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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > キーワード(55) 非技術的イノベーション (技術経営、科学技術政策/永田晃也)

キーワード(55) 非技術的イノベーション

永田晃也 技術経営、科学技術政策

18/08/23

今回のまとめ: 非技術的イノベーションとは、技術革新と呼ばれるタイプのイノベーション以外の全てを意味するカテゴリーであり、マーケティング方法のイノベーションや組織的なイノベーションが含まれます。

 今回は、非技術的イノベーションという語を取り上げます。これは、Non-Technological Innovationの日本語訳として使われている語です。
前にお話したように、日本ではイノベーションという語が導入当初「技術革新」と訳されたことから、専ら技術的な進歩を伴う新製品や新製法をイノベーションと理解する傾向がありました。しかし、本来イノベーションという語は、技術革新(Technological Innovation)に限らず、新たな価値をもたらす革新を広く意味するものです。その意味では、非技術的イノベーションは技術革新以外の全てのイノベーションを含むカテゴリーとして定義できます。
では、具体的にどのような非技術的イノベーションがあるのでしょうか。
そもそもイノベーションを経済発展の原動力として最も早い時期に重視した経済学者であるシュムペーターは、イノベーションの類型を5つ挙げていました。新製品(プロダクト・イノベーション)、新製法(プロセス・イノベーション)、新市場の開拓、投入資材の新たな供給源の獲得、および新産業組織の創出です。シュムペーター自身は、技術的/非技術的という区分はしていませんが、この5類型のうち新製品と新製法を、今日では併せて技術的イノベーションと呼んでいますから、これらを除く3つを非技術的イノベーションとして区分できることになります。この5類型は、技術的イノベーションを行う企業の生産活動を中心とするサプライ・チェーンの全体像を意識したものとして理解できます。最後に挙げられた新産業組織とは、例えば独占を打破したり、逆に独占を形成するといった取引関係の構造的な変化を意味しているのです。

 一方、イノベーション活動の実態把握を目的とする統計調査の中でも、非技術的イノベーションの具体的な内容を特定することによって、その統計上の概念を明確にした上で、実態を把握する試みがなされています。
企業のイノベーション活動については、今日、OECD(経済協力開発機構)が策定した標準的な統計調査手法に関する勧告文書―「オスロ・マニュアル」に基づいて、各メンバー国での実態調査が行われています。
このマニュアルでは、プロダクト・イノベーションとプロセス・イノベーションという技術的イノベーションに加えて、「マーケティング・イノベーション」と「組織イノベーション」という非技術的イノベーションの活動を調査対象に含めることを勧告しています。我が国では、文部科学省の科学技術・学術政策研究所が、「オスロ・マニュアル」に準拠した「全国イノベーション調査」を、3年毎に1度の頻度で実施しています。この「全国イノベーション調査」の調査票には、マニュアルに則したイノベーションの定義が示されています。
 そこでは、マーケティング・イノベーションとは、「製品又はサービスのデザイン又は包装の大幅な変更、販売経路、販売促進方法、あるいは価格設定方法に係る新しいマーケティング方法の自社内における導入」を意味するものと定義されています。また、組織イノベーションについては、「企業の業務慣行、職場組織又は社会関係に関する新しい方法の自社内における導入」を意味するものとされています。
これらの定義をシュムペーターの類型と対比させてみると、マーケティング・イノベーションの定義は、シュムペーターが言う新市場の開拓を実現するための活動に関するものだと言って良いと思います。一方、組織イノベーションの定義は、企業の内部組織における業務改革などを指しており、シュムペーターの言う産業組織の革新とは明らかに内容が異なります。つまり、「オスロ・マニュアル」による非技術的イノベーションのカテゴリーは、シュムペーターの類型に含まれる非技術的イノベーションのうち、新市場の開拓を取り上げ、新たな供給源の獲得と新産業組織を除外し、内部組織の革新を新たに加えたものになっている訳です。
非技術的イノベーションには、技術革新以外のイノベーションが全て含まれてしまうのですから、その概念の明確化は、具体的な非技術的イノベーションの類型化と切り離せません。経営管理や政策の観点から見て重要な非技術的イノベーションの実態を包括的に明らかにするためには、この点に関する議論を深める必要がありそうです。

分野: イノベーションマネジメント |スピーカー: 永田晃也

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