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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 企業の配当について(その1) (企業財務管理、国際金融/平松拓)

企業の配当について(その1)

平松拓 企業財務管理、国際金融

18/08/14


ここ数年、日本企業は業績が好調ということもあって、増配・配当金の増額に踏み切るところが出てきています。それでも国際比較で見た場合には、日本企業の株主に対する配当金の支払いは利益の水準からするとまだ少ないと言われています。そうしたことも含め、今回と次回の2回、企業の配当について考えてみたいと思います。

ここで問題にするのは「配当性向」という指標で、これは企業が上げた利益のうち、どれだけを配当金として株主に還元しているか、具体的には配当金支払額を当期純利益の金額で割ったものです。従って、増配したとしても好業績で利益も増えていれば、この比率は必ずしも上昇するわけではありません。増配するというのは、一株当たり配当金として支払う金額を増やすことです。最近の新聞による調査では、配当性向が日本企業の場合には3割程度に留まっているのに対し、欧米企業の5割弱、東南アジアの企業でも3割台の後半となっていて、それらと比べて低いとされています。この配当性向の低さが日本株の価格上昇を抑える要因になっているという見方もあります。

このような日本企業のパフォーマンスをどう考えたら良いかということですが、まず基本に立ち返ると、配当とは企業活動の結果としての利益から、投資してくれた株主に対してリターンを還元するための、最も基本的な手段です。ちょっと考えると、株主は株価の変動という大きなリスクを取りながら投資しているので、借入金の利息や税金を払った後に残る利益、これの大半を配当金として支払ってもらっても良さそうなものですが、経営者にとってはそう簡単に存分に支払うという訳にはいかない理由があります。

それは、第一に、内部に留保して預金しておけば資金が必要になった時に何時でも使えます。しかし、一旦配当として支払ってしまうと、その後は借入れ等の形で調達しなければならないことになります。万が一必要な資金が調達出来ない、借入れできないということになると、倒産ということにもなり得ます。経営の安全弁として、出来るだけ余裕資金を手元に残したいという気持ちが経営者にあります。

もう一つは、経営者と投資家の間にはその企業についての情報の非対称性があるとされていることで、投資家は自分たちより多くの情報を持っている経営者の対応も含めて、その企業の将来の業績を判断します。そうした中で企業が増配を発表すると、投資家は経営者が先行きの業績に自信を持っているという風に受け止めて、それで株価が上昇しますが、逆に減配(一株当たりの配当金の減額)を発表すると、株価は下落します。そのため経営者は先行きの業績に自信が無いと受け止められる減配をしなければならない立場に追いこまれることをできるだけ避けようとして、逆に増配に慎重になります。

このような経営者側の考え方に対して、投資家、株主の側からも、配当を多く受け取れれば良いというものではない理由があります。そもそも株主が企業に投資するのは、経営者にその企業の経営を通して資金の運用を託している訳で、利益が出た時に経営者がその資金を使ってさらにその企業を成長させて企業価値の増大に繋げてくれるならば、今、配当金の形で還元を受けるのではなくて、更なる運用をしてもらった上で、より多くの金額を後で受け取った方が良いことになります。その逆に、経営者がただ倒産しないだけの安全弁として預金等の形で資金を置いておくだけならば、十分なリターンに繋がるような運用は期待できないので、すぐに配当してもらって他の投資に回したいと考えるわけです。このような観点から株主還元を要求してくるのがいわゆるアクティビストと言われる人達です。アクティビストとは物言う株主という意味です。

実はアメリカ企業の場合、上場企業を中心に、配当金の形で還元する以上の金額を自社株式の購入という形で株主に還元しています。一方、日本企業による自社株購入はまだまだ少ないです。つまり株主に対する還元全体として比較した場合には、日本企業による還元とアメリカ企業による還元の差は、冒頭お話した配当性向の違い以上に大きく、従って、日本企業は配当をもっと増やすことが実は可能なはずです。日本企業の場合は増配が発表されると決まったように株価が上昇しますが、このことは投資家が企業の先行きの業績を楽観したということでもありますが、同時に投資家も企業が配当を支払う余力を有している、つまり手元資金を必要以上に持っていると判断していることを同時に示しています。

株主にとってみれば経営者が資金を成長のための投資に積極的に活かしてくれることがベストで、そうでなければ配当などの形で還元を望むべきところですが、投資家によるそのような要求が必ずしも強くないせいか、日本では経営者が資金を安全弁として手元に置く傾向がまだまだ強いといえます。こうしことは、当該企業の成長に繋がらないばかりか、投資家の資金が他の成長を追求する企業への投資に回りにくくなるという二重の意味で残念なことです。経済の活性化のためにもこのような状況に変化が訪れることを期待したいと思います。

今日のまとめです。日本企業の配当性向は低く留まっていますが、そのことは利益が積極的な成長のための再投資に用いられていることを意味しているのではなくて、経営者のための安全弁となる手元資金として留保されていることが実態と考えられます。株主と投資家との間の建設的な対話を通じて、こうした資金が成長のために、より有効に活かされるようになることが期待されます。

分野: ファイナンシャルマネジメント |スピーカー: 平松拓

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