QT PRO モーニングビジネススクール

QT PRO
モーニングビジネススクールWeb版

FM FUKUOKAで放送中「QT PRO モーニングビジネススクール」オンエア内容をWeb版でご覧いただけます。
ポッドキャスティングやブログで毎日のオンエア内容をチェック!

PODCASTING RSSで登録 PODCASTING iTunesで登録 電子書籍で記事を読もう! EPUB

ブログ&ポッドキャスト詳細

QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 自分の"当たり前"は本当に正しいか?~確証バイアスと産業事故の話~ (企業倫理、リスクマネジメント/平野琢)

自分の"当たり前"は本当に正しいか?~確証バイアスと産業事故の話~

平野琢 企業倫理、リスクマネジメント

19/02/20

今日は予測出来た危険に何故人は気付けなかったかという点について話します。企業の経営破綻や産業事故の発生メカニズムを調べた研究では、事前に経営破綻や事故の危険を示す情報が沢山存在しながらも経営破綻や産業事故になった事例が多く確認されています。冷静に考えてみると何故そのような情報があったにも関わらず事故や経営破綻に至ってしまったのだろうと不思議に思います。

確かに危険を表す情報の内容の理解に高度な専門知識を必要とするような場合は危険を表す情報の内容が理解出来ずに事故や経営破綻に至ってしまうということがありえるかもしれません。また、危険を表す情報を元にその対策を訴えても組織の納得を得る事が出来ずに対策が出来ないこともあるかもしれません。しかし、実際の事例を見てみると危険を表す情報の内容を理解することに充分な知識を持っているにも関わらず、また組織内で特に争いがなかったにも関わらず事故や経営破綻に至ってしまう例も多くあります。リスク研究の観点からそのメカニズムを解説すると、正しいと信じこむ気持ちが状況の判断に与える無意識の効果を指摘することが出来ます。実は人は自分が正しいと思った考えを肯定する情報を信じる一方で、それを否定する情報に対しては、そもそも触れなかったり信じなかったりする傾向があると言われています。これは確証バイアスと呼ばれ心理学や行動経済学において、その存在が指摘されています。
画像を使った実験では、リンゴに赤いなどの色を指定したり、ここでは事故が起きたみたいな最初に予め情報を入れると、その映像を全く違う映像に捉えてしまうような現象もおきてたりします。だから、思い込みは自分が思うよりも、はるかに強い影響を人に与えると考えられます。この性質は人が逆境の環境下にありながらも可能性を信じて何かをやり遂げる際には心強い作用となります。周囲の反対や低い評価にもめげずに偉業をなしとげたエピソードの中には自分の決断の正しさを示す情報を一途に信じて目標を達成した例が多くあります。
思い込むということは人にとって大変重要なエネルギーであるとともに、正しいと信じる事も非常に重要なエネルギーとなります。しかし、他方でこの作用は時として冷静の判断を阻害する負の作用、マイナスの作用を持っています。例えば、自分が中々受け入れたくない危険性の存在を指摘された際や自分が安全だと信じてる対象の危険性を指摘された時、人は冷静な視点からその指摘を理解することが出来なくなってしまいます。このような状況下では、その危険性の指摘は誤ってる、つまり自分が信じたい安全だということを示してくれる情報を人は一生懸命探しますが、危険性の指摘はあってるんじゃないか、やはり危ないのではないかという情報に関しては無視したり、そもそもそういう情報を探す努力を怠ったりしてしまいます。この結果としてその危険性の指摘は誤っている、つまり自分が信じたい、安全だ、という判断を補強する情報だけがその人の元に多く集まってしまい、実世界においては安全であるという指摘が多いと勘違いしてしまいます。そして例え危険性を表す情報が合理的であり目の前に存在していても、その情報は誤っていると思い込んで意思決定を行ってしまいます。

このような事例は私達の周りに少なくありません。例えば2001年にアメリカで発生した航空機を用いた同時多発テロでは、テロ発生以前に運用中の航空機を用いたテロの発生の可能性が複数の組織から指摘されていました。しかし、そのテロに対する対策は徹底的な乗客の手荷物検査や身体の検査など航空会社にとって莫大な費用と飛行機の遅延リスクの増大をもたらすものでした。しかも過去において同様なテロの発生事例は殆どなく、にわかにその発生は信じがたいというものでした。簡単に言えば、この指摘は受け入れにくい危険性の指摘でした。結果として運用中の航空機を用いたテロに対しては、その危険性の詳細な評価や抜本的な対策は行われないままテロ発生の当日を迎えてしまいます。そして大変に多い尊い犠牲を伴って初めて航空会社は、この種のテロに対する抜本的な対策に莫大な費用を投じるようになりました。亡くなった方々、あの惨劇を見た方々にとって、何故早くという気持ちはきっと抑えきれないものと私は思います。では、どうやったらこのような現象を防ぐことが出来るのしょうか。これは非常に難しい問題ですが、一言でいうならば意図的に自分の正しさや当たり前を疑う機会を作る習慣を身に付けることが重要だと私は考えます。自分の信じる正しさや物事への前提を持つことは何事を行うにしても重要です。またこれらを元に信念をもって物事を進めることは企業経営の基本と言えるでしょう。しかし先の事例が示すように自分の信じる正しさや物事への前提は時として私達の視野を狭めてあらぬ方向へと私達を導いてしまうことがあります。ゆえに時には自分の信じる正しさや物事への前提から離れて、視野を広く持って現状を確認することが肝要と言えます。

今日のまとめです。人は自分が正しいと思った考えを肯定する情報を信じる一方で、否定する情報に対してはそもそも触れなかったり信じなかったりする傾向があると言われています。これは確証バイアスと呼ばれ人の判断や意思決定にプラスの面もあれば視野を狭めてしまい冷静な判断が出来なくなってしまうというマイナスの面も存在します。このマイナスの面を防ぐ為には意識的に自分の正しさや当たり前を疑う機会を作る習慣を身に付けることが重要です。

分野: 経営リスクマネジメント |スピーカー: 平野琢

トップページに戻る

  • RADIKO.JP
  • ビビックスマホ