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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 消費者の決断の疲れへの対応策 (マーケティング/岩下仁)

消費者の決断の疲れへの対応策

岩下仁 マーケティング

18/08/21

これまでコモディティ化市場のマーケティング戦略ということで話を進めてきました。コモディティ化というのはあるカテゴリーにおいて製品が溢れかえり、消費者が品質の違いを分からなくなってしまっているために価格でしか差が出ない状態を言います。では、コモディティ化が起こっているカテゴリーでは、実際の売り場はどのような状況になっているのでしょうか?

売り場では消費者が選びきれないほど似たような製品が溢れかえっている状況にあります。現在の消費者の多くは日々溢れかえっている製品の中から一つの製品を選ぶことに迫られ、結果として判断力が低下するという「決断の遅れ」という状況に陥っているわけです。今回はこの製品選択の際の決断の遅れに対して企業がどのように対応していくべきか、洋服の通販に関する事例を取り上げながら話を進めていきたいと思います。

皆さんは洋服を通販で買われたことはあるでしょうか? 勿論ある方もたくさんいらっしゃると思いますが、食料品や日用雑貨に比べると洋服や靴など身に付ける物は通販で買うのはちょっとな、と思う方も少なくないでしょう。やはり、試着したいとかサイズ感がどうかなとかがありますしね。

したがって、かなり他の商品とは違う選択プロセスを経るということです。この理由として、まず実際に試着してから決めたいというニーズがあることが挙げられます。それだけではなく、サイトに商品が溢れていて色々見ているうちにもうどれにしたらいいか分からないという状況に陥ることも必ずあるはずです。これが決断の遅れの状態です。実際に利便性が高いと言われるアマゾンのサイトでも洋服のカテゴリーに至ってはあまりに品が溢れすぎていて、消費者が選ぶのに負担を感じてしまい売れにくいと言われています。

あまりにも膨大な量だと選ぶのに疲れてしまうというのが決断の遅れの状態です。そうした中で製品を選ぶ過程を省きたい、でも自分が似合う物でなければ嫌という消費者のニーズを捉え、急成長しているファッション通販サイトがアメリカにあります。2011年にアメリカで創業されて、2017年に上場したばかりのスティッチフィックスという企業です。このスティッチフィックスの2017年8月から10月の四半期の売上高は、前年比25%増の約320億円で業績は堅調に推移しています。この企業が成功したポイントは、次の三点によって消費者の決断の遅れを解消したことにあると言われています。

成功の一つ目のポイントは、お客さん自らに洋服を選ばせないことです。スティッチフィックスのサービスを利用する消費者の方はまず服のサイズや予算、好みなどをスティッチフィックスのサイト上で入力します。そして毎月20ドルの月会費を支払うと、人工知能と約3,000名のスタイリストがオススメの5着を選んでくれるのです。そして、選んでくれた洋服が郵送で自宅に届きます。気に入った洋服は手元に残し、残りは返送料無料で返却します。頻繁に使用する人は既に240万人を超えているのです。AIや専門家を導入することで、決断するという行為自体を無くしたのです。

成功の二つ目のポイントは、消費者の心を鷲掴みにした新しい自分の発見です。皆さんが洋服を選ぶときというのは大体過去に購入した色、素材と同じものが多いのではないでしょうか。普段着慣れていない色なんかは怖くて買うことが出来ません。僕自身もセーターを選ぶときには、日頃から着慣れているグレーにしてしまいます。スティッチフィックスの強みは利用者の購買や返却のデータを蓄積して解析したアルゴリズムの精度、つまり的中率の高さにあります。例えばパステルカラーは似合わないと思っていたのにスティッチフィックスの箱に入っているパステルカラーのワンピースを着てみたら結構似合っていた、こういったケースがあるわけですね。

データを蓄積してそれを分析する技術があるからこそです。お客さん自身が気付かなかった自分自身の新たな発見は、これまで実店舗のカリスマ店員さんの提案によって実現されてきました。ところが、これをAIと専属スタイリストの融合によって、カリスマ店員の接客をネット通販で実現したのがスティッチフィックスなわけです。カリスマ店員からの接客を受けるにはその店に直接行かないといけないし、例え店に足を運んだとしても実際にお目当ての販売員さんに接客してもらうかどうかというのはわかりませんよね。そういった点でスティッチフィックスはAIとスタイリストによってカリスマ店員並の優れたサービスを利用者皆に提供出来ているのです。

成功の三つ目のポイントは、AIの精度を高めるための工夫です。一人ひとりの顧客情報を入れるほど情報の精度は高まります。年齢や性別、住所といった基本的な属性だけではやはり精度に限界がありますよね。そこで、精度を高めるために購買に影響を与えそうな趣味や行動様式といった情報をお客さんから得ることがとても重要になります。スティッチフィックスは登録の際にオンライン上で、利用者に対して例えば赤と青はどちらが好きかというような簡単なテストをやってもらうのです。その結果を利用して似た好みを持つ消費者が選ぶ消費行動の購入データを元にして、勧める商品を決めていくのです。

決断の疲れに陥っている消費者を引きつけるためには、自らで洋服を選ばない、新たな自分の発見、AIの精度向上といった工夫があることが分かるかと思います。

今日のまとめです。今回は決断の遅れの消費者の対応策として、アメリカのスティッチフィックスを取り上げました。様々な工夫をすることで、決断の遅れに陥った消費者であっても自社製品を躊躇無く購入してもらうことが可能になります。

分野: マーケティング |スピーカー: 岩下仁

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