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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 腐ったリンゴ効果 (産業組織心理学、社会心理学/三上聡美)

腐ったリンゴ効果

三上聡美 産業組織心理学、社会心理学

18/07/03

今日はリンゴの話をしたいと思います。
アメリカでは、「腐ったリンゴは隣を腐らす」ということわざがあるそうです。日本では、金八先生の「腐ったミカン」の表現の方がしっくりくるかもしれません。心理学にも「腐ったリンゴ効果」という言葉があります。これは、組織や集団の中に悪影響を及ぼす人間がいると、その集団全体に悪い影響が伝染して集団そのものが駄目になってしまうという現象を指します。ネガティブな思考や気持ち、振る舞いといったものは、ポジティブなものよりも長く集団に蔓延してしまい集団に及ぼす影響も多いとされています。  

今日は「腐ったリンゴの効果」の例として、メンバーのやる気を削ぐ発言によって、集団のパフォーマンスが低下するという実験をご紹介します。

この実験の参加者は、ビジネス科目を専攻する学生でした。学生達はこの実験に参加することによって30点のボーナス点が成績に加算されることになっていました。実験の内容は、ニューヨークの証券取引所に上場されている株の動向の研究のお手伝いで、彼らの主な作業は、ウォールストリートジャーナルに掲載されている株式相場のリスト20万件から、会社名・取引量・株価の入力作業をすることでした。実験の作業は、10人から12人の実験参加者と、プラス2人のサクラで行われ、2人のサクラは、やる気のない発言をするように指示されていました。この実験は、次の3つの条件に分けられていました。

1つの目の条件では、作業開始直後に監督者が短期間だけ部屋から出ていきました。その間に、1人のサクラが「全くくだらないな、こんな仕事やっていられないよ」と言うのです。それに対して、もう1人のサクラが「君の言うとおりだ。何でこんな面白くない作業をしなくてはならないんだ」と答えることになっていました。

2つ目の条件は、条件1のように不穏当な発言をしたサクラに罰が与えられる条件です。作業の見回りをしている監督者が、「作業なんてやってられない」と言った2人のサクラの所で立ち止まり、事務的に「君の仕事は他の人と比べて見劣りがする。これでは30点のボーナス点をあげることが出来ません。」と集団全体に聞こえるように言うことになっていました。

3つ目は、集団目標が設定される条件です。作業をするメンバー全員に、「これまでの経験から2時間で大体15枚のシートに記入出来ると思われます」と目標を伝えます。しかし、実際の平均値は12枚と目標が実際よりも少し高く設定されています。

さて、この3つの条件で集団のパフォーマンスが下がったのはどの条件だと思いますか。

正解は、1つ目のサクラの不穏当の発言条件になります。この条件では、集団の作業量が20%程低かったそうです。「こんな作業なんてやってられない」というやる気のないサクラにも、みんなと同じように30点のボーナス点が与えられるということになれば、他のメンバーのやる気は低下してしまうという結果になりました。悪い表現になるかもしれませんが、腐ったリンゴが周りに悪い影響を伝染させるというのがこの1つ目の条件からも分かると思います。
ちなみに2つ目のサクラに罰が与えられる条件では、作業量に変化はありませんでした。やる気のないサクラにはボーナス点が与えられないという罰があったとしても、集団のメンバーにはさほど影響を及ぼさないそうです。
3つ目の目標値設定条件では、逆に作業量が26%上昇しました。集団の目標設定を高くするとメンバーのやる気は上がるようです。

腐ったリンゴ効果を防ぐ為には、腐ったリンゴを見つけたらすぐに取り除くことが大切というのはみなさんもお分かりだと思いますが、果物のリンゴは簡単に取り除くことは出来ても、悪影響を及ぼす集団のメンバーを取り除くということは簡単ではないかもしれません。それならば、リンゴの腐食が広がる前に腐っていないリンゴを活性化させることが1つの手だとこの実験からは言えるのではないでしょうか。
少し意味は違うかもしれませんが、例えば集団のメンバーにもしインフルエンザに罹った人が出た時、当の本人はお休みをして用心をしますが、他のメンバーも手洗い、うがいを入念にするなど被害が拡大しないようにしますよね。ターゲットに焦点を当てるだけでなく、周りをどうするかを考える事も必要なのかもしれません。

では、今日のまとめです。
集団の中に悪影響を及ぼす人間がいると、その集団全体に悪い影響が伝染して集団そのものが駄目になってしまう現象を「腐ったリンゴ効果」と呼びます。組織や集団に伝染した悪影響は、良い影響よりも長く蔓延するため、何とか対処しなくてはいけません。リンゴの腐食が広がる前に腐っていないリンゴを活性化させることが腐食を食い止める1つの方法です。
(今回ご紹介した実験は、釘原(2015)より引用しています。)

分野: 社会心理学・組織心理学 |スピーカー: 三上聡美

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