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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > マーケティングリサーチを実施しない製品開発 (マーケティング/岩下仁)

マーケティングリサーチを実施しない製品開発

岩下仁 マーケティング

19/03/12

これまで、様々なマーケティング戦略や製品開発についてお話してきました。その中でもマーケティングの定石と言われるものがありましたよね。例えば、消費者のニーズを的確に捉える、或いは、ターゲットとなるお客さんを決めるといった点が挙げられると思いますが、これを実現するために重要な事がマーケティングリサーチです。製品のコンセプトテストやテストマーケティング、或いはニーズ調査等、製品開発プロセスでは数多くのリサーチが実施されます。リサーチを行うことによって、結果が悪ければ売り出す前に修正が出来ますので、失敗する確率が格段に減るわけです。

このため、ヒット商品を作るにはマーケティングリサーチの費用が潤沢にある大手メーカーが有利だと言われ続けてきました。その中で、近年マーケティングリサーチを実施しないでユニークな製品を作って独自路線を走り、ヒットを生み出しているメーカーがあります。それは、「サンコー」という企業です。名前こそあまり知られていませんが、USBポータブル除湿器やスマホで3Dが見えるゴーグルなど、個性的な製品を作り出しています。東京神田に本社を構える、知る人ぞ知る企業なのです。

大企業のような大々的なヒットというわけではないのですが、中小企業の場合は初期ロットの全てを売り切る事がヒットと考えることができるでしょう。ですので、世の中で爆発的に売れているとか、皆が持っている製品、というわけではありません。この企業の特徴ですが、製品開発に携わる人にメーカーの出身者がいなくて、家電量販店の出身者が多くおられる点です。サンコーの山光社長は、「メーカーは自社にある技術をどのように生かすかという発想になりがちである。サンコーではまず自分達が何に困っているかを考えている」と述べています。例えば、2017年6月発売の背中冷却ファンは、外回りが多かった家電量販店の営業職の社員が考案しました。背中とリュックサックの間に隙間を作ってファンで風を送り、汗蒸れを解消するという製品で、結構話題になりましたよね。

二つ目がマーケティングリサーチを何故実施しないかにも関係するわけですが、前例の無い製品の創造という点です。サンコーの企画制作部マネージャーは、「我々の製品にはそもそも参考になる製品が無いため、ユーザー層や生活環境の調査など、通常のマーケティングで欠かせないプロセスを飛ばしている。なので調査は行いませんが、その代わり面白いことをくそ真面目にやるのがモットーです」とおっしゃっています。

三つ目が、空振りOKということです。初期段階では鳴かず飛ばずの製品であってもいいということです。出す製品が全てヒット製品、若しくはホームランに繋がれば勿論ベストなわけですが、中には全く鳴かず飛ばずで空振りしてしまう製品が初期段階であってもいいとしています。サンコーではこの空振りさえもOKということで、例えば発売時にヒットしなくても上役からお咎めはありません。そのかわり、最初から大量に売り出すのではなくて、初期段階ではむしろ少なめのロットで製品を販売して、それを出来る限り売り切って黒字化する方法をとるそうです。その間にネットなどで話題を集めたり、改善点を収集したりして改良を加えていって結果的にヒット製品へと繋げているそうです。

2014年発売のUSB電動静音うちわは、パソコン等のUSB電源と接続すると本体に取り付けた団扇が扇いでくれます。誰かに扇いでもらえると気持ちいいというニーズがあるはずだと思って製品開発が行われたそうです。このUSB電動静音うちわですが、SNS等で話題を集めて初期ロット数千台をほぼ売り切りました。しかし、はじめに作った製品はモーター音がうるさくて消費者に不評だったそうで、この点を改良してその後も売上を伸ばし続けています。

サンコーではヒット製品をより多く生み出すための取組も行っています。2017年11月には、DMM.comが運営するものづくり支援拠点である、DMM.make AKIBAに製品企画部門の会議の場を移動させています。3Dプリンタ等の最新装置を自由に使える施設に拠点を構えることによって、自社製品を増やそうという強い意志が見てとれますよね。この結果、中国企業に試作品を発注するのに比べて2~3割程度製品開発に掛かる時間を減らせるそうです。

また、自社のネット通販・都内の直営店として、「サンコーレアモノショップ」にも力を入れており、消費者の購買意欲を強く引き出しています。山光社長曰く、秋葉原に現在2店舗あるサンコーレアモノショップを増やす意向で、中国でもビジネスを展開するとおっしゃっています。2017年5月期の売上高は前期比で11%増の10億円となっていますが、家電業界で10%以上の売上増加なのですから十分成功していると言えるでしょう。

今日のまとめです。今回はマーケティングリサーチを実施しない製品開発について話を進めてきました。従来の視点にはまらず社員の自由なアイデアをヒット製品へと繋げる取組は、マーケティングリサーチの費用が殆ど無い中小企業にとっては大きなポテンシャルを有していると言えると思います。

分野: マーケティング |スピーカー: 岩下仁

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