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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 技術進歩を活かした製品開発 (マーケティング/岩下仁)

技術進歩を活かした製品開発

岩下仁 マーケティング

18/08/22

コモディティ化市場のマーケティング戦略ということでお話を進めています。消費者からすると製品の品質に違いが見られないことをコモディティ化市場と言いますが、成熟した経済状況にある日本では多くのカテゴリーがコモディティ化に陥ってしまっているわけです。そのような中でも優れた企業というのは様々な取組みや工夫をすることで、業績を着実に伸ばしているのです。技術革新を上手く製品に取り組んでヒット製品を作り出している企業もあるようです。今回は、コモディティ化が進むビジネススーツ市場でヒット商品となっているストレッチスーツを例にとって見ていきましょう。

ビジネススーツ市場は一般化された商品ですので、その違いというのがもう価格の違いでしか比べられないというところに来ています。したがって、典型的なコモディティ化に陥っている市場と言うことができます。このビジネススーツの市場ですけども、価格帯は非常に幅広いですよね。1着2万円のものもあれば50万円のものもあります。今回は、一般的に多くのビジネスパーソンの方が着られる、3~4万円程度の価格帯のスーツをイメージして頂きたいと思います。

実は、紳士服専門店で今一番賑わっている売り場は、ストレッチスーツ売り場です。オフィスのカジュアル化でスーツの販売は頭打ちになっています。矢野経済研究所の報告によると、2016年のスーツの販売数は2015年と比べると10%程減少しているそうです。そうした中でも、例えばはるやま商事では衣服圧、つまりスーツを着たときの圧迫感が従来の1/3になるストレス対策スーツの売上がなんと通常のスーツの3倍程度になっているのです。

このように非常に伸びているストレッチスーツですが、一体どのような人々が購入しているのでしょうか。実はこれまではストレッチスーツの主要顧客はお腹周りが気になる中高年の方々で、スラックスなどのストレッチスーツの売り場のサイズ展開というのはウエストサイズ90㎝以上が中心でした。ところが、最近のストレッチスーツ売り場では中高年の方の姿がまばらになっており、明らかに若い男性客の姿が目に付きます。紳士服大手のAOKIが2017年5月~6月に実施した消費者調査の結果によると、ビジネススーツに伸縮性を求める割合は20~29歳が44.5%、30~44歳が35.3%、45~59歳が28.7%になっているそうです。中高年の方々よりも若者の方が、明らかにニーズが高いと言えます。

紳士服大手のAOKIでは、最近のストレッチスーツは細身のシルエットになっていて、且つ着心地が格段に進歩していると言っています。通常伸縮性を出すためにはウールなどの素材にポリウレタンなどの化学繊維を混ぜるわけですが、技術革新によってポリウレタンの割合が少なくても伸縮性を発揮できるようになりました。ポリウレタンが少ないとその分生地が薄くなります。ですので、ストレッチスーツを着るとぶかぶかのズボンやジャケットになってしまってダサい、こういった場面が減ってきているわけです。僕も10年程前自分の父親がストレッチスーツを着ているのを見て、細身のシルエットが出ていなかったので、ちょっと着られないなということを感じたのを覚えています。

ストレッチスーツで私達がよく目にするのは、細身で伸縮性の高い物というイメージがすごく強いですが、以前お父さん達が着ていたゆったりしてだぼっとした感じのもの、それが元々のストレッチスーツです。お腹周りとかが伸びてゆったり着られるということで、元々はそれがストレッチスーツだったわけです。それが、今のストレッチスーツというのは伸びる上にピタッと細身のものを実現でき、若い人達にも受けるようになりました。

今AOKIやコナカといった紳士服専門店のストレッチスーツを着てみますと、ほとんど普通のスーツと違いが分からないと思います。以前は伸縮性を出すために大きく作っていたスーツが、スリム化されたのです。伸縮性もあってシルエットも優れているとなれば、普通のスーツよりもストレッチスーツを購入した方が得だねと思ってしまいますよね。

それでは、どうしてこのような素材の技術革新が生まれたのでしょうか? 実はフェラガモなどの高級ブランドが日本をはじめとする紡繊メーカーに伸縮性の高い素材を開発して欲しいと要請したことが始まりだったそうです。実は欧米の高級ブランドは、近ごろ他のブランドとの差別化の切り札として伸縮性の高い素材の関心を強めています。パリコレクションですとか、ミラノコレクションといった有名なファッションショー等で披露された新素材は欧米の高級ブランドで採用されます。続いて一般的なアパレルメーカーで採用されるようになり、そして最後の方で紳士服メーカーにおいても採用されていくわけです。

つまり、高級ブランドで起こった技術革新が巡り巡って紳士服メーカーのストレッチスーツの革新へと至ったのです。このように考えてみますと、今回のストレッチスーツの革新というのが大変スケールの大きな話であることが分かるかと思います。アパレル業界では未だに見た目を重視するために着心地を犠牲にしてきついことを我慢する考え方があるようですが、今回のような技術革新によって、ファッションにおけるこのような我慢の概念が無くなるかもしれませんよね。

今日のまとめです。今回は技術革新を上手く取り入れたヒット商品について、ストレッチスーツを取り上げてきました。技術の進歩によってこれまで叶えられなかった消費者ニーズを叶えることが可能になると言えるでしょう。

分野: マーケティング |スピーカー: 岩下仁

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