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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 印象形成 (産業組織心理学、社会心理学/三上聡美)

印象形成

三上聡美 産業組織心理学、社会心理学

18/09/10

今日は、「印象形成」についてお話します。
わたしたちは普段の生活の中で様々な人と出会い、関わりあっています。その中で、相手の考えや気持ち、行動などを推測しています。このような行動は、対人関係を円滑に進めるために重要な行為と言われています。わたしたちが相手の考えや気持ちを推測するとき、まず目や耳などから得られる情報を頼りにします。私は以前、学部生を対象とした社会心理学の初回授業で、出席カードの裏に私の印象を書いてもらったことがあります。すると多くの学生が「黒い服を着ている人」と書いていました。私は普段黒系の服を着ていることが多いのですが、その時の学生達は見た目の印象を書いていました。このように、初対面の相手の情報というのは、まず身体的な特徴から入手します。「背が高い」「目が大きい」など目に入るものを感じ、その後に「やさしそう」「明るそう」といった目に見えない特徴を推測していきます。これを心理学では、「対人認知」と呼んでいます。

この対人認知の方法の1つに「印象形成」というものがあります。この「印象形成」とは、相手の全体的な印象を形成することを言います。今日はアッシュという人が行った「印象形成」の実験をご紹介します。

彼は架空の人物の性格リストを用意して、そのリストを実験参加者に読んでもらい、そこから思い浮かぶ人物像の印象評定をしてもらうという実験を行いました。性格リストは1語のみが異なる2種類が用意されていました。それぞれのリストをここでは「リストA」と「リストB」とします。「リストA」には、「知的な・器用な・勤勉な・温かい・決断力のある・現実的な・慎重な」という性格が書かれていました。もう1つの「リストB」には、「知的な・器用な・勤勉な・冷たい・決断力のある・現実的な・慎重な」という性格が書かれていました。この2つの違い、わかりますか。実は、リストAとBを見比べてみると「温かい」という言葉がリストAには書いてあり、リストBには「冷たい」とあります。それ以外は全て一緒で、「温かい」という言葉と「冷たい」という言葉だけが違うわけです。この2つリストAとBのそれぞれの実験から、「温かい」を含むリストAを読んで思い浮かんだ人物の方が好意的な評定がされるということがわかりました。わたしたち人間の性格というのは、たくさんの種類があり、その性格1つ1つを捉えていくことが1番望ましいですが、それはとても難しいため、実はこの「温かい」とか「冷たい」という言葉1つだけで印象が変わってしまうということがこの実験でわかりました。

この心理学では、「温かい」とか「冷たい」のように、全体的な印象に強く影響する特徴を「中心特性」と呼びます。そしてあまり影響しない「勤勉な」とか「決断力のある」というような特徴を「周辺特性」と呼んでいます。ここでいう特性は、性格と同じ意味と捉えてかまいません。出会った時の印象とある程度仲良くなってからの印象が違う知人はいますか。もしそういう人がいるのであれば、その人に対する印象形成というのは、もしかしたら初対面の時から「中心特性」でばっちり決まっていたのかもしれません。
初対面時は、「中心特性」でその人を捉えてしまっていたけれども、仲良くなって色んなことを知っていくと違う面が色々と見えてきて、実はこうなんだということがわかってきたということです。

もう1つアッシュの印象形成の実験をご紹介したいと思います。方法は先ほどの実験と同じです。今度は、この2種類のリストを「リストC」「リストD」としましょう。リストCには、「知的な・勤勉な・衝動的な・批判的な・頑固な・嫉妬深い」と書かれています。もう1つのリストDには、「嫉妬深い・頑固な・批判的な・衝動的な・勤勉な・知的な」と書かれていました。この2つのリストの違いはわかりますか。
リストCは、「知的な」というどちらかというとプラスの印象を与えるような言葉から書かれていますが、リストDは、「嫉妬深い」とか「頑固な」といったマイナスの印象を与えるような言葉が先にきています。
同じ言葉をリストCは良い方から、リストDは悪い方から逆に読んだだけのものになっています。それで同じように手続きを行ったところ、リストCの先に望ましい情報が書かれていた方が良い印象になるという結果になりました。

最初の方の情報の方が「方向付け」の機能を持ち、後の悪い意味の情報が良い方向に変容されてしまい、全体的な印象を決めてしまう特徴があります。これを心理学では、「初頭効果」と呼んでいます。第1印象が肝心と言いますが、この実験は、このことを裏付ける結果になっています。
ちなみにアッシュの実験は、単純に性格のリストを表示しただけのシンプルなものだったのですが、現実場面では、性格だけを紹介することはありません。この実験を応用してケリーという人が日常場面に近い紹介文を作ってアッシュと同様の実験を行いましたが、同様の結果が得られたそうです。

では、今日のまとめです。
相手から直接得られる情報から相手の考えや気持ち行動などを推測することを「対人認知」と呼びます。その1つに「印象形成」がありますが、印象形成の仕方というものは、相手のことをじっくり理解して作り上げるのではなく、注目すべき情報だけで出来上がってしまうものなのです。

分野: 社会心理学・組織心理学 |スピーカー: 三上聡美

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