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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > リターン・ポテンシャルモデル (産業組織心理学、社会心理学/三上聡美)

リターン・ポテンシャルモデル

三上聡美 産業組織心理学、社会心理学

18/10/24

今日は、遅刻の許容範囲についてお話します。
私は今年度から九州大学ビジネススク-ルで「ビジネス統計」の講義を担当しています。私の授業では、基本的に「遅刻、欠席、途中離席は認めない」としているのですが、何人かの学生から、「遅刻は何分まで認められますか?」という質問がありました。正直な気持ちを申しますと、一番始めにこの質問を受けた時に、「社会人が何言っているのだろう」と思いました。おそらく質問してきた人にとっては、統計の授業を受けたい気持ちは強いけれど、仕事を定時に切り上げて移動したとしても、授業に間に合うかどうか不安になり、質問したのではないかと思います。

話は変わりますが、私は小学校1年生から5年生まで鹿児島で過ごしました。その当時、「3分前(5分前)行動」という目標が毎週のように立てられていたため、授業のチャイムが鳴るころには席について先生を待ち、机の上には教科書を出しているというのが普通でした。もちろんできない日もありましたが、それをするのが当たり前の日常でした。しかし、小学校6年生になった時に、私は1年間だけ滋賀県に転校しました。ある体育の授業の時に、体操服に着替えて校庭に出た時、授業のチャイムが鳴りました。私が一緒にいる友達に「チャイムが鳴ったから急ごう!早く並ぼう」と言いました。すると友達は、「時間をちゃんと守って偉いね。でも気にしなくて良いんだよ」と言いました。その言葉にすごく衝撃を受けたことを今でもはっきりと覚えています。それを境に、ズルズルと私も3分前行動をしなくなったような気がします。鹿児島での小学校の5年間は、チャイムが鳴る前までに次の授業の準備をしておくことが暗黙のルールになっていたからこそ、転校した先でのんびりしているクラスの友達に衝撃を受けたんだと今では思います。

さて、遅刻の話に戻りますと、職場によっては「遅刻が許容される範囲」が存在しており、授業でもそれが適用されると思っている人がいるのではないかと思いました。集団にはその集団を維持するために、集団のメンバーの考え方や、行動の共通様式があります。これを「集団規範」と呼んでいます。集団の中での「暗黙のルール」みたいなものです。集団規範を測定する方法の1つに、「リターンポテンシャルモデル」というものがあります。これは、集団のメンバーがどのように振る舞ったら、組織にもっとも受け入れられるのかというのを曲線のグラフで説明しようとする理論のことを言います。

例えば、出社する時間を業務開始時間の30分前から、業務開始時間30分後まで5分刻みで設定し、それぞれの出社時間について、認められる程度の強さから認められない強さまでを5段階で回答してもらうとします。その結果を集計して、グラフにしてみると、「リターンポテンシャル曲線」が出来上がります。

皆さん、少しイメージしてみて下さい。
今回の例でいうとグラフのイメージは、横軸が「出社時間」を表し、5分刻みで右に伸びていきます。縦軸は「評価」を表します。中心から上に伸びるほど認められ、下に伸びるほど認められなくなります。曲線は認められないゾーンから伸びていき、認められるゾーンの最大に達した所で徐々に下がっていきます。つまり、山の形をした曲線になります。このグラフの最大値が一番許される時間になります。

例えば、グラフの最大値が、業務開始時間10分前だとすると、その時間が職場の出社時刻として望ましい時間になるということです。つまり、出社時間が9時だとすると、その10分前、8時50分の出社が最もみんなから認められる時間ということです。
そして「許されるゾーン」と「許されないゾーン」の境目にくる点が2つ存在します。マイナスの所から始まって、大きな山を作って、また下ってマイナスまで行くわけですから、ちょうど横軸と交わる所で2つの点ができます。この2つの間の範囲が「規範の許容範囲」とされています。その2点が、8時30分と9時15分だとすると、その間の時間が許容範囲になります。つまり、遅刻はいけませんが、あまり早く来すぎるのも、かえって他の人のプレッシャーになる可能性があり、必ずしも良くはないということになります。

結局ビジネス統計の授業では、遅刻はある程度大目に許してあげました。講義をしながら遅刻をする学生に対して、「おもしろいな」と思うことがありました。それは遅刻をする人は、大概同じ時間帯に教室に入ってきました。電車が到着する時間など理由はあるのかもしれませんが、毎回遅刻をして、同じ時間に教室に入ってくるのです。しかもそれが1人だけではなく、数人いました。せっかくならば、受講した学生さんの職場の遅刻のリターンポテンシャルモデルを調査してみたら面白かったのではないか、と思っています。

では、今日のまとめです。
集団を維持するためにメンバーの考え方や行動が共通化していき、それが暗黙のルールになっていきます。それを「集団規範」と呼びます。その規範を測定する方法に「リターンポテンシャルモデル」があります。リターンポテンシャルモデルの許容範囲が狭いと、その集団の規範が強いとされています。みなさんの職場では遅刻の規範はどのようになっているでしょうか。

分野: 社会心理学・組織心理学 |スピーカー: 三上聡美

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