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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 二宮尊徳と日本の現代企業~伝統的倫理観に学ぶ現代企業の経営哲学~ (企業倫理、リスクマネジメント/平野琢)

二宮尊徳と日本の現代企業~伝統的倫理観に学ぶ現代企業の経営哲学~

平野琢 企業倫理、リスクマネジメント

18/10/11

初めまして。本年4月からビジネススクールの方に着任しました平野琢といいます。ビジネススクールではリスクマネジメントと企業倫理を担当しており、研究分野もこのリスクマネジメントと企業倫理です。具体的には産業事故の分析に関するリスクマネジメントの研究や企業の強みを活かした社会問題の解決を企業はどのように取り組んでいけばいいか、簡単に言えばCSRについて研究しています。本日はどうぞよろしくお願いします。

今日は二宮尊徳、二宮金次郎と日本の現代企業の企業哲学についてお話します。小学校にあった銅像のモデルや勤勉の象徴のイメージが強いと思います。近年では薪を背負って歩きながら読書をする姿が歩きスマホを助長するという批判があり、座った銅像なども作られています。いずれにせよ、時代を超えて尊敬を集める人物の一人と言えると思います。江戸期の農村の復興に従事して農業と結びつきが強い二宮金次郎ですが、彼がその生涯を通じて示した報徳思想は、報道の報に道徳の徳と書いて徳に報いる思想という意味です。これは実は企業経営にも通じるものが多くて、時代を問わずに多くの経営者がその影響を受けていると言われます。
二宮金次郎、尊徳は、江戸時代末期の実践的な思想家とよく言われることがあります。若かりし頃に彼は両親を亡くしていますが、苦学をして一族を再興させました。この時に寸暇を惜しんで学んだ様子が銅像のモデルとなり、日本における勤勉の象徴として根付いたと考えられます。但し彼が実践的な思想家とされて尊敬を集める理由はその後の彼の社会的な業績に基づくものだと考えられます。
尊徳は成人後現在の神奈川県西部にあたる小田原藩や同下野などの農村復興を命じられました。この復興が大変に難しくて既得権益の存在や農業技術の未発達などがあって、とても成功するものではないと言われていました。但し尊徳は農民の自発性を尊重する様々な再建策を実践して、その2つの再建に成功しました。その手腕が認められ、彼は生涯を通じてその後日本各地の貧しさにあえぐ農村の再建に従事していきます。彼が再建した農村は90を超えると言われ、一説では600近いと指摘する人もいます。現代の言葉に直すと、江戸時代における地方創生のイノベーターと言えるかもしれません。
この二宮尊徳はこれらの農村再建を通じて得た知見を報徳思想にまとめています。注目すべきは報徳思想の中で尊徳は消費を抑えて余剰を再生産に回すことの重要性や短期的な投資よりも組織の永続性を重視した生産や投資の重要性を説いています。これは、現代風の表現に直せば戦略的投資の重要性や持続可能性のある経営の実践について説いています。また、経済活動を道徳的なルールに則って行われるべきであることや経済生産活動における相互の助け合いの重要性についても触れられています。つまり、コンプライアンス経営の推奨についても述べられています。このようにつぶさに報徳思想の内容を見ると、200年前に示した報徳の思想が現代ビジネスに求められる様々な事象に見事に当てはまります。これは非常に驚くべき点です。
実際に尊徳の報徳思想は多くの企業の実務家に影響を及ぼしたと言われています。例えば、明治期に活躍した近代日本経済の父と呼ばれる渋沢栄一もその一人だと言われています。彼は資本主義が日本に導入された時期に経済活動における道徳性の重要性を指摘しました。これは道徳経済合一説と呼ばれますが、この思想のそもそも根本的な発想には尊徳が報徳思想において示した徳体財体一円という考え方であるという指摘もあります。徳は道徳の徳、その道徳の本体の体です。その体が財産をなす活動の体と一つの円で同じようにして作られているという意味です。つまり、経済活動も道徳的な物に則って行われるべきだという発想に基づいています。
彼だけではなく真珠の特産化に成功し、現在アクセサリーや化粧品のグローバル企業であるミキモトの創業者である御木本幸吉もその影響を受けた一人であると言われています。現代の様々な企業においてもその社是や社訓、そして経営戦略の中にも私達は尊徳の示した報徳思想の影響を見ることが出来ます。私自身も自分の研究で幾つかの企業を調査しましたが、現代企業の経営哲学において重視されている事項と尊徳が報徳思想において重要であると説いた事項の間には実は驚くほど共通点があります。

今日のまとめです。江戸時代末期に農村の再建において活躍した二宮尊徳、彼の示した報徳思想には持続可能性のある経営の実践やコンプライアンス経営の重要性など、現代企業の経営に通じるものが多く存在します。実際に、渋沢栄一、御木本幸吉、豊田佐吉、松下幸之助など、明治から平成に至る様々な経営者が報徳思想に共感し、それを経営において体現しています。その様相は報徳思想が時代を超えて通じるものであったことを我々に教えてくれます。やや誤解を恐れずにまとめれば、尊徳が示した報徳思想は単なる損得勘定を超えた経営のあり方を示した日本で最初の経営学なのかもしれません。

分野: 経営リスクマネジメント |スピーカー: 平野琢

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