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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 企業の配当について(その2) (企業財務管理、国際金融/平松拓)

企業の配当について(その2)

平松拓 企業財務管理、国際金融

18/08/15


前回は、日本企業の配当性向が低いことに関連して、経営者の立場からは配当を増やすことについて慎重になりがちなこと、株主の立場からは、配当などで還元してもらうよりも企業価値増大に繋がる成長のための投資に生かしてもらうことが望ましく、それができないなら、他への投資に回すべく配当などで還元して欲しいと考える―――ということを説明しました。今回は、こうした観点から、アメリカの成長企業の対応について見てみましょう。

アメリカの成長企業といえば、先ず浮かぶのがGAFAと呼ばれる企業群ですが、GAFAとはグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンのことで、いずれも今をときめく非常に高収益・高成長の企業です。これらの企業は高収益を上げているので、巨額の配当を行っていそうに感じられるかもしれませんが、実はこれら5社の中で配当を行っているのはアップルただ1社で、それ以外の企業は配当を行っていません。

日本では、業績不振の企業でなければ安定した配当を支払うのが当たり前で、高収益企業ならば増配が期待されたりしますが、これらの例が示すように、アメリカでは成長企業が配当を行わないというのが、むしろ当たり前のようになっています。アップルは、1995年迄行っていた配当金支払いを中止して、再び復活したのは17年後の2012年です。他の3社の内、グーグル(2015)とフェースブック(2016年)は、社内の余剰資金を還元するために、自社株式購入を実施しましたが、配当金の支払いは行っていません。残るAmazonは、配当金の支払いも自社株式購入も行っていないのです。

企業の経営者にとってみれば、成長を追求すれば資金は不足がちになりますので、外部借入はコストも高くなりがちで、それよりも自社の利益として生み出された資金を還元しないで、投資を賄うために用いることは理に叶っています。また、前回も述べたように、株主は株式投資を行うことで経営者に資金の運用を託している訳で、リスクに見合う以上のリターンを上げてくれるならば、その方が配当で還元してもらうよりも有難く、そこで経営者、株主の利害が一致する訳です。

こうした考え方から、成長企業への投資として無配当企業を中心に投資しているのが、バークシャー・ハザウェイ社、即ち、投資の神様とも言われるウォーレン・バフェット率いる投資会社ですが、同社では、無配当の企業が配当を始めると、成長の行き詰まりと見做して投資を減らすことが多いとされます。実は同社自身もこれ迄高成長を続けてきており、配当も自社株式購入も実施していません。

では、高成長だった企業が安定成長に移行した場合、どのような株主還元、配当の支払いを行っているかについて、アップルのケースを見てみましょう。同社の2017年の決算を見ると、当期純利益は480億ドル(約5兆円)、それに対して配当金の支払いが128億ドル、自社株式購入が329億ドルと、還元額の合計は457億ドルとなって、ほぼ利益金額に見合っています。しかし、配当支払いを再開したと言っても、アップルも成長が全く止まった訳ではなくて、高成長から安定成長に代わっただけと思われます。それにも関わらず、自ら利益として生み出した資金のほとんどを配当など、株主への還元に使ってしまっています。

それでは、成長のための資金はどうしているのでしょうか。そのためと思われるのが、同時に長期借入金を287億ドル借り増していることで、当面のこととは思われますが、市場での運用に回しています。ここで、内部資金がありながらそれを還元して、どうして外部からの借り入れをするかと言えば、株主から高いリターンが期待される内部資金の利用を減らし、外部資金を負債として取り入れた方が調達コストが下がるからです。つまり、一時よりは低下したアップルの投資収益率の下でも、調達コスト全体を下げることで、株主へ十分なリターンを支払えるようにしていると考えられまする。こうした手法を「レバレッジを効かせる」と呼びます。

こうしてみますと、日本とアメリカとでは、企業の配当や株主還元に対する考え方が大きく異なっており、日本での常識は彼の地での非常識、また逆も眞であることが見えてくると思います。アベノミクスのコーポレートガバナンス改革により変化の始まったばかりの日本の企業統治ですが、これからの変化の道程は長そうです。

 本日のまとめです。日本では高成長企業の間でも当たり前の配当支払いですが、GAFAに代表されるようなアメリカの成長企業では、配当支払の開始は寧ろ成長の行き詰まりと見做されます。日本企業の姿も今後変化して行くと考えられますが、現時点でアメリカ企業を見る場合、日本の常識はいったん忘れてかかることが必要でしょう。

分野: ファイナンシャルマネジメント |スピーカー: 平松拓

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