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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > なぜ、コンプライアンス教育はうまくいかない? (企業倫理、リスクマネジメント/平野琢)

なぜ、コンプライアンス教育はうまくいかない?

平野琢 企業倫理、リスクマネジメント

19/02/21

今日は何故コンプライアンス教育はうまくいかないかという点についお話していきたいと思います。最近、実務家の方とお話しても中々うまくいってないという現状を聞くので、何故そうなってしまうのかという点を組織論やコミュニケーションの観点から考えていきたいと思います。

最近の企業では従業員に法律や規則を守る大切さを知ってもらう教育、つまりコンプライアンス教育が大変盛んに行われています。このコンプライアンス教育は企業が法令違反を行わない為には、とても重要な活動であり、力を入れている企業もかなり増えてきました。しかし、企業では積極的な取り組みにも関わらずこのコンプライアンス教育は中々うまくいっていません。ここ10年に亘って企業不祥事の防止の大切さが指摘され様々なコンプライアンス教育が企業で実践されているにも関わらず、やはり企業不祥事が減らない現状は、もしかしたらこれを表しているかもしれません。今日は何故今のコンプライアンス教育がうまくいかないかという点をコミュニケーションの観点も踏まえながら考えていきたいと思います。
多くの企業で、どのようなコンプライアンス研修をしていますかと質問すると、実務に重要な法令の内容を解説しています。実際の法令違反のケースから法令順守の重要性を説いていますというタイプなものが非常に多いです。ここ10年で研修の形態は講義をする形式のものだけではなく、eラーニング、つまりはインターネット場で講義を展開するものや動画を用いるなど大変多様になりました。しかし、法令の知識を与える法令順守の重要性を説明するという点では、あまり大きな変化は見られず、ここ10年そのままの形態が続けられています。まとめれば、日本のコンプライアンス教育は知識を伝えるということと説得をするというスタイルのコンプライアンス教育と言えるかもしれません。
しかし、このような知識を伝えることと説得スタイルのコンプライアンス教育は中々課題も多いようです。確かに、このスタイルのコンプライアンス教育は実務に必要な法令の知識を知ってもらうという点では大変良い機会になります。しかし、企業の中に法律を守ろうとする意識や文化を作るには、知識伝達と説得スタイルのコンプライアンス教育はどうやら不十分なようです。コンプライアンスの規定や研修を行っても中々文化が社内に育たないことに頭を悩ましている担当者は決して少なくないと私は思います。私も立派な社内規定を作ったにも関わらず社内のコンプライアンス意識が育たず、これでは仏像作って魂入らずですと相談を受けたことがあります。

では、何故知識伝達と説得スタイルのコンプライアンス教育は法律を守ろうとする意識や文化を作るには不十分なのでしょうか。私はこの背景には他人からの説得を苦手とする人間本来の性質が関わっていると考えています。そもそも人間は自分の態度や行動を決める時に、その自由が制限されてしまうと心理的な反発が生じ、無意識的にその説得に反発することがあると指摘されています。つまり、掃除をしなさいやテレビを見るのをやめなさいと言われた時、人は自分の自由、ここでいうなら掃除をせずにぐうたらしたい、テレビをもっと見たいという自由を制限されたことに心理的な反発を持ち、言われた行動をしないということです。私もそうですが皆さんも良く経験があるのではないでしょうか。そして、ここで注意しなければならない点は、言われた意見が正しいかどうかには関係なく反発が生じてしまうという点です。自分では掃除はしなければならないとか、テレビはもうやめなきゃいけないと思っているにもかかわらず、人から言うと何故か素直になれない。これは実はこういう心理的なリアクタンス、反発ということですが、この人間の本来的な性質が影響しています。これは一般的な教育においても同じことが言われています。一般的な教育においても断定的な言い方や強い言葉使い、または繰り返し何かを強調してしまうと教える人間への信頼性や教えられた人間の行為の変容性が低くなることが明らかになっています。実際に被災経験のない地域において防災訓練や防災教育を過度に強化してしまうと日頃は防災が重要だと分かっていても防災訓練や教育への参加意欲が低下してしまったという事例もあります。普段、防災は重要だと我々は考えていても人から何回も言われてしまうと、やっぱり嫌になってしまうということがあります。つまり、コンプライアンスは大切だ、コンプライアンスをせよと度重なって説得を試みることは、ともするとコンプライアンスに対する心理的な反発を生じかねないということを表しています。私たちは重要な意味を持つと思えば思うほど、やはり熱心に繰り返して説得したり伝えてしまいます。この傾向があるから大変に注意が必要だと私は考えます。
では、どうすれば良いのでしょうか。一言では言えばコンプライアンスは重要だと説得するスタイルではなく、何故コンプライアンスは重要なのかを一緒に考えるスタイルの研修に変更することが効果的であると考えられます。このスタイルの一番の狙いはコンプライアンスは重要であるという点を本人に考えてもらうことによって、それを他人からの説得ではなく自分自身からの説得に変えてもらうという点です。実は他人による説得については反発が強い人間ですが、自分自身による説得には行動や態度の変容性が高いと言われています。つまり、自分自身の言葉には人間には縛られやすいです。この視点をコンプライアンスに取り入れることは法律を守ろうとする意識や文化を構築するということに効果があると考えれます。

今日のまとめです。コンプライアンス教育は企業不祥事の防止にも健全な企業発展にも重要な役割を果たすと思われます。しかしながら、その重要性を繰り返し強調してしまうと、コンプライアンスに対する心理的な反発を生じさせてしまうという危険性が潜んでいます。研修を行えど、法律を守ろうとする意識や文化が育たないという問題の背景には、もしかしたらこのようなメカニズムが作用してるのかもしれません。

分野: 経営リスクマネジメント |スピーカー: 平野琢

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