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QT PROモーニングビジネススクール > ブログ&ポッドキャスト一覧 > 変化の速まる市場での意思決定(1) (企業財務管理、国際金融/平松拓)

変化の速まる市場での意思決定(1)

平松拓 企業財務管理、国際金融

18/06/25

現代はデジタル化による情報技術革新のお蔭で、ビジネスの世界でも革新的なモデルが次々誕生しており、また、そのことが大きな要因となって、市場における変化のスピードが速まっています。今回と次回の2回、マネジメント・コントロールの観点から、こうした変化の速まる市場での企業の意思決定について考えてみたいと思います。

マネジメント・コントロールは管理会計の観点を基礎に、ロバートN.アンソニーという人により体系化されたものですが、企業の目的達成や戦略実行のための意思決定をトップ一人で全て担うことができない状況で、分権化、即ち意思決定を部下、即ちマネージャーや、その下の担当者に委ねるにあたり、社内にどのようなシステムを作っておけば、権限を与えた人に期待するような意思決定を行わせることができるかを考える学問分野です。

この場合のシステムには、どういう構造の組織を作るか、部下にどのような目標の達成責任を与えるか(例えば営業部門に対しての販売量目標、あるいは製造部門に対してのコスト目標など)、進捗状況をどうチェックするか、目標達成した場合の報償はどうするか、達成できなかった時にどのようなペナルティーを与えるか、といった内容が含まれます。

また、ここで言う分権化とは全ての権限を与えることを意味する訳ではありません。補完性の原則に基づいて、経営者や上位のマネージャーが意思決定できる範囲のこと、或いはそちらの方がより望ましい意思決定ができると期待されることについては上位者が自ら意思決定を行い、そこまでは手が回らない、或いは、下位者の方が寧ろ妥当な意思決定がなし得ると考えられることについて、目標の達成責任と共に、そのために必要な意思決定の権限を与えることが基本です。

こうしたシステムを構築するに当たっては、企業が大きく組織の階層が増えれば増える程、経営トップや上位のマネージャーは市場や現場から遠くなり、適切な意思決定を迅速に行うことが難しくなるということがあります。その場合下位者にとっても、上司に市場や現場の情報を上げてもそれが意思決定の結果としての指示として降りてくる迄に時間がかかり、対応が難しくなります。こうしたことは、企業の規模の大きさばかりでなく、企業がビジネスを行う市場の変化のスピードが速ければ速い程、重要な問題となり得ます。

こういった問題にたいして、企業はこれまで、どのように対処してきたでしょうか。ここでは幾つかのパターンをご紹介しますと、1つ目は、分社化や事業売却などにより事業の選択と集中を進めることで、事業の対象となる市場を特定化し、トップが常に新鮮な市場の情報が得られ、迅速に適切な意思決定が行えるように組織を維持するということがあります。現在、ジョン・フラナリーによって進められているGE(ゼネラル・エレクトリック)社の業務絞り込みなども、その一環と言えるかと思います。

2つ目は、一部の機能に関する意思決定だけではなくて、最終的な目的であるところの利益に関わる意思決定についても、下位のポジションに移譲することです。いわゆる機能別組織においては、各機能(例えば製造や販売)についての意思決定は下位まで授権されるものの、他の機能との調整が必要となる「利益」に関わる意思決定については、各機能のトップの間での協議・交渉が行われるのが普通です。しかし、利益責任を分権化することによって、製造と販売との調整に関わる意思決定も下位に任せるようにすれば、より現場や市場に近いところで速やかな意思決定が期待されます。プロフィット・センター化や社内カンパニー制度やビジネス・ユニット制、或いは事業本部制などの形で具体化されます。

3つ目は、組織の構造をフラット化することにより、トップ・マネジメントと現場や市場の間の距離を縮めようとするものです。1990年代以降、日本企業でも中間管理職を廃する動きが見られましたが、まだそれでも日本企業の稟議書にはいくつもの印鑑が並んでいたりします。海外では役職を一切廃する代わりに、各個人に役割を与える「ホラクラシー企業」というのも出てきているそうです。組織をフラット化すると、従業員にとってもトップ・マネジメントとの距離感が縮まったと感じられ、それがインセンティブとして働くこともあります。

4つ目は、社内で広く経営理念の浸透や経営者意識の共有を図ろうとするものです。普通は、下位の階層には細分した目標を与えてそのための意思決定を行わせ、それらの結果が最終的に企業目的の達成に繋がるよう、上位の階層が必要な意思決定を行いますが、ここでは、予め末端の従業員まで、経営理念の浸透や経営者意識の共有を図ることで、トップと同じ発想で意思決定させようとするものです。京セラの「アメーバ経営」では、従業員を少人数のグループ(オペレーショナル・ユニット)に分け、それぞれに時間当たり採算目標を課することで全体の利益の極大化と経営理念の実現を図っています。日本航空の再建の際にも稲盛氏によってこの方法が持ち込まれ、大きな効果を上げたとされています。

また、東日本大震災の折には、ヤマト運輸の現地の拠点が、まだ、本社とのコミュニケーションが取れていない段階で自発的に支援物資等の搬送にあたり、後に連絡が通じて事態を把握した本社がこれを追認したということがありました。自社業務が社会インフラであることを強調した同社の経営理念が浸透していたことで、変化に見舞われた市場で従業員を適切な意思決定に導いた好事例と言えるかと思います。

これ等の対応例を通じて言えることは、市場の変化が速まる中では、企業の意思決定の在り方も多様化せざるを得ないということだと思います。


まとめ:デジタル化による情報通信技術革新の中で、ビジネス環境としての市場はその変化の速度を増しています。その中で企業が戦略を実行し目的を実現するためには、変化に対応した適切な意思決定が迅速になされるためのシステム作りが重要ですが、それは市場により、企業により、多様化せざるを得ません。

分野: ファイナンシャルマネジメント |スピーカー: 平松拓

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