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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 変化の速まる市場での意思決定(2) (企業財務管理、国際金融/平松拓)

変化の速まる市場での意思決定(2)

平松拓 企業財務管理、国際金融

18/06/26

前回は、デジタル化による情報技術革新により、社会や市場の変化のスピードが速まっていること、そうした変化の速い市場において企業が戦略を実行し目的を達成するには、分権化や組織のフラット化など、意思決定のためのシステムの在り方も多様にならざるを得ないことをお話ししまた。今回は、分権化のためのシステム作りをしていく上で、陥りそうな落とし穴について考えてみます。

変化の速まる市場において迅速、且つ、適切に意思決定を行っていくための方策として前回紹介したのは、一つは選択と集中であり、分社化や事業売却により、トップ・マネジメントが市場や現場に精通できるような範囲に組織を維持することでした。そして、もう一つが分権化で、現場または市場により近いところに責任とそれを果たすための意思決定の権限を委任することで、社内で広く経営理念の浸透や経営者意識の共有を図ろうとするのも、このことの一環と考えることができます。

形は違いますが、この2つに共通していることは、変化する市場において、顧客にできるだけ密着し、その変化を見定め、敏感に反応できるような体制を構築するということです。後者について考えて見ると、市場や現場に近いところで意思決定できるように分権化することで、意思決定者は顧客の嗜好の変化や、商品やサービスに対する満足度についての情報をより直接的、且つ豊富に得ながら意思決定を行うことができます。

しかし、ここで注意しなければならないことは、変化の激しい市場では、既存の秩序を破壊するような革新的な技術やそれに基づく全く新しい製品やサービスが生れてくる確率も高くなっていることです。果たして、分権化により下位者に意思決定の権限が委ねられた場合に、そうした状況にも適切に対応することができるでしょうか。

クリステンセン教授の「イノベーションのジレンマ」で指摘されている通り、既存の製品やサービスでそれなりの顧客を獲得している企業の場合、それらの顧客の要求に応えようとして、既存の製品やサービスの改良ということに努力を集中しがちになります。その結果、市場において、革新的な技術へのシフトが生じようとしている時においても、既存の技術に固執して、新しい技術への対応が遅れがちになります。

これが分権化の進んでいる組織の場合、既存の顧客、即ち、既存の製品やサービスの対象となっている顧客に密接に繋がっている人たちによって意思決定がなされる訳で、既存顧客の要求に応えようとする傾向がより強まり、既存製品・サービスの改良や改善から脱することはより困難になることが容易に想像されます。

さらに、意思決定の権限が与えられた下位者にとっては、顧客に近い上に、権限と同時に与えられた責任としての当期の利益など短期的な指標に目が向きがちになることから、意思決定の内容も短視眼的になってしまうことが考えられます。また、与えられる権限にも限界があり、得られる情報のスコープも限られることから、破壊的な技術に投資するような意思決定を行うことは、いずれにしても困難です。

そうであるにも拘わらず、分権化のメリットが過剰に強調されると、それをフルに享受するために、可能な限り事業に関する意思決定を下位者に委任して、トップ・マネジメントは内部資源の配分及びその管理機能に徹するという企業も出てきそうです。そして、市場の変化が激しくなればなる程、そのように分権化した企業が市場の変化の中で、致命的な戦略ミスを犯す結果となりかねません。

こうしたことを防ぐためには、分権化を進めるにしても、事業に関する意思決定を現場に全てを委ねてしまうのではなくて、イノベーションに類する革新的な技術の開発や、それらに関わるような意思決定、例えば、市場におけるイノベーティブな技術の兆候を素早く看取し、対応策の考案、その迅速な採用に踏み切れるような機能或いは責任を、組織の中枢、或いはトップ・マネジメントの責任として維持しておくことが考えられます。

素早く変化する顧客ニーズ等に迅速に対応することが重要なことは言を俟ちませんが、そのためにより大きな、致命的な見落としをしないことも、同時に重要と言えます。

まとめ:変化の速まる市場の中で、分権化の促進により既存の顧客のニーズに迅速・適切に応えられるようにすることは有効な管理システム作りの一つの重要な要素ですが、一方で破壊的な技術による市場の革新にも目配りできるシステムとすることも必要です。

分野: ファイナンシャルマネジメント |スピーカー: 平松拓

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