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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 提案価値の差別化―ソリューション化 (企業戦略、生産管理/目代武史)

提案価値の差別化―ソリューション化

目代武史 企業戦略、生産管理

18/11/16

今日も差別化戦略の話です。差別化で重要なことはお客さんに提供する価値に違いを生みだすことです。前回はその一つの形としてアンバンドリングをとり上げました。従来束になっていた物をばらばらにしてそれぞれに値付けをして提供するというものです。

このアンバンドリングの考え方をさらに突き進めていくとソリューション化という発想に行き着きます。お客さんが製品やサービスを購入するのは、それを使って自らの欲求や課題を解決するためと考えることができます。例えば、音楽CDを買うのはCDを再生して音楽を聴くためです。車を買うのは車を運転して人や物を運ぶため、コンピューターを買うのはデータを処理して何かの計算をするためということになります。見方を変えると、製品やサービスそのものは手段に過ぎず、本質はそれらが提供する働きにあると言えます。
ソリューション化とは、従来の製品やサービスが提供していた働きをもっとダイレクトにお客さんに提供しようという考え方や仕組みのことを言います。音楽配信サービスは一つの典型例です。音楽あるいは映像の実体は、突き詰めて言えば情報です。従来はレコードやテープ、CD、DVDなどのある種のメディアに情報を焼き付けてそれを流通していました。しかし、音楽データがデジタル化されるとインターネットを介したデータの転送によって流通出来るようになるために、レコードやCDといった物理的な制約を離れて音楽データそのものを提供出来るようになりました。これが一つのソリューション化の例といえます。

このようなソリューション化の価値はどこにあるのでしょうか。まずユーザーからしてみると、従来製品を購入してそれを自ら使用することで問題を解決していました。しかし、ソリューション化によってより直接的に解決策を購入出来るようになります。例えば、製品を購入したりあるいは企業で設備を購入して導入する、あるいは人を恒常的に雇ったりするというのはある種の固定費になります。この固定費はユーザーの自由度を拘束することになります。さらに、購入した製品や設備はきちんとメンテナンスしないといけませんし、人材もそうです。そこで、もし必要なときに音楽や映像のコンテンツやモビリティ、コンピューティングといった働きのみを利用可能になれば、固定費を引き下げることができ、自前でメンテナンスに費やしてきた経営資源を開放することができます。

では、逆にこのようなソリューションを提供する企業からすると、どこに旨みがあるのでしょうか。具体例を見ていきましょう。アメリカの大手航空機エンジンメーカーにゼネラル・エレクトリック社(GE)という会社があります。この会社はかつて航空機エンジンを航空会社に販売し、その販売代金とメンテナンス手数料や補修部品ビジネスで利益をあげていました。これ自体は、販売した製品、つまり航空機エンジンを基盤としてアフターサービスで儲けるというビジネスモデルとして大変優れたものでしたが、近年になってさらにこのビジネスモデルを進化させ、いわゆるソリューション化を図っています。
彼らはエンジンを売るのではなく、エンジンが生みだす飛行機の推進力を販売するということを始めました。つまり、時間当たりこれだけのパワーを生んだことに対して課金するのです。航空会社はGEが提供するエンジンの推進力当たりにお金を払うというとビジネスを始めました。この時、エンジン自体はGE社が所有し、適切に管理します。航空会社からすると、エンジンのメンテナンスはかなり大変なのですが、そうしたメンテナンスの手間から開放されることは、ユーザーにとって大変価値があります。
一方でGE側は航空会社と包括契約を結び、機体の操縦や運行情報、飛行計画などの情報も一括して入手する契約を結んでいます。そのようにすると、エンジンがどのように使われているのか、どのように機体を操作すると燃費がよくなるのか、そのようなビッグデータを入手し分析することで、航空会社に対してさらにより良いソリューションを提供できるようになります。その結果、航空会社は一度GEのこのサービスを使い出すと離れられません。
いわゆる従来型の売り切り型ビジネスモデルでは、物やサービスをお客さんに販売してしまうとその製品がどのように使われているかは分からなくなります。ソリューション化の場合は、資産自体は提供側が持っていて、お客さんにはソリューションのみを提供しているので、どのように物を使っているのかということが分かります。さらに、このソリューション化が上手くいくと、ユーザー側は提供者のサービスに依存するようになり抜けられなくなります。囲い込みの効果があるわけです。その上、ソリューション化では、従来のように物としての製品と価格との関係が明確でなくなっていくので、提供されるソリューションの原価構成がユーザーから見えにくくなります。そうなると、値付けの面でも有利になって利益率の高い収費構造に結びつきやすくなると考えられます。

今日のまとめです。ソリューション化は従来の製品やサービスから本質的な機能である問題解決の働きをアンバンドリングするものと考えられます。お客さんが抱える問題をダイレクトに解決することで顧客に価値をもたらすものです。顧客からすると製品を購入し操作し維持管理する手間から開放されるというメリットがあります。ソリューションの提供側からすると、顧客の懐深くに入り込むことで顧客を囲い込んで、かつお客さんの本質的なニーズや内部事情にも深く通じるようになることから、より良いサービスを提供できるようになります。それによって、さらに顧客の自社への依存度が増すという好循環が生まれやすくなります。近年注目されているクラウドサービスやシェアリングエコノミーもある種のソリューション化の一つの形態と言えるでしょう。

分野: 企業戦略 生産管理 |スピーカー: 目代武史

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