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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 働き方改革について(その1) (企業財務管理、国際金融/平松拓)

働き方改革について(その1)

平松拓 企業財務管理、国際金融

18/10/25

今回と次回の2回に亘って、働き改革についてお話したいと思います。昨年来国会で議論されてきた「働き方改革関連諸法案」が本年6月国会で承認され、来年以降順次施行される運びとなりました。この法案は、「雇用対策法」や「労働基準法」、「パートタイム労働法」などの改正など多岐に亘る内容を含んでおり、個々をここで論じることはできませんが、「働き方改革」は人口減少段階を迎えた日本の雇用慣行・制度を見直すことで、労働生産性を向上し、経済成長の復活へと導くための重要政策であり、ここで法改正に至った背景や、その持つ意味について考えてみます。

今回の改正内容は、大きく、①長時間労働の是正と多様で柔軟な働き方の実現、②雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保---の2つを柱としています。前者の関連では、時間外労働の上限規制(月45時間、年360時間、特別な場合でも月100時間、年720時間未満など)の厳格化が図られ、労使間で協定を結んだとしても、上限を超えることが許されないことになりました。一方、時間外規制の例外として、現行、研究職や企画職などに認められている、実際の労働を労働者の裁量に任せつつ一定時間働いたと見做す「裁量労働制」の適用の拡大は見送られましたが、別途、ディーラーなど一定以上の給与水準にある専門性の高い職種を対象として、労働時間そのものには制約を設けない「高度プロフェッショナル制度」が創設されました。また、公正な待遇の関連では、正規雇用労働者と非正規雇用労働者、或いはパートタイム労働者や派遣労働者との間の、合理的に説明のつかない待遇の差の禁止などが盛り込まれました。

「働き方改革」の考え方は、アベノミクスのバイブルともいうべき日本再興戦略の2016年版で大きな柱として採り上げられていましたが、そこでは、成長制約を打破のために、①労働条件の改善、②女性と高齢者の活躍推進―――の2つが鍵として挙げられました。この背景には、かねてから指摘されている通り、生産性が先進国比で劣っているとされる日本の労働者の労働の「質」の向上を図る必要があること、そして、生産年齢人口が過去20年間で10百万人も減少し、且つ今後とも速いペースで減少が続く中で、それを成長の制約としないために、これまで十分でなかった女性や高齢者など多様な人材の活用を図ること、そしてそのためにも柔軟且つ公正な待遇(基本的には同一労働・同一賃金の発想)の確保など、雇用環境の整備が必要だという認識に基づいています。

「働き方改革」という表現自体は、前年取り纏めの日本再興戦略(改訂)2015の中でも用いられていましたが、そこでは漠然とした方向性が示されるにとどまっていました。それが2016年版では大きな柱として扱われることになった訳ですが、2017年3月に取り纏められた「働き方改革実行計画」では、具体的且つ踏み込んだ19項目に亘る施策が盛り込まれ、また、広告代理店に勤務した若者の過労死問題が注目されたことや、景況改善に伴って「人手不足」が至る所で深刻化したということとも重なったこともあって、労働界や産業界の支持を得て、今回の法改正に繋がりました。

今回の改正内容は短期的な効果も期待するものとなっており、その分、雇用主にとっては負担が大きいと思われます。これ迄の議論の段階においては、好景気や人手不足がモーメンタムとして働き、前進が見られた訳ですが、これからの実施段階においても同じような好条件が継続するとは限りません。とはいうものの、改革の実施が滞れば、中長期的には企業自体が人材の確保ができずに苦しむこととなる訳で。多少、景気の変動に見舞われようとも、各企業が、短期的視点に振られることなく、着実に改革を実行に移すことが期待されます。

今回のまとめです。少子高齢化による人口動態変化が極端に進む我が国において、それが成長の制約となることを避けるための働き方改革ですが、その骨格をなす「働き方改革関連法」がこのほど成立しました。好景気という環境と、生産年齢人口の減少により深刻化する人手不足への危機感を梃に、かなり踏み込んだ内容を持つものとなりました。この先、たとえ短期的に景気がスローダウンして、人手に余裕が生じるような状況となったとしても、中長期的な観点から企業もこの「働き方改革」に積極的に対応することが期待されます。

分野: 国際金融 財政 |スピーカー: 平松拓

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