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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 差別化戦略(5):客先立地 (企業戦略、生産管理/目代武史)

差別化戦略(5):客先立地

目代武史 企業戦略、生産管理

19/01/30

 今日は競争戦略における立地の問題について考えます。ビジネスにおいて良い立地を抑えることは商売の基本中の基本です。地理的なロケーションが競争戦略に与える影響について今日は考えてみたいと思います。

 まず、インスタントコーヒーを例に考えます。インスタントコーヒーのメーカーが差別化をすると、どのような点があるかというと、まずはコーヒーの味や香りです。それから瓶入りのコーヒーをスティック状の個別包装にするなど、コーヒーの入れ易さが工夫できます。その他にも、手頃な価格設定にしたり、スーパーやコンビニで店舗で良い棚の場所を確保したり、更にパッケージデザインを工夫したり、色々な代替案があると思います。
 マーケティングの4P(プロダクト、プライス、プレイス、プロモーション)に当てはめて言うと、コーヒー自体の味や香り、入れ易さはプロダクトで、商品自体の改良です。手頃な価格設定はプライスで、店舗における棚の確保はプレイス、つまり流通経路です。パッケージデザインやテレビコマーシャルはプロモーション(宣伝広告)に当てはまります。このように、良い商品を作って手頃な価格で店舗の良い場所を確保して売るという方法はある意味正攻法ではありますが、色々と厳しい競争に直面してしまうという側面もあります。
 商品力の強化という点で言うと、各社ともそれぞれ工夫を凝らしており、甲乙つけがたい状態にあります。また、スーパーなどの流通段階では、どのようにお店の中で陳列してもらうかということがポイントになってきますが、これもコーヒーメーカーからすると完全にはコントロールできない要素になってきます。
 更に街角に出てみると、いわゆるスターバックスやタリーズのようなスペシャルティーコーヒーがあります。また、コンビニでは100円程度で香りの良い淹れたてのコーヒーを買うことも出来ます。このようにしてコーヒー会社の手を離れて流通経路に乗った商品が消費者の手元に届いて、実際に消費されるまでには何段階ものステップを踏むことになります。その間に、他社のインスタントコーヒーやコンビニのコーヒーとの競争に晒されるわけです。

 このような状況を打破する画期的な一手となった取り組みがあります。それが「ネスカフェアンバサダー」という仕組みです。ご家庭や様々な会社の職場でもこのネスカフェアンバサダーを入れられている所もあると思います。専用のコーヒーマシーンを職場や家庭に無料で設置してもらって、コーヒーやスナック類を専用のオンラインショップ(「ラク楽お届け便」と言います)で定期的に発送するというものです。この仕組みは、職場やご家庭からするととても便利なものですが、競争戦略の観点からどのような意味があるかを考えてみたいと思います。
 まず1つ目に挙げられるのは、ネスカフェはこれによってスーパーやコンビニといった流通業者を通さずに直接消費者に商品を届けられることが出来るということです。通常の流通経路に乗った商品は、ある意味糸の切れた凧のような存在で、どこでどのように陳列されるのか、なかなかメーカー側は制御できない面があります。それに対し、ネスカフェアンバサダーは、お客さんの自宅や職場というまさに一等地に店舗を構えることが出来るという仕組みになっています。
 2番目ですが、その結果、他社製品との比較そのものが消えてしまいます。スーパーなどに買い出しに出かけて、インスタントコーヒーを買う時には、当然商品棚に並ぶ他社製品と比較をして一番良い物を買うことになります。しかし、このネスカフェアンバサダーのような仕組みだと、そのような比較自体がなくなってしまいます。
 更に3つ目に、お客さんの財布を掌握することにも繋がってきます。「ラク楽お届け便」を使う際には、ユーザーは会員になって支払口座を登録することになります。一旦口座が開設されてしまうと、ある種の慣性が働いて継続購入される可能性が高まっていきます。
 そして最後に、この仕組みをプラットフォームとしてオフィス関連の他の商品、例えば軽食類であったり洗剤であったり健康食品といったものを販売する道が開けてきます。商品の流通においては、お客さんに近づけば近づく程、お客さんの利便性が高まります。このことは、品揃えが豊富で値段の安いスーパーよりも、多少値段が高くても近所にあるコンビニの方が好まれるということからも見て取れます。
 お客さんのいる場所そのものに立地することを客先立地と言います。ネスカフェアンバサダーの場合、家庭のリビングにコーヒーサーバーがあるために、わざわざ出かけてコンビニコーヒーを買わなくてもいいわけです。これは、決して悪い言い方ではないのですが、トロイの木馬のように客先の懐に飛び込んで顧客の内部に店を構えるような状態を作り出しているのです。実は同様の仕組みは他にもあり、古くは富山の置き薬や、最近ではオフィスグリコがあげられます。

 今日のまとめです。お客さんの近くに立地することは、お客さんにとって買物の利便性を高めるために大変重要です。その究極の姿である客先立地は顧客の利便性の向上はもちろんのこと、競合他社との比較の消滅、お客さんの財布の把握、関連商品を販売するプラットフォームの構築といった点で強力な武器となる戦略と言えます。

分野: 企業戦略 生産管理 |スピーカー: 目代武史

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