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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 競争戦略:ロングテール(2) (企業戦略、生産管理/目代武史)

競争戦略:ロングテール(2)

目代武史 企業戦略、生産管理

19/04/11

今日も前回に引き続いてロングテールについてお話したいと思います。
ロングテールを改めて説明すると、商品を人気ランキング別に並べた時、売上高の分布を示す山が出来ますが、その裾野が非常に広い形状となって長い尻尾のように見える現象の事を言います。従来のビジネスでは、店舗や物流能力が物理的に制限されているために、商品棚から人気の無い死筋商品を排除し、売れ筋商品のみをおくことが常識でした。そうすることで、売れる商品はますます売れるし、売れない商品は売れないということで、ロングテールではなくて短いテールでした。
今回話すロングテールは、従来であれば死筋商品として排除されていたものが、実は商売の種になる、という話をしたいと思います。どういう条件が揃った時にこのロングテールが発生するかという事を考えてみます。
世の中にはたくさんの商品がありますが、その中でも消費者の手元まで届くのは、ごく一部です。その理由はこれまで繰り返し述べているように、店舗の商品棚や物流能力に物理的な制限があるためです。限られた商品棚を有効活用する為には売れ筋商品に絞らざるを得ないわけです。その結果、売れる商品は売れるし、売れない商品は排除されていくということになるわけですが、同じような現象は実は色々な所で起こります。
例えば日本映画製作者連盟によりますと、全国の映画館のスクリーンは3,561あります。2018年に公開された映画は1,192本に上るそうです。ただこれは選ばれた映画であって、アマチュアも含めて制作された映画本数というのはもっと多いはずです。作られた映画本数に対して流通する映画本数は非常に限られるわけですが、これはスクリーン数に限りがあるという理由によるわけです。
もう1つ重要な点は、これまでの商品作りというのはメーカーや放送局など、設備や技術、資金のあるプロが担ってきたということです。プラスチック製の小さな製品、例えばコップのような物でも、そういった物を作ろうとすると、いわゆる射出成形機というような特殊な機械が必要で、これは数百万から数千万円するわけなんです。さらに生産数量も数万個単位で作らないとペイしません。映像コンテンツも同様で、業務用カメラですと数百万円から数千万円します。またプロのカメラマンや編集機材が必要ということになってきます。ただこういった状況が最近変わってきています。いわゆるものづくりといわれる、物理的なものだけではなく、映像コンテンツやそういったものも含めてのものづくりですが、そのコストが劇的に下がってきています。例えば映像コンテンツに関して言うと、まず家庭用ビデオカメラの性能は飛躍的に上がっています。スマホでも十分綺麗な動画を撮影する事が可能ですし、その編集も非常に手軽になってきています。
プラスチック製品なども同様で、3Dプリンターの性能が非常に上がってきていると同時に、値段も安くなってきています。個人でも購入することが出来ます。パソコンで作った3次元データから1個単位で製作する事が出来て、非常にもの作りの世界が変わってきています。こうした現象をロングテールの名付け親であるクリス・アンダーソンは「生産手段の民主化」と呼んでいます。従来のものづくりがいわゆるプロによる独占市場であったとするならば、3Dプリンターだとかパソコン・スマホの普及というのは、ユーザー自身をアマチュアクリエイターに変える「ものづくりの民主化」ということになります。また冒頭で流通における物理的制約ということを繰り返し述べていますけど、例えばアマゾンやiTunes、YouTube、Fire TV、Netflixなど、こういったものが大きな役割を果たしています。デジタル空間における商品流通によって、物理的な制約を受けなくなり、いくらでも楽曲や映像コンテンツを流通させることが出来るわけです。こうしたデジタルな流通手段による物理的制約条件の緩和のことをアンダーソンは「流通手段の民主化」と呼んでいます。
一方で、プロ・アマ問わず無数の制作者によって商品やコンテンツが作られていき、それがほぼ無限の流通空間上で供給されたら、どのようなことが起こるでしょうか。恐らく多くの人はあまりにも多すぎる商品を目の当たりにして、何を選んでいいか分からなくなってしまいます。
あまりにも多い選択肢というのはかえってストレスをもたらすものです。しかも商品やコンテンツに関しては、プロもアマチュアもいますから、良いものもあれば悪いものもあります。場合によっては有害なものもあるかもしれません。そこで多くの選択肢の中からお客さんやユーザーが望む物を選り分ける働きが必要になってきます。これをアンダーソンは「ロングテールのフィルター」と呼びました。例えばネットショッピングにはお勧め機能というものがあります。「この商品を買った人はこんな商品を買っています」ということや、カスタマーレビューなどの機能です。過去の購買履歴や閲覧履歴から自動的にユーザーが関心を持ちそうな商品やコンテンツを選択して表示するような機能です。
ロングテールを用いたビジネスをしていく業者にとってはこのフィルタリング機能の良し悪しが、商品やコンテンツの流通を決める大きなポイントになってきます。
今日のまとめ:今日はロングテールが発生する為の3つの要因について話しました。第一がロングテールの尻尾の部分の選択肢を伸ばしていく「生産手段の民主化」。第二が増えた商品を実際に顧客まで流通させる「流通手段の民主化」。第三が増えすぎた選択肢から顧客やユーザーが望む商品やコンテンツを選び出すのを助ける「ロングテールのフィルター」。この3つが揃う事でロングテールを発生させるとともに、顧客にとっても、それはストレスなく利用することが出来ることになります。

分野: 企業戦略 生産管理 |スピーカー: 目代武史

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