、手当たり次第に販売する方法をとりますと、失敗する事もあるわけですが、1本のホームラン製品が出れば大きな成功を収める事も出来るわけです。近年ではこういった2つの方法が更に進みまして、実験的に数多くの挑戦を繰り返して早い段階で失敗を積み重ねる事で経験を蓄積していくというフェイルファスト、つまり早い段階で失敗せよといった方法が見られはじめているのです。更に今日では、IT技術の進歩に伴って、テスト・アンド・ラーンという最新の手法を活用し、素早く新製品開発を進める傾向が見られはじめているのです。企業はIT技術を駆使して以前よりも短時間で実験を行い、大量のお客さんの反応を集めることがテストになるわけです。そして失敗の原因を実験から素早く導き出す。その結果、学習(ラーン)をするわけです。

テスト・アンド・ラーンの特徴というのは、とにかく早く実験をし、早く結果を出す点にあります。今までよりも、よりスピーディーに調査を行い、よりスピーディーに新製品に結びつけていくという事が出来るようになってきているのです。アメリカのある外食チェーンの例ですが、数年前にメニューの改善に向けて一千近くの傘下の店舗の厨房の内装を抜本的に刷新する事に着手しました。この企業では調理機器とメニューについて通常のように何ヶ月も費やしてあれこれ検討するかわりに、小数の店舗に実験ラボを設けて、色々な機器やメニューを試して結果として選択された機器やメニューに対して、小数のシェフや顧客からの意見を集めたのです。そしてわずか3ヶ月で、特定のレイアウトが過去最高の顧客満足度を記録する事を発見したのです。この企業はそのレイアウトを50店舗近くにまで広げて、顧客満足度の向上を短期間で実現したようです。

確かに小数のシェフやお客さんの反応を集めただけではリスクが高いと考える企業も多いかと思います。しかしながら、テスト・アンド・ラーンを実践する企業は全く逆の考え方をするのですよ。プランの検討と実行に数ヶ月を費やす事によって、時機を逸するリスクの大きさが計り知れないと考えるわけです。実験可能な小さな範囲において実験を行うとともに、必要となる改善に素早い段階で取り組むのです。小数ではありますがお客さんの生の声を聞く事になるために社内での説得力が増して、無駄な根回しや対立も起こりにくいといった副次的な効果も見逃せません。

また別の例としては、アメリカでファッションブランドを展開するシャイノラ・デトロイト社が目まぐるしく変わるトレンドの一歩先を行くために、テスト・アンド・ラーンの手法を活用しています。この企業のマーチャンダイジングチームは、2018年、婦人用腕時計の発売を見据えて主力ラインのデザインを見直すために、調査会社のメーカサイツに調査依頼をしました。メーカサイツは自社のIT技術を駆使して、なんと48時間足らずで1700名の顧客から反応を集めたのです。たった2日の出来事ですよね。僕も普段調査をしますが、調査会社に依頼して仮に2000人の消費者を対象とする調査をすると、最低1週間はかかります。最終的には、際立つ結果を残したデザインは2つあったようで、その内の1つがローズゴールドをアクセントにあしらったデザインだったそうです。このデザインを擁した腕時計は、戦略的に重要なお客さんである35歳未満の女性から、特に高評価を博したという結果になっています。

このテスト・アンド・ラーンですが、実践する際のポイントは次の3つと言えるかと思います。1つ目が、不要な検討を出来る限り減らして、短時間での検証を実現する事です。2つ目が、かなり未完成の製品でスタートするという事です。完璧な製品ではなくて、結果を基に学習しながら製品を少しずつ改善する方がよい結果に繋がります。3つ目が、フィードバックを素早く何度も得る事です。最適な案を割り出すためには、最長でも1週間から2週間で十分だそうです。ですので、見込みのない案には素早く見切りを付けて、見込みのある案に磨きをかけて再度テストをするべきでしょう。アメリカを見てみますと、GoogleやAppleといった巨大なIT企業はテスト・アンド・ラーンのスピード重視の戦略で、優れた製品やサービスを素早く開発していると言われています。一方日本の企業では、こうしたテスト・アンド・ラーンを実践出来ている企業まだまだ少なくて、従来型の製品開発のプロセスに多大な時間をかけている企業が多いのが実状かと思います。昔ながらの製品開発のプロセスに固執しますと、どの企業もいずれは同じような手法で行いますので、結果として同じような製品しか出来なくなってしまう、この事は目に見えていますよね。

今日のまとめです。今回は、テスト・アンド・ラーンの製品開発について話を進めてきました。今後は日本においてもテスト・アンド・ラーンを活用し、スピーディーな製品開発を行う企業に目が離せないでしょう。

分野: マーケティング |スピーカー: 岩下仁

トップページに戻る

  • RADIKO.JP
  • ビビックスマホ