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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 自由貿易体制の危機 (企業財務 M&A/村藤功)

自由貿易体制の危機

村藤功 企業財務 M&A

18/11/01

今日は、トランプ大統領と自由貿易体制の危機、という話をしたいと思います。もうすぐアメリカの中間選挙ですけども、アメリカ国内ではトランプ支持率が上がったり下がったりしています。では、国内の支持率はどうなるとあがったり下がったりするのでしょうか? まず、アメリカファーストという事でアメリカがきちんと世界の中心にいる事を明らかにすれば、トランプ大統領の評価があがります。また、法人税を下げてくれたとかこれから所得税を下げてくれそうといった、自分の税金が下がる話をアメリカ国民が好きなのは間違いありません。では、最近の支持率が下がる原因は何でしょうか? はじめからずっとやっている人種差別とかではありません。最近、ボブ・ウッドワードという人が内幕本を出したり、元ポルノ女優の不倫関係暴露本が出版されたり、さらにニューヨークタイムズが脱税疑惑を明らかにしたりしました。最近はこのような暴露本や内幕本で支持率がちょっと落ちています。普通の人だったらそれだけで駄目になるのですが、トランプさんは結構打たれ強いというかあまりに色々あるのでそれだけで駄目にはなりません。

ここのところ中国対アメリカの貿易戦争で、自由貿易体制が本当に大丈夫なのかととても騒ぎになっています。アメリカにとっては80兆円の貿易赤字の半分が中国です。その為、中国に対して500億ドルまず知財侵害で関税かけるぞと言って、4月に340億ドル、8月に160億ドル、9月にそれに加えて2000億ドルの関税をかけ、アメリカと中国の戦いが始まりました。中国ももちろんそれに対して黙って見ているのではなく、それだったらこっちも報復するぞと言って、小麦やトウモロコシとか大豆といったアメリカから中国に輸出する農産品に関税をかけました。アメリカではシェールのLNGだとか原油あたりがとても増えているので、貿易不均衡はLNGでカバーみたいな話を最初はしていたのでした。中国もそういう提案をしていたのだけど、提案を実行するのを待つまでもなくトランプ大統領が戦争を仕掛け始めたという事で、ちょっとキナ臭い話になっています。

アメリカと中国との貿易戦争の結果、アメリカではどういう影響が出るか知っていますか? 貿易戦争の結果、中国から輸入している原材料に高い関税がかかるとアメリカで生産する物の値段も上がります。まず中国から仕入れる物のコストが上がり、原材料だけでなく完成品も中国から結構輸入しているので、それも上がると結局アメリカの消費者が高いお金払わないといけなくなるのです。もうすぐインフレになるぞという気配になってきました。それから、中国に対してだけではないですけども、鉄やアルミにもアメリカが関税をかけたもので、パイプラインの値段が上がってきています。シェールをせっかく増産しても、パイプラインで持ってこないといけない。パイプライン作れないぞという話が出たり、中国が大豆やトウモロコシとか小麦を買ってくれないというので、アメリカの農産品の値段がと下がったりいったことが起こっています。結局、アメリカにとっても良くない結果が出てきているのですが、とりあえず中国をやっつけるというのがトランプ的にいうアメリカファーストなのです。

NAFTAは北アメリカにあるカナダとかメキシコと一緒にアメリカが作っていた自由貿易圏ですけど、最近NAFTAでなくてUSMCAと言われています。USはアメリカで、Mがメキシコ、CAってカナダ。USMCAという名前にNAFTAから変わりました。USMCAで何が起こっているかと言うと、メキシコが最初合意させられて、カナダが仲間外れになるのが嫌だったので結局カナダも後でアメリカとメキシコの合意に加わったのです。一番心配なのが自動車の数量規制、自動車部品の数量規制です。今までアメリカに輸出していた分は取り合えずは良いけれど、これから更にメキシコとかカナダを使ってアメリカに輸出するというのはほぼ駄目というような状況です。今後、メキシコやカナダで作ってアメリカに輸出する事は、ほぼ全部駄目になりました。アメリカで販売したければアメリカで作れ、というのです。

日本も今、TAGという2国間の自由貿易協定を、アメリカと年が明けてから交渉を始めるという事になっています。そこで、結構な確率でカナダやメキシコみたいに数量規制をかけられる可能性があります。自動車何台まではOKだけどそれ以上は駄目よとみたいな事になってくると、工場を日本からアメリカに持っていかないといけない。カナダとかメキシコとか日本にあった工場がみんなアメリカにいくという話になってくるわけです。例えば、エンジンだとかトランスミッションといった自動車の7つの主要部品は、今までは日本とかドイツ辺りからアメリカへの輸出が多かったのです。7つの主要部品のうちひとつでもUSMCAの外から輸入した場合、アメリカとカナダとメキシコの3国の間で自由に関税なしで貿易するというのは許さんという事で、工場が全部カナダ・メキシコ・日本からアメリカに集中するという流れが出来ています。その結果、アメリカに工場が出来るという事はアメリカに仕事が出来る事なのでアメリカ人は大喜びです。トランプ大統領が結構人気が上がっている理由なのです。

ところで、数量規制は本当はWTO違反なので、WTOでちょっと訴えたらどうなのかという考えがあるかもしれません。WTOの上級裁判所というのは日本の最高裁にあたり、裁判官7人が定員です。この間1人辞めて今3人になっており、7人のうち3人しかいない。3人で決定しないといけないわけで、今はギリギリです。アメリカが後任を認めなかったり、また元に戻すのを邪魔したり、WTOってどうせ駄目みたいな事を言ったりするので、困ったことになっています。アメリカにWTOに戻ってもらわないと第2次大戦後のWTO体制を弱くしかねません。そこで、最近ヨーロッパと日本が何をしているかというと、アメリカにWTOに戻ってもらう為に中国の知財のズルを許さないとか、中国が産業の補助をするのを許さないとか、そういう事を言っています。少しアメリカを喜ばせて、アメリカに戻ってもらおうと考えているのです。アメリカがWTOを許せないと言っている理由は、中国の業界に補助金をだすとか知財保護をちゃんとやらないとかいうことに怒っているので、これをちゃんとしてアメリカに戻ってもらおうとしているのです。ただ、相手がトランプですから戻ってくれるどうかと分からないと言う所です。

今日のまとめです。アメリカと中国の間の貿易戦争が止まりません。WTOの機能が低下して国際貿易が縮小しそうになっています。その結果、アメリカ国内でも原材料価格が上がっていて、消費者価格が上がり始めました。NAFTA、USMCAとして数量規制をしている形になっているので、日本もこれらか少し心配という状況です。

分野: その他 |スピーカー: 村藤功

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