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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > キーワードで理解するイノベーション・マネジメント (57) 研究開発税制 (技術経営、科学技術政策/永田晃也)

キーワードで理解するイノベーション・マネジメント (57) 研究開発税制

永田晃也 技術経営、科学技術政策

19/02/18

今回のまとめ:研究開発税制を効果的に活用していくためには、その減税効果に関する情報を企業内部で広く共有しておくことが肝要です。

 今回はイノベーション・マネジメントの観点から活用できる制度として、研究開発税制をとりあげてみたいと思います。
 多くの先進国で、自国のイノベーションを促進するための様々な制度が導入されているわけですが、企業がそれらの制度を活用していく上では、その政策目的を理解しておくことが重要ではないかと思います。そこで研究開発税制という制度が必要とされる理由を振り返っておくと、経済学的には概ね2つの理由が上げられてきたことが分かります。
 1つは、研究開発の成果である技術知識からもたらされる利益は、研究開発に投資した者が私的利益として専有することが困難で、利益の一部が社会的利益として流出する性質を持っているということです。この点については、以前、「公共財」というキーワードを紹介した際にも説明しました。研究開発税制は、研究開発に応じて一定の税額を控除すること等によって、そのような利益の流出を埋め合わせる意味を持っている訳です。
 もう1つの理由は、研究開発という活動は不確実性が高いために、外部から資金調達を行うことが困難であり、そのため自己資金を主要な財源にせざるを得ないという点にあります。この点は、資本市場での売り難さという性質によるものであり、経済学では「流動性制約」と呼ばれています。研究開発税制による減税は、同額の内部留保をもたらすため、流動性制約を緩和する効果がある訳です。
 さて、このような理由で先進各国に導入されている研究開発税制には、いくつかの種類があります。
 1つは、研究開発費の即時償却制度というもので、これは研究開発費の発生時に全額損金に計上することを認める制度です。一方、研究開発用の固定資産について、通常の減価償却資産より有利な法廷償却率や、短縮された耐用年数の適用を認める制度もあります。
 もう1つは、研究開発税額控除制度と呼ばれるもので、当該年度に納める法人税額から研究開発費の一定割合に当たる額を控除する制度です。この制度は、控除額の基準を何にするのかによって、更に2つの制度に分かれています。1つは、当期の研究開発費が一定の基準額を超過した場合にのみ税額控除を認める制度で、Incremental Methodと呼ばれています。もう1つは、超過の有無に関わりなく、毎年の研究開発費の一定割合を控除する制度で、Level Methodと呼ばれています。

 では、我が国の制度について見ておきます。まず研究開発税制の目的は、「民間企業の研究開発投資を維持・拡大することにより、イノベーションの加速を通じた我が国の成長力・国際競争力を強化すること」と定義されています。
 我が国では、1967年に増加試験研究費税額控除制度が創設されて以来、暫くの間、このIncremental Methodによる制度を軸とする時期が続いていたのですが、度々の改正を経て、現在の制度は大きく様変わりしています。Incremental Methodによる税制の恩恵は、継続的に研究開発費を増加させている企業でなければ受けられないため、研究開発費が伸び悩む景気後退の局面では、制度的な存在理由が薄れていった訳です。
 平成30年4月1日現在でみると、我が国の研究開発税制は4つの制度から成り立っています。第1は「試験研究費の総額に係る税額控除制度」で、これはLevel Methodにより法人税相当額の25%を限度に税額を控除する制度です。第2は「中小企業技術基盤強化税制」で、これは「資本金又は出資金が1億円以下の法人」、「常勤の従業員が1,000人以下の法人」、「従業員1,000人以下の個人事業主」といった定義に該当する中小企業に対する優遇措置で、総額に係る税額控除制度との選択制になっています。第3は「特別試験研究に係る税額控除制度」で、この特別試験研究とは大学や国の試験研究機関等と行う共同研究等を意味していることから、「オープン・イノベーション型」とも呼ばれています。第4に「試験研究費の額が増加した場合等の税額控除制度」があり、これは試験研究費の額が過去3年を含む平均売上高の10%を超える場合に、控除上限の上乗せ等を認める制度で、「高水準型」とも呼ばれていますが、平成30年度末までの時限措置になっています。

分野: イノベーションマネジメント |スピーカー: 永田晃也

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