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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 垂直統合(2) (企業戦略、生産管理/目代武史)

垂直統合(2)

目代武史 企業戦略、生産管理

18/09/19

 今回は前回に引き続いて垂直統合についてお話をしたいと思います。
 垂直統合とは企業が価値連鎖に沿って上流や下流の領域に企業の事業範囲を広げることです。

 例えば、アパレル業界でファストファッションと言われるユニクロやGap、ZARAなどの企業がカジュアルウエアの小売だけではなくて生産も手掛ける事例が垂直統合の一つと考えられます。企業が元々の本業から上流や下流の領域に事業範囲を広げる理由は幾つかありますが、一つは前回ご紹介した取引コスト論という考え方があります。企業同士が経済取引をするとなると相手のことを調べたり交渉をしたり、色々と細かな契約条件を詰めて行ったりするなど様々な手間が掛かります。特に相手が契約をしたけれど、どのように振る舞うかわからないというケースでは、相手が契約を守ってくれるかどうかという監視も必要になってきます。このような手間のことを経済学では取引コストと言います。この取引コストが大きくなる場合、つまり相手が信頼できるかどうかよくわからないというケースでは、相手に任せるのではなくて、むしろ自分で手掛けてしまった方が取引コストは小さくなるということから、垂直統合に踏み切るということがあります。これが前回ご紹介した内容でした。
 しかし、企業の垂直統合を説明する理論は他にもあります。例えば今普及が期待されている電気自動車ですが、その性能と価格の鍵を握るのがバッテリーです。世界中で電気自動車のバッテリーの開発競争が繰り広げられています。例えばトヨタですが、元々重要技術を垂直統合して、手の内のものにするという意欲がとても強い会社です。バッテリーに関してもパナソニックと合弁会社を設立して、バッテリーの製造と開発を始めました。当初はトヨタが出資比率60%、パナソニックが40%という比率でしたが、その後徐々に出資比率を高めていきまして、現在ではトヨタが8割出資しています。そのようにして、電気自動車時代の鍵を握るバッテリー技術を手の内のものにするということをやっています。
 もう一つ例を挙げると、車の制御はエレクトロニクス化が進んできており半導体が非常に重要になっています。トヨタは、この半導体を自ら生産しています。自動車は、いわゆる機械工学の世界ですが、バッテリーは電子工学や化学の領域です。早くも1989年に半導体工場を作って垂直統合しているのです。車載バッテリーや半導体に関しては、外部の専門メーカーから購入することも出来ますが、あえて自社生産に踏み切るメリットは何でしょうか。バッテリーや半導体といったこれまで保有していなかった技術分野を手掛けるには、投資も時間も必要になります。手っ取り早く部品を調達するという点では買った方が早いわけです。
 ただ一方で、垂直統合のメリットとして、自社用へのカスタマイズがやりやすくなることが挙げられます。例えば、専用の製品設計にしたり、専用の生産設備を導入したりすることです。このような、ある特定用途向けの投資のことを企業特殊的投資あるいは取引特殊的投資といいます。企業特殊的投資は、その企業にとって最適なカスタマイズを施しているので、独自のノウハウが詰まっているといえます。
 ところが、そのような投資を部品メーカーにお願いして出来るかという問題が出てきます。例えば、トヨタがパナソニックやソニーに会社専用のラインを引いてもらうお願いをするとします。そのとき、もし引いてくれれば効率は高まりますが、一方でトヨタ専用のラインだから、日産向けやホンダ向け生産には適合しない可能性が出てきます。そうすると取引先の企業としてみると、そのような投資にはリスクがあるといえます。言い換えると、特定取引に特殊な投資をしてしまうと潰しがききにくくなるわけです。したがって、そのような重要部品をサプライヤーから調達するとなると、サプライヤーが取引特殊的投資を躊躇してなかなか思い切った投資をしてくれない可能性があります。そうした場合に自ら垂直統合すれば、自社にとってカスタマイズのされた設備投資がしやすくなるわけです。このように特定の企業に固有な装置やノウハウ、経営資源を重視する経営理論のことを資源ベース論と言います。この資源ベース論が企業の垂直統合のあり方を説明するもう一つの理論ということになります。

 今日のまとめです。企業が垂直統合を図るのはその企業の目的に特有な設備投資やノウハウの蓄積を効果的に進めるためです。特定の目的に最適化された設備や生産ライン、技術ノウハウは外部の企業からすると潰しがきかないことから、投資を躊躇することがあります。そこでそのような企業特殊的な投資については外部からの購入に頼るのではなく、垂直統合することで自ら手掛けます。ところが、実は同じ理由によって垂直統合をしない方が良いと考える理論もあります。それについては次回ご紹介したいと思います。

分野: 企業戦略 |スピーカー: 目代武史

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