QT PRO モーニングビジネススクール

QT PRO
モーニングビジネススクールWeb版

FM FUKUOKAで放送中「QT PRO モーニングビジネススクール」オンエア内容をWeb版でご覧いただけます。
ポッドキャスティングやブログで毎日のオンエア内容をチェック!

PODCASTING RSSで登録 PODCASTING iTunesで登録 電子書籍で記事を読もう! EPUB

ブログ&ポッドキャスト詳細

QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 社会的手抜き (産業組織心理学、社会心理学/三上聡美)

社会的手抜き

三上聡美 産業組織心理学、社会心理学

18/07/04

今日は、「社会的手抜き」についてお話します。

皆さん、合唱コンクールなどで、1度や2度口パクで歌った経験をお持ちの方はいらっしゃいますか。口パクとまではいかなくても、小さい声で歌ってみた経験のある方はいらっしゃるのではないかと思います。
「社会的手抜き」とはまさにこのことを言います。きちんと定義を説明しますと、集団で作業を行う時の方が、個人で作業をする時よりも1人あたりのパフォーマンスが低下する現象のことを言います。この説を提唱したのはリンゲルマンという人なのですが、彼の名前から「リンゲルマン効果」と呼ばれることもあります。リンゲルマンは、集団で作業をさせる実験を行っています。1人の力を100とした場合、2人集団で作業を行った時の1人あたりの力の量は93%。3人の場合は85%。4人の場合は77%と段々下がっていき、8人集団の時には49%まで1人あたりの作業量が下がりました。つまり、集団のメンバーが増えるほど1人あたりの手抜き量は増えていくという結果になりました。

自分が少し手を抜いても、他の人がやってくれるから大丈夫だろうという甘えが出てしまうということもあるかもしれません。単純に考えると、1人で作業をする場合は、作業量の100%がその人に降りかかってきますが、作業をするメンバーが増えれば作業はその分メンバーに分担されるます。この「社会的手抜き」というのは、日常でよく見られる現象ではないかと思います。

先程の合唱コンクールの例でも、みんなで歌えば大きな声を出さなくても音は通ってしまいますし、拍手なども同様です。ただ、前回お話をしたメンバーのパフォーマンスを下げるような「社会的手抜き」が存在する場合には、「腐ったリンゴ効果」が出てしまうので注意をしたいところです。

「腐ったリンゴ効果」とは、集団の中にネガティブな発言や行為をする人が1人でもいるとそれが伝染してしまうという効果でした。

この「社会的手抜き」は、男性と女性ではどちらがより手抜きをすると思いますか。

「社会的手抜き」の性差を調べた実験があります(釘原(2015)より引用)。この実験は、つり革のようなものが付いている実験装置を使用し、9名の実験協力者の腕力を測定する実験です。みんなで綱引きをしているようなイメージで、つり革のようなものを引っ張ることによって、9人の集団全体としての力がコンピューターに記録される仕組みになっています。実験は全部で12回行われました。その内、最初(1回目)と最後(12回目)の回では、9名それぞれの個人の腕力を測定して、2回目から11回目までは9名全体での力を測定するということが協力者には伝えられていました。しかし、実際は実験装置には全体の力ではなくて、9名それぞれの腕力が測定されることになっています。そのため、12回分の内、個人で測定した腕力と全体で引っ張ったとした時の腕力の違いがわかる仕組みになっているのです。その実験の結果、男性の場合は最初に個人で測定した場合にはそれなりに力を出していたのですが、2回目からの全体での測定では、はっきりと力を緩めていることが分かりました。また最後の個人での12回目の測定では、最初と同じように力を入れていたことがわかりました。女性の場合は、男性と同じように個人での測定と全体での測定では力に違いがありましたが、男性ほどの差は検出出来なかったそうです。この実験結果から、男性は女性に比べて手抜きをしやすいということが分かりました。
ただしこの腕力を測定する実験は、どちらかというと男性向きの課題ではないかということで、女性向きの課題を再度設定して「社会的手抜き」の性差を調べています。女性向きの課題では、手芸を実験参加者にやってもらい、女性向けの課題であることを際立たせる為に、ピンク色の布を使用し、部屋には可愛いぬいぐるみやフリルの付いた刺繍作品が置かれました。作業は、一定時間型紙通りに刺繍をしてもらうという内容でした。実験協力者にはスピードが大事であるということが強調され、作業量が基準を超えていれば金銭的報酬が与えられることが伝えられました。作業は、同姓同士の場合と異性同士の場合の条件が設定されていました。この実験結果は、男女ともに同性と作業をする時よりも異性と作業をする条件において作業のパフォーマンスが劣っていました。

その理由として、照れくささや緊張もあったかもしれません。その他に、男性は細かい作業は女性に任せてしまおうとしたことが考えられます。しかし、女性も男性と作業をするとパフォーマンスが劣っていました。そこには、男性任せという気持ちがもしかしたらあったかもしれません。とにかくこの実験からは、課題や条件によっては女性も「社会的手抜き」をするということが分かりました。ちなみに、「腐ったリンゴ効果」としての「社会的手抜き」には、男性の方が女性よりも顕著に現れるそうです。

では、今日のまとめです。

集団で作業を行う時に、個人で作業をする時よりも1人当たりのパフォーマンスが低下する現象を「社会的手抜き」と呼びます。この「社会的手抜き」は男女ともにおこるものであり、日常でもよく起こっている現象です。ですが、ネガティブな手抜きは集団内にあっという間に伝染してしまうため注意が必要です。皆さんの日常に起こっている「社会的手抜き」にはどんなものがあるでしょうか。探してみると意外とたくさんあるかもしれません。

分野: 社会心理学・組織心理学 |スピーカー: 三上聡美

トップページに戻る

  • RADIKO.JP
  • ビビックスマホ