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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 職場におけるハラスメント問題 (テクノロジーマネジメント、オペレーションズマネジメント、日本的経営/金子浩明)

職場におけるハラスメント問題

金子浩明 テクノロジーマネジメント、オペレーションズマネジメント、日本的経営

18/07/02

今日は、最近多発しているハラスメントについて、経済学の観点から読み解いていきます。
セクハラやパワハラなど様々なハラスメントが問題になっていますが、最近よく耳にするハラスメント事件は、ハラスメントをする主体者は権力者であり、この権力者が取引先など、外部の自分よりも立場や権力が弱く、自分が持っている権力を使って仕事をしたいと思っている人に対していわゆるハラスメントを行う場合が多いです。

例えば、福田前財務次官の件では、権力者である当時の財務次官が、テレビの記者に対して、自分の権力を実際に利用してセクハラを行しました。また、アメリカのワインスタイン氏のセクハラ事件では、プロデューサーという自分の権力(立場)を利用して、相手の女優さんに対してハラスメントを行いました。これは、全て内部というよりは、自分よりも立場が低くて権力のない外部の取引先を相手としたハラスメントです。

こういう場合、基本的に権力者が一方的に悪いわけです。なぜなら、ハラスメントを受ける側は、権力者が権力を持っているがゆえになかなか逆らうことが出来ないからです。こういう関係は、内部の仲間内で起こるというよりは、外との取引において起こるわけです。ハラスメントを受ける側は、権力者が持っている権力にある意味あずかりたいわけです。ハラスメントをする側というのは、その権力にあずかりたいと思っている人に対して、「では、お前は俺に何をしてくれるんだ」ということでハラスメントを行うわけです。これはまさに経済学で言う「取引」に非常に似ています。このようなこの市場取引的な人間関係では、必ず駆け引きが起こるわけです。市場における取引は、お互いが自分のメリット、自分の効用を最大化しようとします。こういうお互いのメリットを最大化しようとするときに発生する手間のことを、「取引コスト」といいます。
例えば、インドのバザールでは、実質的に定価が存在しない店が多く存在します。例えば、これが「5,000ルピーです」と言われても、本当に5,000ルピーかどうかはわかりません。日本人でお金を持っていそうだから、少し吹っ掛けられているのではないかと疑って価格交渉するわけです。私も実際に、そういうバザールに行って交渉をしていい買い物したと思ってホテルに帰ってフロントの人に、これいくらで買ったんだけど「どう思う?」と尋ねると、「それは高い」と言われた経験があります。やはり、騙されることなくお得な買い物をするためには、交渉や駆け引きが必要であり、たとえ交渉や駆け引きをしても、それでも実際にお得な買い物が出来ないケースがあります。この「取引コスト」というものが、正にこのハラスメントの構造と非常に類似しています。つまり、一方的に力のある人が自分のメリットを最大化するために、とにかく相手からどんどん搾取をするという構造なわけです。

この「取引コスト」がなぜ発生してしまうかというと、当然ながら人間は自分のメリットを最大化したいという欲求があるため、そのためには相手に不利な情報を隠すということがあるわけです。
例えば福田前次官の場合、ひょっとしたら記者に何かスクープ情報を教えてあげてもいいよと匂わせているかもしれません。そう匂わせて呼び出すかもしれません。これはズルです。しかし、本当は単にその女性と飲みたかっただけかもしれませんし、セクハラ的な発言をしたかっただけかもしれません。こういう人間はズルをします。相手の弱みにつけこもうとします。これが「取引コスト」が発生する1つの要因です。インドのバザールであれば、日本人からなるべく高く商品を売りたいと思うわけです。これもズルなわけです。
もう1つの要因は、私たちはそのズルを見抜けないということです。例えば、インドのバザールであれば、私はその価格が高いのか安いのかなかなか判断出来ません。本当にそれを判断しようと思ったら、例えば一週間ずっと通ってみたり、あるいはありとあらゆるバザールで同じような商品をとにかく買いまくって価格の相場を調べてみたりする方法があります。しかし、現実的に難しいです。これが人間の合理性には限界があるということです。全ての情報を知ることは出来ません。スーパーAIのように、全ての計算を自分で導き出して、これが適正な価格だということをはじきだすことは難しいわけです。
この2つの要因「機械主義的行動」と「限定合理性」により、取引の様々な駆け引きが存在してしまいます。これは権力の強い側が、どうしても圧倒的に弱い側から搾取しがちであるということです。

最近のハラスメントのニュースは権力者と外部の人のこうした構造で語られることが多いです。福田前次官やワインスタインの話を聞いて我々が思うことは、社外には気をつけようということです。しかし、最近はそれだけではなくなってきているように感じます。社外に限らず、組織内、社内でもハラスメントは起こりやすくなっています。
近年、日本企業では成果主義的な人事が普及しています。成果主義というのは、社内の中にある限られたパイを社員の中で分け合います。そのため、競争が生まれます。競争になると、例えば自分が仕事を教えた後輩が、自分よりもなにか高い成果を出した場合、限られたパイを持って行かれてしまうかもしれません。そうすると、当然そこには取引が発生しやすくなります。ということは、本当に自分たちの問題や身近な問題として気を付けないといけないということです。やはり重要なことは、相手を利用しようとしないことです。これは本当に倫理の話になりますが、重要なことは、自分の目的のために相手を手段としてのみ使わないことです。これは哲学者のカントの言葉です。そうすると、完全に取引の手段になってしまい、たくさん搾取したほうが勝ちということになってしまいます。ビジネスにおいては、たくさん搾取した方が勝つわけですが、人間関係はそういうふうに計算してはいけません。そこは市場取引的な人間関係に陥らないようにすることが大切です。

では、今日のまとめです。
近年のハラスメントの問題というのは、権力者と相対する外部の権力を持たない人との関係だと思われがちです。しかし、近年の日本企業では成果主義人事の普及によって、社内の中においても市場取引的な人間関係が起こりやすくなっています。皆さんもそういう市場取引的な人間関係に陥らないように、ぜひ仕事の中でも気を付けていただければと思います。

分野: 技術経営 経営戦略 |スピーカー: 金子浩明

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